四十三話「嫌悪」
「で、言う事は?」
他の書類に目を通しながらボスはそう言った。
「いや、そのな?」
「う~ん。 でも予定より大幅に時間掛かってるのに普通、僕のところに来る?」
エラマも資料を読み漁っていた。そして、その助手のパドはコーヒーを飲んで気の抜けた顔で一段落していた。
「あー、うん。 その何だ。 あれだ、そうあれ。 手記の解読状況を確認しに来たんだよ!」
「そんな考えて言われても説得力ないぞ……」
ヴィオは流石に隠し切れないと観念したのか。先ほどまでの事情を話した。もっと、上手い嘘を付けない物かねぇ……。
「ほう……して、その石とやらは今も取り込んでるのか?」
「ああ……!?―――――――」
「……どうかしたのか?」
頭の中に何かが響いてくる。何か……その何かは……声?
誰かが俺に囁いている。語り掛けている。そう、今話しかけているのは……。
「ル、リーヴ……?」
“ルリーヴ”。聞き慣れないワードが突如出てきた事に少し戸惑いつつも聞き返した。
「ルリーヴ? なんだいそれは?」
「いや、恐らく何だがこの石の名称だ。 突然、誰かが俺にそう囁いてきた……」
「……つまり、その囁きもルリーヴとやらの影響か?」
「ああ……」と相槌を打ちながら、情報を整理してみた。
任務先の遺跡へ行き、鎧のダバーソンと戦闘。ダバーソンを退かせた後、その遺跡の奥にて台座を発見。台座の上にはそのルリーヴを見つけ回収、その後、ヴィズダムの襲撃。その襲撃にてルリーヴが反応、お腹辺りに取り込まれその場で変貌……所謂“変身”という物だろうか。異形の怪人へと変身を遂げ、荒々しい攻撃により勝利。その後、アリーの手料理をお腹いっぱいに食べエラマのところへ向かったら不幸にもボスも一緒におり、現在に至っている……と。
ヴィズダムは自然にこの世界に来たのは分かる。だがあの鎧のダバーソンは何故、あの場所で動かずにルリーヴを守るように居座っていた? そこが一番の疑問だ。
……その疑問もこのルリーヴの正体を突き止めれば分かるのか? それとも……。
「エラマ……手記の解読は?」
「あ、ああ。 それが驚くほど進展はなかった」
「そうか……まぁ、そんなもんか。 そんなに月日は経ってないしな……」
と、残念がるもルリーヴの話題に話を戻した。
「俺が一番嫌なのはな……」
「……怪人になることか?」
「ああ、何とかならんか? 多分になるがルリーヴが俺の中にある限り、ふとしたことでなりそうなのがな……」
「我々としてもそれは困るな……エラマ、何か意見は?」
思考を続けていたエラマは口を開いた。
「……君の手記と何か関係ありそうだけどヴィオはどう思う?」
ここで俺の手記かぁ......確かにそう感じても仕方がない。ここ最近になって不自然な出来事が続いている。囁く……というよりこちらに情報を伝えるという点では同じだ。気のせいで片付けるにはまだ早い、もう少し情報を集めて整理、そこから答えを導き出しても問題はないはずだ。
「なくはないな。 後は、時間を掛けての情報収集だな」
「……よし、今日はここまでだ。 エラマはそのルリーヴとやらについて何か記されている資料があれば探してほしい。 引き続き、手記についても頼む。 後でこちらからも学者を呼ぼう……ヴィオ、お前は来い。 仕事の報告と新たな依頼だ」
「へいへい……」
「zzzzzzz……ふぇ~、みなさん話は終わったんですか~?」
寝ぼけつつ寝起きのパドはアホ面を見せつけてきた。三人は無視し、ボスとヴィオは自警団本部へと向かい、エラマは自室へ篭り、パドは再び寝る。
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創無の反応が出た。場所は……製薬工場だ。まためんどくさい所だ……後処理で使われる人件費と資金がまた……。
「……という事で、お話はここでおしまい。 ささ、西幸君は行きたまえ」
「分かってる……だが、反応が通常よりデカい。 賀霧雅哉も来るのか?」
「喧嘩すんなよー」
と、ここで通信が入った。
「コータ居る!?」
ファイが連絡してきた。余程の事態という事になるが……。
「ファイ、どうした?」
「そっちに私が任務で追ってるダバーソンが出現してると思うんだけど……」
「こちらでも確認した」
「なら話は早いわ。 私も向かってるから合流した後に奴を倒すわよ!」
「……了解」と弘太はファイに創無の現在地のデータを送り、武装の準備を始める。
「弘太君、気を付けてね」
「先輩! 頑張ってくださいね!!!」
「ああ……行ってくる」
行こうとしたがそこで北瑞に止められた。何の用だろうか。
「待って……今日、来たのはあなたに会いに来る以外にも理由があるのよ」
北瑞は支部長室の外で待たせてたガードマンからアルミケースを受け取り、そこから10センチ程の大きすぎる“弾頭”を取り出してきた。
「これは……」
「D-03、D-02の銃口の下の接続部にセットすれば使用可能よ」
ありがたいが、D-00、D-02、D-03と来てD-01は一体どこに行ったんだ……。
「ありがとう。 では……眞太郎、行ってくる」
「あ、ああ……」
眞太郎は複雑な心境ながらも弘太を見送った。
「クソ……めんどくさいなこいつ」
工場の従業員を襲う蜥蜴の怪人は雅哉の攻撃を捌きながら、薬品を飲み込んで行く。
雅哉は盾の銃口から弾丸を乱射、周囲の薬品を直接飲み込ませないように破壊しながら怪人に接近する。破損による金については今は後だ。
頭を鷲掴みにしていた怪人は従業員をそのまま雅哉へ投げつけるが、雅哉は従業員を蹴りつけ横へと吹っ飛んで行った。
槍による刺突攻撃が数度に渡り行われるが、それを尻尾で防ぎきる。そして、尻尾を切断。それを雅哉目掛けて爆発させるが盾で防ぎながら後ろへ跳躍し、見事に回避した。
(手っ取り早く殺すにはどうするか……ハァ)
雅哉は近くで死亡していた従業員を持ち上げ、そのまま怪人へ投げ付けた。
怪人はそれを当然避けるが、次の瞬間にはまた別の従業員の死体が飛んできた。怪人は再生し終わった尻尾で除けるが、同時に別の方向から槍が勢いよく突っ込み。怪人の腹部へと貫通した。
「クシャァ……!」
創無の怪人にしては珍しく声を上げた。その隙を突き、雅哉は懐へ飛び込み槍を掴みそこから赤のエネルギーを溜める。柄のトリガーを引き、槍の穂先から出た火球はそのまま爆発、怪人が盾の代わりになっているのであまり被害を心配する必要はなかった。
「……!?」
だが、怪人は死んでいなかった。大打撃である事なのは間違いはなかったのだが致命傷にまでは行かなかった。
怪人は雅哉を殴る蹴るの連続した猛攻で状況を一変させ蹴り飛ばし、腹部に刺さった槍を雅哉に“返した”。
「野郎……」
怪人は手をクイっと動かす……挑発だ。どうやらそんなに死にたいらしいなこいつは。
だが、そこで戦闘は中断された。
怪人は遠くから撃ち込まれた青く流星のような弾丸を即座に切り離した尻尾で身代わりにした。
「クッ……」
失敗した弘太はその場から、怪人付近へと着地。D-02とナイフで戦うつもりだが……。
「……ホント、面倒だな……」
新たに創無が出現した、俺達の目の前でだ……恐らくあの怪人が呼んだ―――――!?
「へぇ、楽しそうだね」
現れたのはヴィズダムもとい……ヘルシャーと呼ばれた創無だ。
「……何の用だ?」
雅哉がヘルシャーに対して質問した。
「まぁ、お勉強って所かな? もっとこの世界について知りたいしね。 で、そこの……罪でしたっけ? 早いところ消えてくれると助かります。 あまり同族と殺し合うのは面倒な物なので……」
シン……あの蜥蜴怪人の名か。
シンと呼ばれた怪人は何も応答することなく空間を鏡のように割り、無懺へと帰って行った。傷を癒すと言ったところだろう……。
そこで、ファイも到着した。
「……これ、どういう状況?」
「蜥蜴が逃げてアイツが来た、以上」
簡易的な説明をした弘太は身構える。ファイもそれに続き、構える。
「……とっとと終わらせる」
雅哉も槍を構え、エネルギーをチャージする。
「じゃあ、早速参りましょうか……」
ローブの中から剣と鞭を持ち出した。
……三対一だが相手はヘルシャー。油断出来る余裕はない。
ただで終わりそうにない戦いは鞭が地面を叩いた瞬間に始まった。
寝落ちしかけましたがどうにか完成しました…w
ルリーヴ関係は今やってる外伝第一弾でやる予定というかそういう話になりますね。
今の外伝のキャラはそのうち、一章内で出てきます、ぶっちゃけると割と出番多めです。後半になりますが。外伝は全部で6作品の予定です。今のルリーヴと今後の展開を考えて6作品ですね。
黒絶草本編も1章と5章辺りは長くなりそうですが基本的に各100話前後で全14章予定です。ですが、3,5,7,9,11章は表と裏に分けるので実質各200話前後です(白目)
大まかなシナリオは考えてるので中だるみがない事を信じたい。4章までは中だるみする余裕がないので大丈夫と思われますが…長文失礼しました。




