表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
40/95

三十九話「婚約」

「ここね……」


 白銀のような上質なヘアー、ネイビーのワンピースを着こなすその姿はまさしく優雅と気品を兼ね備えた麗しいお嬢様のようだ。


 気になる年齢はというと……西幸弘太と同い年だ。


(西幸様、待っていてください。 私が今すぐにも向かいますので!)


 少女は静かに第4支部へと足を踏み入れた。












「ここに呼ばれた理由が分かるかな?」


 白神はそう言い、コーヒーを口に注いだ。


「分かってはいます。 だがこちらも聞きたい事がある。 異常変化を持つ賀霧雅哉をここに就かせたのは何故ですか!?」


「まぁまぁ、落ち着きたまえ西幸くん。 君こそ目撃者であるはずの風烈眞太郎くんを見逃したのは何故かな?」


「そ、それは……」


 コーヒーのカップをデスクに置き、立ち上がり近くの水槽を覗き込む。中は金魚の群れでいっぱいだ。彼が毎日世話しているペットたちだ。


「別に見逃した件に関しては咎めないよ。 後で監視付けるし、それに君の貴重な友人だからね。 そこまで僕も酷い男じゃないさ」


 金魚たちに餌を与えながら話は続く。


「問題は報告しなかった事さ。 報告だけは徹底していくように、分かった?」


「……分かりました。 大目に見てもらいありがとうございます」


「ふむ。 それはそれと」


 こちらに指を指して話を切り替えた。この男はいつも唐突に別の話を持ってくる。今度は何だ……この男の事だ。くだらない話しか用意していないだろう。


「君には幸雪くんという愛しの存在が居るのはある程度は周知の事実だ」


「……え? いや、それは「ではただの友人だと?」」


「………」


「沈黙かね。 まぁ、君たち二人の関係は聞いてるだけでも丸わかりだ。 と、それは置いといてだ。 悪いが最近、西幸君の独断行動が目立つんでねぇ。 上司やら出資者たちが煩いんだよ」


「ハ、ハァ……何か罰則が?」


 白神はしばらくの沈黙の後、こう答えた。


「う~ん。 罰と言うと違うねぇ。 言っちゃえば出資者の要望をこちらは受け入れた訳だよ。 結婚相手の」


 ……ん? 悪寒が弘太の全身を襲った。 それも特大に災厄をもたらすレベルだ。 主に弘太の周りの環境をだ。


 結婚……一部の偉人によれば人生の墓場だという地獄のゴール。そのワードが出てきたという事は……。


「つまり俺が……」


「その通りだよ。 おめでとう! 君は今二人の彼女が居るんだよ!!!」


「何で相談もなしにそんなことに「西幸さまあああああああああああああああ!!!!!」」


 弘太だけを求めるその声はドアを突き抜け、彼に飛び掛かる。


「西幸様! お久しぶりです! 会いたくて仕方がありませんでした!」


「……北瑞ほうすい、一旦離れましょう」


「はっ!? 私としたらなんて大胆だ行動をしてしまったのでしょう……でもこれは「弘太君!?」」


「……弘太先輩?」


 穂乃﨑と零華がその場に居た。 それもまだ北瑞と腕を組んだ状態でだ。最悪な事態となってしまった。零華にだけは嫌われたくなかった。彼女の為なら俺は命を懸けられる。だから、ここで信用を失うわけには……!


「そ、その子誰よ! せ、説明してくれるよね!?」


「ああ! だから今説明する!」


「コホン。 自己紹介は私からしますわ。 私は“北瑞ほうすい かなめ”よ。 北瑞という名に覚えはありませんか?」


 先を越された。そして、二人は脳内の細胞をフル稼働させ思考を巡らせる。そして、穂乃﨑が先に思い出した。


「……あ! 幸雪先輩あれですよ! えらくデカく宣伝されてるあの金融会社ですよ!!」


「……ああ!! 最近、大きな取引したってニュースで言ってたあれね……でも、なんで弘太君と腕組んでるのよ!?」


 状況は次第に悪化している。無理矢理にでも軌道修正しないと修正不可能に陥ってしまうだろう……。


「零華、それは!「私たちは婚約者ですから♪」」


「そ、そんな……」


「でも、安心して良いわよ。 別に私と幸雪様の両者とも結婚できますから」


「「……え!?」」


 零華と穂乃﨑はそこで疑問を覚えた。普通はこの国で複数の女性と結婚なんて出来るはずがない。それは能力者でも同じなはずだ。


「理由は簡単ですわ。 15年前の大規模戦闘において能力者が急激に減少し、今は一人でも戦力が欲しい状況。 その中で男性能力者は複数の女性と結婚するのを許されておりますの」


「そ、それでも! 急にそんな話になるなんておかしいよ!!!」


 今、彼女は燃えていた。突然、横槍されて弘太に魔の手が迫っているのだ。こんなことは見過ごすわけにはいかない。


「いえ、私自体は既に8年から彼に惚れ込んでますので」


「弘太君、どういう事?」


「……彼女はディノープの支援者で北瑞財閥の令嬢だ。 その身分故に学校以外に外出することは極力避けられていてたまに俺が遊び相手として呼ばれた……それだけのはずだ」


 だが、問題はここからだ。どれだけセキュリティを頑丈にしようと創無は全てを無視して何もない空間から現れる。弘太が北瑞の屋敷に来た時にもそれは例外ではなかった。襲われた時に彼女を庇う形で押し倒した……全てはここからだった。


 弘太はクリスマスの洋館事件以降、性欲などを刺激する機能を失ったことによりそれらに対して鈍感になり大胆な行動が多くなる。


 そのせいか、弘太は北瑞要と接するときに恥じらいを持たないため彼女に対してプロポーズをしてるのではないかと疑われる行動を始め偶然では済まされない行動を割としていたため、要はいつしか弘太の事を異性として意識し今では考える事の7割の事は彼の事ばかりだ。


「彼に対する気持ちは本物よ……それはあなたもですよね?」


「ひゃ!? そんな事……!」


「……両想いでも?」


「え?……ホント?」


 弘太は目が泳いでいた。そして、それが零華へ対する気持ちが恋であると弘太と零華は確信してしまった。


(――――――この感情、恋だったのか……)


「わ、私と弘太君が同じ気持ちだったんだ……」


「……羨ましいですわ。 西幸様に気に入られて、ですがこれからは違います!」


 要は弘太に抱き着き、弘太に顔を近付ける。


「西幸様、能力者の中では一夫多妻は珍しくないのです。 むしろ普通なのです! だから、これからは幸雪様だけでなく私の事も見てくださいね。 私はあなたの愛が欲しいのです」


 彼女は自分の頬を弘太の頬に擦りつけた。何故だからわからないが妙に落ち着きを感じたし温もりを感じた。


「……弘太君、私も負けないから!」


 要を押しのけ弘太に抱き着いた。要は零華の豊満な胸に軽く吹っ飛ばされた。そして、その胸を見た穂乃﨑と北瑞は絶望的な差を感じた。これが格差社会という物なのだろうか。


「クッ……」


「あの胸で西幸様を撃沈させたのね……流石と言っておきましょう」


「弘太~、私も弘太の事が好きだよ!」


「……俺もだ。 ごめんな、誤解させるような事になってて。 俺がもう少ししっかりしてれば……」


 零華を弘太の頬に両手を当て顔を近付けた。


「うんうん。 分かってるよ。 弘太君が優しくて誰かを無理に傷つけたくない事は。 でも、優柔不断じゃなくてやる時はしっかりやる子だしね。 最初から分かってたけどやっぱり動揺しちゃって……ごめん」


「良いんだよ、むしろ感謝してる。 そんなに僕の事を思ってくれて、心配してくれて……」


 二人はまじまじと見つめ合う。もう変なしがらみも何もない。後は素直に気持ちを改めて伝えるだけだ。


「……零華の事が好きだ。 結婚を前提に付き合ってください」


「はい、喜んで……私も弘太の事が好きだよ、付き合ってくれる……かな?」


「もちろん、答えはイエスです」


「……何だ。 この甘ったるい空気は……?」


 そこで部屋の扉が開く。そこには眞太郎が唖然とした顔でこちらを見つめていた。


「弘太、お前……」


 さらに不味い事になった。何故いつも俺に周りは問題ばかり起こるんだ……。


「眞太郎、これは!「羨ましいなぁ……」」


 予想外の反応に思わずキョトンとしてしまった。


「羨ましいよ弘太。 そんなに女子からモテてさぁ。 どうせ俺なんか……」


「白神主任! これはどういう事ですか!?」


 白神はこちらを時折チラチラ見ながらデスクに置かれていた書類に目を通していた。そこにはディレイブの事も載っていたが“ガブラッド”、“パラドネス”と書かれた別の資料もあった。


「まぁ、咎めはしないし監視も付けるけどある程度説明しておく必要もあるしねぇ……?」


 そう言いつつ、パソコンにデータを入力している。この男にとって恐らく目の前の現状は愉快過ぎて仕方がないのだ。そろそろ、こいつを支部長の座から引き摺り降ろしても良いのではないか。その立場故に武器の開発も趣味へ偏り現場のスタッフも暴走し始めこの支部で実質的に彼を止められる人間はいない……。


「まぁ、弘太も何か色々大変そうだけどさ。 二人の愛を受け止めて幸せにしてあげなよ……その能力者ってのはそれぐらい普通なんだろ……?……弘太?」


 愛……愛……妙に先ほどから頭に響くワードだ。訳が分からないが無性に嫌な感じがする。


「愛……温もり……」


「だ、大丈夫か? 弘太?」


「弘太君! しっかりして!」


「先輩! 気を確かに!」


「……記憶が戻ってきてるみたいね」


 それは雪の記憶を呼び起こすには十分すぎる物だった。

 今回のようなラブコメは恐らく長続きしません。私自身がギャグよりシリアスの方が書きやすいというのもありますが。

 恋愛関係も多分ドロドロし始めます。それにヒロインが揃ったなんて一言もねぇ……?

 そろそろホラー要素を強めないといけませんね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ