三十七話「情報」
「っと! 外の状況は!?」
テロリストたちの銃弾の嵐を潜り抜け、ハンドガンと短刀のみで見事に突破していく。
「クソッ! 聞いてはいたが能力者という連中は本当に人間じゃないようだな!?」
「クッ! 隊長! ここは一度退いて別の作戦を立てては――――――」
だが隊員の首は短刀によって切り裂かれており、もうこの世から命を絶たれていた。そして、隊長は反撃しようとしたがその前に強烈な回し蹴りが頭部へ直撃した。
「グハッ! ウッ……」
気絶したか……兵士たちのリーダーの様だな。使える。
「……ところで外の戦況はさっきからどうなってる?」
「ハイハーイ。 今は丁度外の奴等は殺っといたよー。 これから突入するところ、じゃあまた」
「派手に余計なところまでやらかすなよ……」
彼の心配を余所にヴェルズは近くに待機しておいたジープで移動。対人スナイパーライフルから対物スナイパーライフルへと変え、炸裂弾をセットする。
そして、ジープを自動運転へと切り替え敵基地へと照準を定め、派手に直撃。そこら一帯は大惨事となり肉片となっているテロリストたちもいた。
さらに炸裂弾を装填し、撃ち続けた。
「……さて、これ撃ったら本当に突入だ!」
彼はジープの後部座席から自身で作り上げたロケットランチャーを用意した。
「……いやぁ、楽しみだなー。 こいつの初陣だ。 威力は問題ない、後は実際に使用したらどうなるか分からないかだが……だから今使うんだ! 派手に行くよー!」
何の躊躇もなく彼はトリガーを引いた。
「逃げろぉー!!!」
彼等は全力で逃げたり身を伏せたりなどして自身を守った。基地には大きな穴が出来てしまい悠々とヴェルズはジープで突撃してきた。
「ハーイ! 皆さんはそのまま動かないで待機してください! 抵抗する、不審な動きがあるなら即刻この基地ごとこの星の藻屑になっていただきます! あ、沈黙は肯定だぞ☆」
テロリストどもは素直に従った。たった二人の襲撃者に壊滅されるとは思ってもみなかった彼等はこの存在に恐怖した。特にヴェルズには。そして、柳はなにやらまるで失敗したかのような顔でこちらに向けていた。
「どうしたんだい? 作戦は継続中だがこちらの勝利は確実だよ?」
「……今回の責任は全て自動的に君に送られることになっているとランベル支部長は話していたが?」
テロリストどものリーダーを使って色々やろうとしたが彼が全て終わらせてしまったので用済みの隊長を柳はそこらの床へ捨てた。
「……不味い。 開発室から僕の私物が捨てられる……ま、僕の部屋じゃないから問題ないけどね」
諦めの表情を見せた柳はとっとと基地の地下へと向かい。先ほどの隊長がいた部屋へと入室した。部屋の中を探し始め、目的の資料を見つけようとしていた。
その資料ってのは……? と、ヴェルズに聞く。
それは“情報複合金属”をより弘太向けに改良するための物らしい。そうしているうちにどうやら見つけてしまったようだ。
「……中世の時代の記録みたいだが?」
「そう! それ! それだよ!」と正解を引き当てたみたいだ。中身を見てみる。そこには“ヴィオ・バロック”と“レビト・シギンス”についての情報、彼についての当時の心境が記された手記の一部などが記載されていた。
「いやー、弘太の肉親は一人もいないからねぇ。 問題はこの資料も大事だが……ヴィオ・バロックがレビト・シギンスへと変身した時に使われた物は覚えてるかい?」
「……まさか!?」
そう、それは少し危険な賭けになるかもしれない。レビト・シギンスへと変貌するために必要なバックルのようなアイテム“ルリーヴ”。もしそれが現代でもどこかでまだ失われずに残っているとしたら?、という物だ。情報複合金属を調整するのは簡単だが特定の人物の為に極限まで最適化するには難しい。
そこで能力者である血縁者の次元エネルギーが必要となる。
情報複合金属はまだ試験的段階だが使用する能力者のエネルギーによって操作される事になっている。だが、直接エネルギーを持っているわけではない情報複合金属にとってこれは負荷となりエネルギーに負け消滅してしまう。ちなみに弘太が受領したD-02は一部ではあるが情報複合金属が使われている。
そこでこの情報複合金属とルリーヴがディレイブ計画の重要な部分となる。
ルリーヴは弘太の先祖であるヴィオ・バロックが使用した物、つまりこれで変身するという事はこれを通じて全身に創無に対抗できるよう次元エネルギーを怪物の皮膚に織り込ませている事だ。
必然的にルリーヴに彼の次元エネルギーが残っているかもしれないという事になる。今も存在していたらの話だが。
ルリーヴを用い、これを中心に情報複合金属で一つの兵器を作る。そう、恐らく誰もが本当に兵器なのか疑う物を……。
「……このルリーヴの居場所は掴めないのか?」
「そればっかりわねぇ。 次元エネルギーが入ってるから迂闊に持ち去る事は出来ないけど……その場所に基地をそのまま建造していたら話は別だけどね」
「このヴィオって人が居た地域は判明してはいないのか?」
「ああ、それなんだけどね……」
「どうした?」と聞く。顔から察するに余程めんどくさい事になっているのだろう。
「いやーねぇ……海の下は流石に無理かな」
海……確かに不可能だ。能力者は適応能力があるので水に適応でき、呼吸の心配はないがそれでも人の身で広大な海の中を探すのは困難な事だ。
「でも弘太ならやりかねないな。 彼は執念で物事を捻じ曲げる位には凄いからね」
「いやそれは流石に……いや、今の弘太なら……」
「何か彼に変化が起きたのかい?」
「……一人、クラスの女の子と最近一緒にいる」
「oh! 無愛想な彼にも遂にガールフレンドが!」
思えばそうか。とうとう弘太にも彼女が出来たのか……二人の間ではまだその関係ではないみたいだが定期的に来る報告では両想いという事は確定しているらしい。喜ばしい事だ。このまま家族だった慎さんや奥さんの歩夢さん、弟の拓海くんのような悲劇は起こさせない。彼の友人だったエミルやユーリの洋館事件ももう起こさせない。
少しは辛い目に遭ってしまうかもしれないがそれも乗り越え、弘太には幸せを掴んでほしい。それが俺にできる、やらなければならない使命だ。
「……応援も既に要請している。 時期に来る……よかったなお前ら、こんな爆弾魔よりマシな所へ行けるぞ」
「爆弾魔って酷いなー」
色々あったが無事終わり次の支部へ向かう事になった。この支部ではヴェルズ以外では危険人物はいないという事は分かっている。何より危険人物本人である彼が何も言ってこないという事は支部内ではホントに何も異常はないという事だ。
ヴェルズは対物スナイパーライフルを取り出し弾を装填、自ら開けた穴へと向け空へ照準を向ける。そして、放たれた弾は見事に弾道ミサイルを貫通した。
「だから基地爆破する必要あったでしょ? まぁ、こいつらの上司が本当にするとは思ってなかったけど」
「……お土産買わないとなぁ」
「なら僕の試作品―――――「却下する」
と、終始応援が来るまで漫才染みた会話を続ける二人であった。
「クッ……手強い」
目の前には二体の創無がいた。鎧のダバーソンと黒のローブを羽織ったヴィズダムであった。
反応が強くて来てみれば……こいつら相当強いぞ……恐らく大分昔から存在している創無と考えた方が良いだろう。だが何故二体同時に……。
「……ナンバーⅣにしては不釣り合いな強さですね……」
「!?……喋っただと……?」
こんな事態は初めてだ。いや、世界初めての事かもしれない。音を一切発しない彼等が言葉を発したのだ。異常事態だと言える。
「……その様子だとやっぱり彼は口を閉ざしたまま死んだんですね。 それに驚いているようだけど僕たちも君たちと同じ存在って事忘れてない? つまり、音を発生出来ない性質でも君たちと同く“進化”すれば良いだけの話でしょ? ふむ、言い方もだいぶ様になりましたね」
……確かにそうだ。失念していた。彼らが喋らない存在として通っていたためそれが当たり前となりこのような事態になると予想していなかった。
「白神ッ!!! 応答しろ!」
しばらくし、応戦しながら距離を取り連絡が付いた。
「呼び捨てって酷いなぁ、それに怒鳴ってるし」
「創無が言葉を発した! それもタイプはヴィズダムだッ!!!」
「!?……分かった。 ヴィズダムか……知能が恐らく一番高い彼等なら不可能ではない。 だが本当に言葉を話すとは……対話を試みてくれ。 とりあえずだ……西幸君?」
弘太は言葉を失った。何故なら三体目の創無が現れたからだ。それもただの創無ではない。長身にして道化師のような衣装、両手にナイフを持ち、赤色……人間の血を浴びている。恐らくさっきまで人を襲っていただろうそいつは……。
「クラウディラーッ……!!!」
それは弘太にとって悪夢の再来だった。8年前のあの日、非力な自分は大切な人たちを殺された。その絶望と憎悪の気持ちだけでここまで来た。その目的が目の前にいる、やる事は一つ。
「うおおおおおおお!!!!!」
耳が痛くなるほどの叫び声を出しながら彼は刀を引き抜き、無謀にも一人で突っ込んで行った。
買い物帰りの眞太郎は奇妙な音を耳に入れてしまった。
(何だろう……って、弘太じゃないか……何やってるんだ?)
不思議に思い、後を付ける。そして、彼は見てはいけないものを見てしまった……。
何だろうアレ……弘太はなんで刀なんか持ってるんだ? 流石に模造刀だよな……!?
次の瞬間、彼は戦慄した。刀を振りだし始めた。それだけならまだ言い訳できる程度だがそれと同時に周囲の物がどんどん壊れていく。それも勝手にだ。まるで何かと戦っているようだ。
そして、近くにあった鏡にローブを羽織った何かと鎧と剣を持った奴を確認できた。
(鏡にしか見えないけどあいつらなのか……というか何であんな奴等と弘太は戦っての!?……!……)
重要な事実に気付いたがそれより今はこの状況だ。何が何だかよく分からなくなっている。
そして、後ろから人の気配がした。恐る恐る振り返ってみる。
「だ、だれ……?」
「……そこでじっとしてろ、黙ってろ。 見たからにはこちらの指示に従ってもらう。 良いな?」
雅哉は静かに警告した。
「あ、ああ……」
状況が流れるままに進んで行く。自分はとんでもない物に首と突っ込んだのかもしれない。そう思いながらも弘太の戦いを見続ける彼であった。
今回出てきた敵三人は要は幹部ですね。やっぱり幹部居た方がお話し的に盛り上がると思うんです。実は30話近く早く登場させました。タイミング良いので出した感じです、これで良い方向に行けそうです。
情報複合金属については70話で解説する予定です。
深夜のテンションで2時間で書いて1回だけの誤字脱字の確認を変えないとなー。




