四十二話「咆哮」
貨物列車の車内警報が響き渡る。敵襲だ。それも人間ではない、創無だ。
「クソッ……! こんな時に創無だと!?」
「まだ後ろの車両の屋根にいるようです。 現在、応戦しているようですが通常の対応では足止め出来ないようです」
後方の車両から悲鳴が聞こえてきた。ここに来るのも時間の問題だ。
「……車両を切り離す。 お前はここの能力者に応援を要請しろ」
二人は各自行動を開始した。隊長は前の車両へ行こうとしたが隊員が引き留めた。
「……隊長!」
「どうした!?」
「どうやら既に能力者は向かっているそうです。 奴を追って!」
―――――という事はそれだけの実力が襲撃している創無にはあると言う事か……一刻も早く行動しなければ。
その後、直ぐに二人は別れた。隊長は前方の2両だけを残し切り離すため。隊員はその場で待機し少しでも時間を稼ぐため、奴を迎え撃つ。
……奴が最近報告の多いダバーソンか……? 組織を問わず襲撃を行い、創無に本来ない筈の咆哮……つまり、完全に音を出しているのだ。そして、今まで確認されなかった人を“喰う”事が確認され襲撃された全ての場所において保管されていた薬品が残すことなく奴にやられている。
その薬品をそいつは自身の体内に飲み込んでいるようだ……種類は関係なく、とにかく薬という薬とそれに類ずる物を欲する。この貨物列車も同様に薬品を積んでいる……九割は持っていけないな……それでも残りの一割を前に積んでおいてよかったな……。
2両目の車両へ着いた隊長は準備を始めた。そのタイミングで屋根から大きな衝撃が起きた……まさか。
だが、その衝撃を行った何かはすぐさま後ろの車両へと向かって行った。
(……もしかして、能力者が着いたのか!?)
窓を開け、そこから除いた。あまり見えなかったが女性で赤髪という事は分かった。
「ナンバーⅤ……?」
「あれが……」
屋根の上にその“怪人”は居た……。
蜥蜴のような風貌は人型でありながら異彩を放っていた。尻尾を生やし、人の頭……先ほどまで戦っていた隊員であろうその頭を怪人はこちらを観察しながら嚙み砕くように喰っていた。
「………」
怪人は何も発することなく俺を見据えている。
身体が震え上がる。これが創無、初めての感覚だ。能力者しか対応できないとはいえ少なからず創無を足止めするために戦う事はあった。だが、その中でもこいつは違う。
今まで体験したことない感覚が隊員を襲う。銃を構える事も出来ない。怖い、怖いんだ。誰か、誰か他にいないのか!? なぁ、こんなの俺一人じゃ出来っこ――――――。
怪人の爪が浅くだが隊員の胸辺りに抉り込み、壁に衝突するまで引き摺られた。
「ハァ……ハァ……」
意識は朦朧としている。胸の辺りから血が噴き出ていた。それを目の当たりにした隊員はさらにパニックを起こした。
ダメだ、俺も人類を守る者の筈だがそんなことは今はどうでも良かった。もう目の前の絶望で頭が一杯だ。助からない、もう無理なんだ。
怪人の爪が止めを刺そうとしたところで……彼は“生存”する事ができた。
「……?」
背中に熱い何かが当たった。怪人は後ろを振り向く。
「やっと見つけたわよ。 あんたを追うためにいくつもの国を回ったと思ってるのよ!?」
ガントレットから放たれたエネルギー弾……ガーディアンズ・ファイブの一人。ナンバーⅤ、ファイ・メイリー・ラプークだ。
ファイは即座に怪人にストレートを打ち出す。
が、怪人はそれを素手で受け止めた。
「ちょっ!?」
怪人はそのままファイに殴り掛かり数発当てた所で彼女を投げ飛ばそうとしたが、ファイは怪人のいない真逆の方へガントレットから出力の高いエネルギー弾を発射、その反動を利用し怪人へタックルし倒れる前に素早く動き、足で怪人の首を挟み、倒れる勢いをさらに利用しそこから回転し一回りしたところで壁へ打ち付けた。
ファイは起き上がり、隊員の元へ向かった。
「大丈夫……!?」
「ハァ……ハァ……ありがとう」
そこで、車両を切り離すはずの隊長が戻って来た。
「隊長、どうしてここに……」
「……お前を助けに来た」
「丁度良かったわ。 アイツ相手に守りながら戦うのは難易度高いから……彼の事は任せたわ」
隊長は隊員の肩を組み、引き摺るように元いた車両へと引き返した。
「……さてと。 あなたも進化するのなら人語を喋るのも容易いのでしょうね?」
体勢を直した怪人は無言のままだ。確かコータの所だと人型三体が集団的行動をし始めて、内二人が人語を喋った……なら、あのダバーソンもそこまで進化出来る筈……ここで決着を付けないと……!
ファイは構え、怪人は尻尾で地ならしをするかのように床へ叩き付ける。
両者はお互いの眼光を睨みつける。この場は恐ろしく静かだ……。
だが、その静けさも車両が切り離されたことで戦いの幕を開けた。
先手を切ったのはファイだ。素早く怪人の元へ飛び込み、強烈なパンチを繰り出す。
怪人は脚を上げ、防御に成功。少し後ろへ吹き飛ばされるが体勢を崩されはしなかった。
尻尾を叩き付け跳躍、そのままファイへ尻尾による攻撃を行う。
彼女はジャブを打ち、尻尾を跳ね返そうとしたが逆に絡みついてしまい、四方八方に何度も叩き付けられ、怪人は絡みついたままの尻尾を自身から切り離した。
「……!? これって……!?」
無理矢理に引き剥がし投げ捨て、尻尾から黒のエネルギーが漏れだしその場で爆発した。
(尻尾が爆弾……厄介ね……しかも尻尾が再生されてるし)
ガントレットの前腕部から爪を展開、紫のエネルギーを溜めガントレット全体を纏う。そして、尻尾を恐れることなく正面から殴り掛かった。
怪人は身構えるがその後のファイが使った能力により翻弄される。
「……!?」
怪人は防ぐ直前まで彼女は一人だったはず……そうだったはずだが気付いた時には“もう一人”の彼女のストレートが顔面に直撃していた。
もう一人の彼女は消え、再度のパンチに備えるが直前になってまた別の方向から別の彼女がボディーブローをかましてきた。
その後、何度か回避したが怪人側の対応が持たずそこからはファイの一方的なプレイとなり、全身に弾丸のような拳が撃ち込まれた。
流石に分が悪いと判断したのか。怪人は尻尾を切り離し、ファイの目の前で爆発し行方を消した。
「あ! 逃げるなぁ! ……もう! また逃げられた……でも、二人だけでも助けられてよかったわ……ロル、聞いてる」
通信の相手のロルは応えた。
「あー、聞いてるぞ。 身体の不調はないか?」
「んー、今のところは特に。 分離はしたけど、そこまで長くは使ってないし……後を追うからまた後で」
後始末は、応援に任せ怪人の追跡を彼女は続行した。
「弘太君!? 大丈夫……!?」
零華の声で過去から戻された。
「大丈夫ですの? 何かずっと思い込んでいるようでしたけど……」
「先輩、何かあったんですか……?」
ああ……嫌な予感とは違ったが自分にとって大切な記憶を思い出した……後は。
「弘太、本当に大丈夫なのか?」
「ああ、問題ない、眞太郎……白神主任」
「なにかね」
彼はいつもの表情を変えず、ただ質問を待っていた。内容は分かっているようだ。
「白神主任、何故私の記憶はこんなに抜け落ちているんですか!? こんなにも大事な記憶を忘れるわけがない……あなたが私に何かしたんですよね?」
「ああ、その通りだよ。 でも、いつもの事じゃないか。 君の身に何かあったから相応の手段で治療している……これじゃダメかな?」
いつも通りにこの男ははぐらかす気だ。だが今度はそうはいかない。
「いい加減にしてください! これは私にとって重要な事なんです! 教えてください! 特に私の家族について!」
「ダメだ」
白神ははっきりと否定した。
「言えないし言う気もない……その事については相原に聞け。 この件については彼に任せてある。 いずれ話すさ……」
「……本当ですか?」
「ああ……」
この場で何を言おうと無駄だと分かり切った弘太は素直に引いた。また、謎が深まった。俺の知らないところで全てが動いている。後は自力で何とかするしかない。調査と共にもっと記憶を掘り起こさなければいけない、そう強く思った。
航空機から降り、空港へと着いた柳はここで待っていた能力者と合流した。
「あなたがアイハラで?」
「ああ……シリス・グラット。 よろしく頼む」
ナンバーⅡのシリスと会った柳は今後の任務について話し合った。
「……その前に、聞きたい。 コウタは元気で?」
「うーん……最近、友達が出来ているぐらいには」
「よかった……」と彼は心配してくれた。
「……では、本題に戻りましょう」
ヴェルズの時とは違い、スムーズに話が進み任務までかかる時間が早い事にやっぱりヴェルズはめんどくさいと柳は強く思った。
やっぱ、複数の視点を同時にやるって難しいですね……
ガーディアンズ・ファイブもⅠだけを残して4人とも登場しましたしⅠも早く出さなければ!
戦闘描写はやっぱり地味ですかね...でも、そこまで派手な戦闘はここぞという時にやりたいですねぇ
もうこれ以上、別視点はやりたくないけどこの話以外だと過去のヴィオもあるしやりたい事全部やる為には結局、視点が増える増える……w




