四十七話「拒否」
「あひゃひゃひゃ、そんなんじゃ僕を倒せないよ~」
陽気な声を出しながら、その小さな身体とは不似合いな圧倒な力でアルゴスはシンとメルダーを同時に相手にして優勢に立つ。
「ねぇねぇ。 君たちは何の為に戦ってるの? 聞きたいよ~」
それにメルダーは拒否することなく答えた。
「勿論、自分の為ですよ。 君と戦えることも立派な勉強になりますしね……!」
空中に複数のナイフを投げ、空間が割れ彼らの世界の無懺と繋がりそこから糸のようなものが出現し、ナイフと繋がり吊るす。
「さてと、ピエロの恰好もしてる事ですし。 軽いショーでもしてみましょうか?」
「……アルゴス。 一人で戦わずに私と相原、お前の三人で行くぞ」
「えー。 僕以外は邪魔だよ~。 なんならバトル・ロイヤルにでもする?」
「勝手にほざいてろ」
「酷い! シリス、僕達の中じゃないか!!! これくらいのジョークは分かってくれてよ!!!!!」
「お前ら、一旦、落ち着け!」
と、話している間にメルダーの吊るされたナイフの糸は全て彼の手の中に繋がっており、それを全部引く。すると割れた空間にナイフは引っ込み、次にはメルダー自身とシンを除いてこの戦場の地面には暗闇の世界が映し出され、その中に大量のナイフがこちらに向かって来ていた。
「クッ……!」
「身を守れ……!」
「うわ。 危なそう」
相原柳は発煙弾を持ち、真上へと跳躍し地面へと発煙弾を投げ、ハンドガンに余分に次元エネルギーを注入。発射し、発煙弾が煙幕を出したところで通過、地面へと激突した弾丸からエネルギーは漏れ、煙が固まる様に次元エネルギーは液体から気体へと変えて行った。
シリスは鎖を展開し、それを幾つにも重ね一つのパネルを作りそれに乗り、身構える。
対して、アルゴスは身を守る様子は一切見受けられなかった。
「アルゴス!!! 面倒くさいからとりあえず、ナイフから身を守れ!」
「………」
それが叶う事無く、ナイフは向こうの世界からこちらへと攻めて来た。
雨のように止むことのないそれは、凄まじい物であった。
「くぅ……相原、どうする!?」
「って言ってもな。 身動きが取れないんじゃどうしようも、鎖でどうにかならないのか!?」
敵に聞こえるぐらいには大声で話し合う。ナイフの音がどうにも邪魔でこうするしかない。それに重ねて、さらに煩いのが……。
「わー、いてぇ」
身体中に切り傷が出来ながらも全くと言って良いほど表情をアルゴスは変えなかった。こいつはいつもこんな感じだ。精神に異常をきたしているとはいえここまで阿保とは前までは思わなかった。今は慣れた。気に障るのは私が能力者の中で二番目の強者として選ばれながらも奴が最強の能力者として君臨している事だ。
弘太は一番に強いのならまだ納得はいった。彼は、復讐を人生に生きているがそれでも狂いはしなかった。憎しみに心を潰されながらも良心だけは忘れない……凄い事だ。だからこそ、弘太には期待をしている。僕より年は下だ。今の僕と同じ年の頃には立派にみんなを守る者に……。
「シリス~。 どうする~?」
「だぁ、無理だ! このナイフの雨の中じゃ鎖を出したら、それこそ大変になる」
「ふーん。 なら僕がやるよ」
アルゴスは身体中に突き刺さったナイフを無視し、メルダーへと近付く。
(さっきのトカゲさんがいないなぁ。 隙を突いてくるのかな?)
と、考えながら満面の笑みで斧を軽く振り回す。
「……君は能力者の中じゃとてもまともと言えない存在だな。 力は確かの様だけど」
「褒めてくれてありがと~。 あと、流石に痛いからこの逆さ雨を止めたら?」
人差し指を顎に当て、傾げる様に思考した。確かにこれ以上はただの攻撃だ。ショーとは言えない。勉強不足というわけか。手品が一つじゃ誰もがつまらなく感じるだろう。なら、皆がもっと興味を惹かれる物にしよう。それが人間にとって悲劇的になる物なら尚更に知らなければ……。
メルダーはナイフによる雨の攻撃を止めてしまった。
「……チッ」
「止んだか……」
「何よー、もっと喜んでくれても良いのよ?」
鎖を解除し、凛と立ち上がる。左手に持ったエストックに白のエネルギーを溜め、静かなキレ気味な怒りを露わにする。
「あの攻撃を中止したことは礼を言おう。 だが私はお前が嫌いだ。 お前のような異常で周りを不幸にするのは」
「僕だって君の事は好きじゃないよ。 でも、仲良くはなりたいよ、だってチーム・ガーディアンズ・ファイブのメンバーだもん」
「………」
そこで黙ってしまった。私は、この男が嫌いだ。周囲への被害を考えずに戦ったり、一般人へ対する情報秘匿の徹底のなさがが特にだ。正直、こいつが何を考えて行動しているのか不明だ。敵組織“クレット”へ向けて、アイスの要求をし始めた時はお前の全てを疑ったものだ……。
(へぇ、意外に中が悪いんだね能力者って。 西幸弘太と賀霧雅哉の方が酷そうだが実際の所、どうなんだろうな……仲違いか)
こちらを観察していたメルダーは適当にナイフを投げつけてきたが、アルゴスが簡単に叩き落す。
「……あれぇ? さっきのおじさんは?」
「シンと交戦中だ」
柳はこの戦場から逃げようとしたシンを引き留め、タイマンで戦闘をしていた。
迫り来る爪や尻尾の攻撃を寸前で避けながら一旦下がり、別方向から短刀で一撃離脱を繰り返す。
負けじと尻尾を切り離し、爆発させるが柳は冷静にそれを対処した。短刀にエネルギーを注入、それを目の前に迫っている爆発の手前の宙を斬る。
次元エネルギーをその斬った後の宙に残り、残った斬撃を壁代わりに利用し直接的なダメージを和らげる。そして、左手に持ったハンドガンを放つ。
シンはそれを防ぐが、判断が甘かった。防いだ直後には柳の姿は見当たらなかった。探すが彼の次の一手は真下という全くの予想の付かない攻撃方法だった。
「!?」
手榴弾が自身の足元にある。だがありえない、ここへ来る音は一切聞こえなかった。それ以上の考えは手榴弾が爆発したことにより中断され、シンは豪快に吹っ飛んだ。
(……やはり、戦闘技術に関しては彼を警戒しておくとしましょうか)
メルダーはその場から場所を変え、まだ崩れていない建物の上で寛いでいた。周囲にボロボロの人形たちを配置しながら。
「さっすが、弘太の親なだけあって強いね!」
「……暇があるなら、あの趣味の悪い人形どもを倒すぞ。 あのクラウディラーを逃がす訳にはいかない」
「はいはーい」とアルゴスは悠々と人形たちの中へと突っ込んで行き、シリスは鎖を再び展開し援護に徹するつもりだ。
鈍間な人形の攻撃を避けるまでもなく、その前に次々とアルゴスは倒していった。アルゴスの周辺を余所に範囲外の人形をシリスは刃や鉄球を付けた鎖で破壊していき、シリス本人はメルダーへと接近していった。
「貴様がクラウディラー……メルダーと言ったか。 何の為にここに来た?」
音声を録音しながら、彼は問った。
「……先ほど言った勉強と、あの蜥蜴の監視かな。 まぁ、今日は帰るけど」
メルダーは後ろの割れた空間から無懺を出現させた。
――――――人間ではないとはいえ、彼等の行動の意図が非常に読みにくい。恐らく、勉強しに来てると言うのは本当だろうが、それが人間にとって良いものとは決して言えないしそれ故に本気で戦いに来ていない。後ろに脱出口がある時点でもう逃亡確定だが最後に彼に質問をした。
「……再度、質問だ。 人類を襲う事に何の意味がある?」
「あー、それはねぇ……」
恐ろしく単純で怒りを覚える答えが返ってきた。
「楽しいから」
分かり合えない。そう、この一言でシリスは確信した。能力者を誕生させたラヴァの例外もあるのでもしかしてと上層部は協力者にして、この戦いを早期に終わらせようとしていたがそれは絶対的に無理な物であった。
もう少しで投稿し始めてから、この作品は1年を迎えますね~
日にちも時間も丁度にその時は投稿しようかと、後良い感じなので50話で投稿したいですねぇ。




