三十八話「対闘」
力の限りに奴等に斬撃を繰り出すがそれでも鎧のダバーソン、ヴィズダム、クラウディラーはいとも簡単に避け、こちらに確実に傷を負わせていく。
(クッ……人型三体相手では流石にきついか……)
ハッキリ言ってピンチだ。こんな事態になるとは誰も想定していなかった。だからこそこういう地区に居るのだが……それでもダメだった。
どうするか迷っていたその時。
「へぇ……ナンバーⅣでもあるアンタでも勝てないんだ」
賀霧雅哉は現れてはこちらに対して挑発してきた。
「……何か文句があるか?」
「いやいや、事実を言っただけだよ。 ホントに」
「……その下であるお前も勝てないって事か」
「あ?」と喧嘩腰になってきた雅哉。やはりこの二人の相性は良くないようだ。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。 それとも何だ? ナンバー入りしてないのに俺よりお前が強いと? 愚かだな」
「言わせておけば……!」
だが、こちらの行動を観察していたヴィズダムは別の創無、サイのサドゥシングを呼び、会話を妨害した。
「何故“怒る”という選択をする必要があるんだい? 利用出来る物なら別にそこまで嫌になる必要はないのでは?」
「……うざいなあいつ」
「お前もだ……とにかく力を貸せ。あいつらをぶっ殺す」
「俺が先にやる。あんたはそこで指を咥えて待ってても良いんだぜ?」
そして、弘太も雅哉もキレ具合が増していき、二人はそのイラつきを敵へとぶつける。
雑魚同然であるサドゥシングは放っておき、先にあの三体を仕留める。頭の悪いサドゥシングはどうせ俺達以外には攻撃してこないであろう、まずはヴィズダムを始末する。
雅哉はヴィズダムとの交戦となるが、弘太はサドゥシングと鎧のダバーソン、クラウディラーに阻まれさらにイラつく。
(……クラウディラー、まずは貴様への復讐を果たす)
現在、雅哉へ対する嫌悪感でだけでいっぱいだが自身の憎悪がそれで消えることはなかった。むしろ、これにより以前より増したかもしれない。混ざり合った感情はより自身を強くしていく。能力者である事に感謝しなくてはならない。
感情を高めるだけで己を強くできる……それも憎しみでだ。こんなに都合の良い環境が他にあるのだろうか?
刀で大きく振るも鎧のダバーソンの剣はそれを防いだ。そして、その隙をクラウディラーは突き幾つものナイフを宙に展開させそのピエロのような見た目通りにサーカスみたいにこちらへ一斉に放った。
弘太はそれをアモリより出現させたD-02で迎撃しようとする。
「ラピッド、ファイア」
モードを切り替えたD-02から連続で発射された弾丸は次々とナイフへと直撃していく。
「チッ……おい、お前。 そんなに人間が良いのか?」
怪物であるヴィズダムに雅哉はそんな質問を投げ掛けた。
「ふむ……未知に興味を持つのは当然の事では? では、聞きますがあなたはこの争いの最後に何を望みますか?」
槍の猛攻を捌ききりながらヴィズダムは剣で的確に突いていくが雅哉も攻撃を受ける事なく避けつつやり返した。
「愚問だな……お前ら創無と邪魔な人間を全て消すことだ!!!」
そして、雅哉は槍に“赤”のエネルギーをチャージした。
「!? 赤……異常変化……白神の奴……めんどくさい奴を寄越してくれたな……」
通常、能力者が使用する次元エネルギーは八段階に分けられているがその中に赤はおろか暖色系統は含まれていない。それらが発生したという事は彼の過去に何かあったという事だ。それも人間性を大きく歪ませるものを……。
「ふぅ、やっぱり落ち着くなこの色は……さて、どう殺してやろうか?」
そこでヴィズダムは静かに考えた。
――――――ここは退いた方が良いでしょう。 新たな情報も手に入った事ですし問題はないでしょうし。 後はいつ“人間という存在を獲得する”事ですか……困難な事ですが出来ない事ではない。
「……ここは一度帰る事を提案しますが……“ケンプファー”、“メルダー”?」
鎧のダバーソンとクラウディラーの事をヴィズダムは確かにそう言った。
「クッ……!」
三体相手に苦戦していた弘太はD-02の銃口下部の接続部分に刀を接続、紫のエネルギーを溜め銃口から刀へと強力なエネルギーが放たれ、制御ギリギリのエネルギーは刀を利用し流すように鎧のダバーソンへと突っ込んでいく。
「………!」
かなりの直撃を受けた鎧のダバーソンは微動だに苦しむわけでもなく何も言わず待っていた。彼はヘルシャーに肯定していた。
「……“ヘルシャー”、ソレガイイ、モウヤルコトハナイ」
クラウディラーはヴィズダムの事を指して言った。
「待て―――――!」
だが彼らはその言葉より先に無懺の世界へと去ってしまった。
「……おい、あんなことする暇あるならとっとと倒せ」
弘太は雅哉に八つ当たりした。
「アンタも本気出せよ。 そんなもんじゃないんだろ?」
お互いがお互いを挑発する。仲良くする気は欠片もないようだ。
その間に一体取り残されたサイのサドゥシングは命令主を失ったことにより暴走をし始めた。
サドゥシングは角から雷のようなエネルギーを放ちながらこちらへ突進してくる。
「ああ、もう……」
「チッ……」
二人はその攻撃を左右へと回避し、両者ともに片足でサドゥシングの尻をそのまま押し出すように蹴飛ばした。
蹴飛ばされたサドゥシングは立ち上がり、再びこちらに突撃しようとしてくる。
「……シングル、ファイア」
弘太はD-02から刀を離し単発モードへと切り替え、雅哉は槍の柄に付いてるトリガーを引き、二つの穂先の間の銃口から火球が現す。
突撃してくるサドゥシングに雅哉が先行し突撃、弘太は跳躍しサドゥシングの真上まで来たところでD-02から発射された弾丸は直撃する。それと同時に雅哉の槍はサドゥシングの口の中へ突入し火球を一気に解き放ち派手に吹っ飛んだ。
吹っ飛ばされてがいたがサドゥシングはまだ生きていた。瀕死ではあったが。
弘太は刀に青のエネルギーを、雅哉は槍に再び赤のエネルギーを溜め始めた。
サドゥシングは立ち上がろうとしたが受けた傷が想定以上に大きすぎたのか、ふらついて上手く立ち上がれていない。
チャージを終えた二人は静かに構え、次の瞬間には青と赤の軌道が混ざるように醜い塊を切り裂いた。
「……ふぅ」
「ハァ……チッ」
お互いを睨んだ。殺意剥き出しなその眼差しは今にも殺し合いを始めそうな雰囲気であったが……。
「……あのー」
眞太郎がその雰囲気を見事に壊してくれた。
「お前か、さっきの言ったことは分かって「眞太郎……!?」」
「……知り合いか。 面倒ごとは任せた」
そう言い、雅哉はその場から去ってしまった。
「「………」」
その後、しばらく気まずい空気が続いたが眞太郎がこの静寂な空間から脱出させてくれた。
「……まぁ、見ちゃった」
「どの辺からだ……?」
「なんか全身真っ黒な鎧とローブの奴と戦ってたところから……かな? 鏡からだけど」
「……とりあえず一緒に来てくれるか? このまま帰すというわけにもいかない」
「ああ」と素直に従い付いて来てくれている。正直言って想定外だ。まさか、眞太郎に目撃されるとは思わなかった。これからどうして良いものか……彼の記憶も処理されるかもしれない。もしかしたら関わった記憶……僕の事に関しても消されるかもしれない……。
「………」
少し立ち止まり考える。今の自分の判断は正しいか。果たしてこれで良いのだろうか……嵐のように思考を巡らせ、決断した……。
「……眞太郎、今あったことを絶対に誰にも言わないと約束できるか?」
「あ、ああ……約束する。 この事は誰にも言わない。 誰にもだ」
「……ならよかった。 それならもう付いて来る必要はないよ……“友達”同士の約束だぞ?」
「ああ! 分かってる!」
確かにさっきは色々あったが今は数少ない友人との交流に専念しよう。その後、色々ありながらも弘太は眞太郎と一緒に夜遅くなるまで近くの飲食店を巡っていた。最初は……ラーメンからにでもしよう。




