四話 「迷走」
ヴィオは東の洞窟まで来ていた。
「ふぅ~」
(にしてもこの洞窟に来るのは2度目位か?)
過去に1度、仕事でここに来ている、前のはそこまで強敵ではなかった。
……関係があるにせよないにせよ、入らなきゃいけないのは確かだった。
「………」
ヴィオは静かに洞窟の中へ入って行った。
暗く水溜まりがよくある場所であった。
湿っていて、所々地面がぬかるんでいた。
戦いにくい環境であった。
(……なるべく早く決着を付けた方が良さそうだな)
ヴィオはそのまま奥へと進んでいった。
すると道中に何かが3体転がっていた。
骸骨、案山子、腐敗した人間の死体……前任の能力者がそれぞれこの3体のいずれかに見えそして交戦したが強敵故撤退、だったか。
(この手のタイプは……「クラウディラー」だったか?)
出現することが稀な創無のせいかあまり知られていない。
(……確か真の姿は道化師みたいな「人型」だったはずだ……)
(少しきつくなるのは覚悟した方がいいなこれは……)
そうして歩を進めているうちに洞窟の奥まで来ていた。
(……いるな)
クラウディラーは奥底に確かにいた、全身が黒いその体に道化師みたいな衣装、長い腕を横に真っ直ぐに立て、手を下に向けている、そして、玉のようなものに両足で直立で乗っかっていた。
微動だに動かない、ずっとその状態を維持して、ピエロのような顔からは何も読み取れない。
軽いホラーを感じた。
全く動かず余裕ある感じから対策を取りづらかった。
(……どうするか____!?)
突然後ろから先ほど倒れていた、骸骨、案山子、腐敗した死体がこちらに向かっていた。
……クラウディラーがこちらに気付いて向かって来た。
(……ハァ、報酬高くなると良いがなぁ)
ヴィオは準備しておいた装備の中からレイピアを取り出した。
クラウディラーを静かに迎え撃った。
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(………)
クリートのミミズのような触手が弘太を襲う。
弘太はナイフで触手を防ぐが、他の触手からの攻撃、ぬかるんだ土地のおかげで防戦一方だった。
徐々に弘太を追い詰めていくクリート、弘太は一本の向かって来た触手を切り落としたのは良いが、切った瞬間に切断部分から体液が飛び散り、避けたが弘太に付着してしまった。
「……!!」
付着した右腕、左腹部が急激に痛みが走った。
途端に付着した体の部位、脳に軽い麻痺が入り体は動かなくなった。
(………神経毒の類だ……!!)
(接触した直後に直ぐ感染した……一撃で葬るしか手がないが……)
「………」
弘太は動いた。
まだ動く足でクリートを全力で翻弄した。
少しずつこの湿地地帯から遠ざけた。
だが、追ってくる攻撃に左でだけで対応するのは限界であった。
「………」
弘太はエネルギーを足に溜め、脚力を高め、加速した。
クリートもそれを追うために速度を速めた。
湿地地帯から抜け、誰もいない、空けた野原まで来た。
クリートも後を追い来た、誘導は成功した。
「……ふぅ」
能力「ディザイス」は環境適応能力である、その効果は先ほどの毒にも通用する。
(……適応完了)
毒を完全に克服した弘太は右手にナイフを持ち替え、再びクリートと戦った。
足先の口がこちらに向かってきていて、触手がこちらを捕らえようとしている。
触手を上手く捌き切り、口を避け、クリートの頭上まで来て、顔にナイフを深々と突き刺した。
液体が飛び出ることなく突き刺し、クリートはもう少しで死ぬ頃である。
だが、クリートも足掻く。
こちらに、触手で攻撃してきた。
だが弘太は後退した。
「……ふぅ」
弘太が下がったところから手榴弾がクリート目掛けて飛んできた。
クリートの触手と体に直撃、その後、手榴弾を投げた相原柳はハンドガンでクリートの顔面に止めを刺した。
「大丈夫か?」
「……後始末は頼んだ」
弘太はそう言い、自宅へ帰って行った。
「………」
(もう少し愛想良くしても良いと思うけどねぇ)
柳はそう考えながらクリートを吸収した。
「………」
毒を受けた部分は完全に回復していた。
「……ハァ、寝るか」
弘太はそう言いながら仕事が始めるまでの3時間を仮眠に使った。
「カレーか~」
零華は自宅へ帰り、母の作る夕飯を眺めていた。
「今日も美味しそうだね~母さん」
「主婦やってるんだからカレーぐらいは普通に美味しく作れるわよ、零華は勉強やったの?」
「あー、後でやるよ!」
「ハァ、ま、ちゃんとやりなさいよ」
「わかってるよ!」
何とも日常的な光景だった。