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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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三十五話「変貌」

「さてと、敵基地の爆破方法だが……」


「……待ってくれ。 本当に爆破する気なのか?」


「? 何で爆破させちゃいけないのさ? とりあえず爆破しとけば任務終了するでしょ」


「いや。 そういう事ではなくてだな……そもそもこの任務はクレットの基地の奥にある重要資料を手に入れる事の筈じゃなかったか?」


 そこでヴェルズは少し過去を振り返った。









 時はクレット砂漠基地襲撃作戦の二日前に遡る。


 場所はディノープ第3支部、周りは見事なまでに真っ赤な大地でサボテンとかが生えているだけだ。


 第3支部の支部長室へヴェルズ・カーターは入室した。


「えー、失礼します。 第3支部所属ナンバーⅢのヴェルズ・カーターです。 用件をとっとと言ってください支部長。 僕は新しい爆破兵器を作るのに手一杯なんです。


「ならまずはうちの資金を使うのを止めてくれ。 勝手に開発室に入り浸って中は私室同様の状態にして頼んでもいない爆弾等の武器を作るのはこの支部全体の負担になるんだ」


「でも先月のクレット支部基地は僕が開発したグレネード一つで壊滅したじゃないですか。 一つだけしか開発してなかったしうっかりデータ取るの忘れてもう作れませんが」


「それは良かった。 そのせいで余計な予算と人員を使う羽目になったんだからなぁ!」


「なら良いじゃないですか! お金は使ってこそ役目を果たしますからね! 作業に当たったメンバーもこれで次に同じ事が起きてもより迅速に対応できるでしょう。 そうは思いませんか? “ランベル支部長”? 」


「どう言いくるめようと無駄だ。 今度こそ開発室から出てってもらうからな。 後グレネードにそんな威力を込めるな!」


「……用件があるのでは?」


「……お前の所為だからな」


 グチグチ言いながらも本題を話し始めた。


 内容はいつもの任務の事だった。ただいつものような任務ではなかった。ここから離れた砂漠地帯で第4支部からの能力者との共同作戦をすることだった。珍しい、他の能力者との共闘は絶対裏に何かあるという事だ。第4支部……あ! あそこか!


「第4支部って事はもしかして弘太が来るんですか!? 彼なら文句言うことなく僕の兵器使ってくれますし」


「いや、別の能力者だ」


「えー。 せっかく“ガーディアンズ・ファイブ”の内の二人が揃うと思ったのにー」


「文句を言うな。 敵基地の資料を取って来い。 それだけだ」


「……“ディレイブ計画”に関係してますよね?」


「ああ……」


 ディレイブ計画、それは第4支部支部長兼開発主任の白神 典幸が発案した物だ。内容は至ってシンプル。西幸 弘太を強くするための新兵器を作る。ただそれだけだ。この計画が成功すれば能力者の創無との戦いも少しはマシになるはずだ……にしてもディレイブ計画の全容があんなのとはなぁ。流石、白神先生、全く以て想像の付かないアイデアで新兵器を作るのは尊敬する。だから僕も新たにみんながアッと驚く爆弾を作らなければ……。










「……そうだったね。 でも、爆破はどうしてもしなくてはならないんだ。 じゃないと僕が精神的に死んでしまう」


「そう言って何が何でも爆弾を投下する気だとランベル支部長から伺っている」


「なーんだ。つまらないなぁ。 仕方ないねぇ、今回は普通に戦ってあげるよ」


「そうしてくれると助かる……」


 二人は改めて任務の目的、強奪する物を確認した。


「……この資料ってのは?」


 一息挟みヴェルズは話した。


「“ディレイブ計画”で弘太に必要な記録が入っているんだ。 彼用にアレを調整しなきゃいけないからね……」


「ディレイブ計画か……」


「そんなに嫌かい? 確かに弘太には負担がデカいけどその分、性能はバッチリさ」


 それもあるがやはり今、置いてきた弘太の事が心配だ。幸雪が居るがそれでも不安で仕方がない。何かあったら直ぐに自分で何とかしようとして周りを頼ろうとしない……保護者である俺にも頼ってくれて良いのに。


「……別の事のようだね。 まぁ、この計画は最初は彼だけのはずだったけど今は違うからね。 試作型も加えた計6基が完成すれば君も使える。 そして、君が今まで以上に活躍すれば彼を危険から遠ざけられるのでは?」


「弘太はそれを望んでいない、復讐がまだ弘太の中には残っている……」


 どんどん話が暗くなってきたヴェルズは話を切り替えようとした。


「……さて、ディレイブ計画の元をあなたは知ってるかな?」


「……いや」


「なら作戦開始前の時間は少しある。 多少予習しておけば今回の任務の重要性が分かるはずだ」






「記録ナンバー001、ヴィオ・バロックが“変貌”した“レビト・シギンス”についてね……」






 時代は現代から中世の時代へと巻き戻る……。


 遺跡の任務を一応終えたヴィオは街へ戻る前に自宅へと向かってしまっていた。だが……。


「……あれは……!!!」


 自宅の近くに創無がいた。遺跡で見たネズミディーストだ……アリーが危ない!


 ネズミディーストたちを無視して全速力で自宅へとダッシュした。


 そして、しばらくして白く塗られた我が家が見えた。アリーは……それらしき人物が2階の窓からこちらに顔を向けていた。


「ヴィオオオオオオオ!!!!!! 遅いわよ!!! 早く何とかして!」


 無事なようだ……こういう状況でも強気なのは相変わらずだが。


 物凄い跳躍力でまるで法則を無視するかの如くアリーの居る2階の部屋へとピンポイントで着地した。


「……っとと」


「あら~。 床壊れちゃったね。 後でまた直さなきゃね」


「どうせ直すのは俺だろ?」


「よくご存知で。 やってくれたらシチューをいくらでも作ってあげるわよ?」


「……!!!……すぐ決着を付けてくる」


 この部屋から颯爽と退出し、ネズミディーストたちの群れへと殺気を全開で放ちながら次々と倒していく。


「もー、単純なんだから……そろそろ子供欲しいわね」


(……!!!!!)


 さらに興奮したヴィオはネズミディーストをものの数分で全滅させてしまった。


「ふぅ……終わった――――――アリー!!!」


「え?」

 

 すぐ後ろには人の形をしたそれはアリーに剣を振り下ろそうとした。


 だが、そんな事をヴィオが許す筈がなく、マスケット銃の弾丸がその異形の人に直撃し後ろへと倒れ、それと同時に跳躍しアリーの安全を確保する。


「アリー! 怪我はないか!?」


「ヴィオ!……大丈夫よ……ありがとう」


「あ、ああ! ここに居てくれ、あいつを倒してくる!」


 奴と対峙する。剣を持ち黒いローブを持ったそいつはまるで人間の様だった。だがローブの中は真っ暗で何も見えない。そして、能力者と同じ次元エネルギーを放っている。創無だ。タイプは断定できない……いや、覚えはある。確か“ヴィズダム”だったはずだ。創無の中では比較的賢く、学習能力が高いタイプだ。


 ……!!!……熱い、何だこれは……。


 それは遺跡の奥で見つけた変な石だった。中心に埋め込まれている二つのクリスタルが目映く輝いている。それはまるでこの状況に反応して輝いたようだ。


「!!!……」


「ヴィオ……?」


 ヴィオはその石を腰とお腹の間の真ん中に当てる。


 するとその石はヴィオの身体の中に入って行った。


「ヴィ、ヴィオ……!?」


 身体が勝手に動く。彼は無意識に腕を動かした。石が入って行ったお腹の部分に手を抉りこみ引き抜くような動作をする。そこから先ほどの石が出現した。


「………」


 身体中から蒸気が出てくる。ヴィズダムに向かって歩き始める。


 熱い、身体の至る所が熱い。まるで俺自身が変わっていくみたいだ。いつもより力が漲る。


 ヴィズダムに殴り掛かる。ヴィズダムはそれを手で受け止める。


 だがまだ殴り続ける。


 そして、それは起こった。


 殴る度に身体は“変貌”していく。徐々に人の姿ではなくなっていく……。


 ヴィズダムを窓から放り出す。ヴィオも外へと出る。


 その頃には、彼は全く別の自分になっていた。


 黒と茶色で、爪は化物のように鋭く、怪物のような皮膚は並の攻撃を通さない硬さを持っている。腰の石のクリスタルは輝きが薄れているがそれでも失われていない、顔は鷹のような見た目をしておりその大きな目は赤くヴィズダムを見据えている。


 これが後に大きく影響してくる“レビト・シギンス”……西幸 弘太とヴィオ・バロックの運命を決定的に変えた瞬間であった。

この回から本格的に二つの時代がリンクしていきます。そして、こっから趣味全開になるような気がします。趣味が入ってしまうのは仕方ないね。

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