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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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三十四話「意思」

 時間は朝、弘太から代わり雅哉の担当時間だ。


 アイツは今頃学校とやらに向かっている。 しかも黒髪の彼女もいるんだろ? ま、そんな事はどうでも良い。問題は西幸 弘太に対して何故だか知らないが苛立ちしか覚えない。


 何が奴に対して嫌悪を感じる?______そんな疑問を基にひたすら思考しながら街を彷徨う。


(……あれは……)


 市民の中に紛れて怪しい人物を確認した。見た目は普通の男性だが、歩き方、細かい動作、何より他人に対する目つきがまるで違う。丸分かりだ。素人か?


 気配を消し、人々に紛れながら人物の後を追う。


 追った先は、客が少ない古びた喫茶店だった。


 人物との距離は10mぐらいだが……こいつ本当に大丈夫か? こいつが白という可能性はない。 道を進むごとに一々周りを警戒しながら慎重に進んでいる時点で隠し事をしているのは確かだ。


 人物は喫茶店へと入店した。


 目的を探る為に店の目の前で発見されないように待機した。人気のないこの場所なら別段気にすることはない。


 窓から覗くと人物……人物Aと仮称する。人物Aは隅っこに座っている人物Bに接触した。


 壁に耳を当て、聞き耳を立てる。能力者なら少し集中していれば壁越しの会話ぐらいは聞き取れる。


 彼らの会話内容を盗み聞く。


「……誰にも付いて来られていません」


「そうか、だが新人にしてはよくやったと言える」


 やはり素人か。


「で、例の物は?」


 すると、人物AはUSBメモリをポケットから取り出した。


「ディノープのセキュリティは中々硬くて突破するのに時間が掛かりましたが、何とか入手しました」


 完璧な黒だ。こいつが内通者か?


「受け取った。 もう少しで調べた上で戻ってきてくれ」


 もう待つ理由はなかった。


 窓を足で砕き、派手に侵入した。


 背中に背負ってるショルダーバッグから柄が折りたたまれた槍を取り出し、直ぐに展開させる。


「赤いマフラー……最近入った能力者か! こんな街の中で殺せるものなら―――――――」


 槍を喉元へ寸前まで近づける。人物Bには左腕の盾に備えられている銃口を向けていた。


「うるさい。 黙ってろ、周りの被害は知らん。 そちらが情報を漏らすならこちらはいつでも貴様らを殺す」


「……なぁお前。 金ならいくらでも出す。 だから我々クレットに―――――――」


 人物Bの右太ももに弾丸が貫通した。


「うぐっ……」


「そちらの用件は飲まない。 指示に従え。 さもなければ全力を以てまず貴様を血祭りにする」


「分かった! 分かったから! 望みは何だ!?」


「まずはメモリーを渡せ」


 人物Bは素直に渡してきた。


「俺に背を向けろ。 お前もだ」


「は、はい……」


 二人とも雅哉に背を向ける。そして、二人とも背中を蹴られ、壁へ叩き付けられる。


「そこの店主。 くれぐれも何もしないでくれるかな? 分かった?」


 喫茶店のマスターはカウンターの中で身を潜め怯えていた。そして、その言葉に肯定的な返事をした。


「……支部。 応答しろ」


「やぁ。」


 主任が自ら通信してきた。


「……手短に言う。 裏切り者を見つけた。 ついでにもう一人もだ。 クレットにいくつか漏れてる」


「ああ、お疲れ。 まぁ、どうせ大したデータ入ってないし大丈夫だよ」


「……どうする気だ?」


「連れてきて。 直ぐ拷問に掛けると思うから」


「了解」


 その後、両者を腹パンするなり何なりして気絶させ、支部へ運び出した。










「ふむ。 ご苦労様、時間は掛かるだろうけど結果は出るはずだよ」


「現時点で判明していることは?」


「確実に言えることは捨て駒かねぇ」


「捨て駒ですか……」


「そんなに滅ぼしたいかね?」


「はい。 塵残らずには」


 迷いなく彼は言った。


「……その心意気で今後もよろしく頼むよ。 問題だけは起こさないでくれると頼むよ」


「分かりました」


 雅哉が退出したのを確認し、今回の件について整理してみた。


 調査していた内通者の内の一人を発見、所属組織はクレット、テロリストと変わりない存在だ。そして、それを回収する人間と接触、人が寄り付かない場所を我々の組織ディノープが監視しているのは内通者を通して分かっている上で人気の少ない街中のカフェで落ち合う。が、賀霧 雅哉に目を付けられ正体を暴かれ現在、拷問に掛けられていると……。


 あの二人が吐くか吐かないかでもあるがその情報次第で近いうちにクレットの壊滅を検討しなければならない……。


 その時は、弘太を含めた5人を結集する必要があるかもしれない。そう、現在、この世界において能力者の中でも最強の5人を。


 そうするにも問題はある。


 Ⅳである弘太は問題ない。ⅡのシリスとⅤのファイも問題ない。


 他に何が問題あるかと言えばⅢとⅠだ。


 この二人は扱いをもう少し改めるべきだ。Ⅲは呼べば来るが組織の資金を勝手に使い勝手に兵器を試作しては被害を特に考えずに使用する。Ⅰに関しては最悪だ。その場の感情で物事を判断する。敵にアイスクリームを要求した時は耳を疑ったぞ。


 また何らかの形でこの5人を集めると思うと気が滅入る。好き勝手にやるのは私だけで十分なのだが……ハァ、今のうちに「ディレイブ計画」を進めておかなければ……。











「………」


「………」


 お互いがお互いに威圧感しか放っていない。


「……もう時間か」


「ああ……もう行く」


「一つ聞きたい」


「……何だ?」


「今まで何を見てきた? 何を見て、何を感じ、何をしてきた?」


 少し意外な質問だった。


「……大量の死体と恐怖と憎悪、人殺しだ」


 嫌になるほど体験してきた。殺し殺された死体に恐怖し、殺した相手を憎んだ。そして、自分に力が備わり気付けば自分がみんなを殺していた。


 みんなの幸せを奪い、ここまで来た。テロリストどもを殺しても罪は増え続け、助からない一般人を殺しては押し殺してきた筈の感情から罪悪感が舞い込んでくる。

 

 思えばこの15年という時間の中の大半が血と死の臭いしか嗅いでこなかった。初任務は動物の駆除だったな、犬や猫の断末魔は今でも忘れられない。


 いくら実験動物の末路とはいえ気が引けた。だがそれは最初だけだった。


 エミルとユーリ……大切な人を殺されたあの日から復讐の誓いを立てた。だから、僕は自分を地獄へと捨てた。


 だが今は別の目的も出来てしまっている。


 両親と弟の行方。死んだと仮定した方が良かったが、僕自身はまだ淡く小さい希望を残っていた。どこかで僕の事を待っていてきっと迎え入れてくれる。そんな幻想を抱いていた。


 そして、もう一つ。「幸雪 零華」、僕にとって今大事な人となっている。この人だけは失いたくない。命を懸けて守り抜きたい人だ。個人的にこの感情は恋と判断している。自分は無知なので他の感情の可能性もあるが。


 だが自分には善悪関係なく命を絶ってきたことに対しての贖罪をしなくてはならない。彼女を守るという行為を贖罪にしてしまってはそれではただの言い訳だ。


 だから、今、僕は悩み考え続けているかもしれない。


「……この後もこれを繰り返すだけだ」


「そうか……ま、様子見かな。 戦闘で邪魔だけはしてくれるなよ?」


「そちらもだ」


「お互い不干渉だ」


 だがそれは少し先の出来事で崩れ去ってしまう。











「……ふぅ、着いたか」


 砂漠に着いた柳は改めて作戦を確認した。


 とりあえず、まずはテロリストを狩る。この区域には「Ⅲ」がいる。今回はⅢとの共同作戦となった。


 と、着いたみたいだ。


「ここか。 で、貴方が相原 柳で?」


「ああ。 よろしく頼む、“ヴェルズ・カーター”」


「うん。 派手に敵を爆散させよう。 あ、使用武器は爆発するタイプならどれでも良いよ」


 始まる前から不安になってきた柳であった。

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