二十九話「華空」
「試験終了……ふむ。丁度、実戦相手も出現してくれたみたいだし急行してくれたまえ……01と02だが……名称は「マリヤ」と「アモリ」で良いかな?
「……構いません、それで結構です」
「ふむ。 なら直ぐに向かいたまえ」
「……了解しました。 では今直ぐに」
果たしてこの名に意味はあるのだろうか?と少し思うも直ぐに切り替え、支部から発つ前に応接室へ入った。
「弘太……君、どうしたの? もう終わったの?」
「あ、ああ。 創無が現れた。 今向かうから少し待っていてほしい」
と言ったが、ここで零華は弘太の知らない情報を言い出した。
「あ、その事か! 実は職員さんにこんな物もらったの」
ポケットから端末と手のサイズより少し大きい小型の自律型偵察機を取り出した。
「これは……」
「弘太君のサポートに必要だって渡されたの。 確か、データ収集の効率が良くなるとか言ってたよ」
……別に構わないが事前に言ってくれても良かったのではないか? あの主任はこういう時に限って前情報なしに物事を動かそうとする。自分の立場を分かってやっているのか……分かってやっているだろう。白神主任がそういう男だって事は昔からの事だ。
それは、さておき。この二つが渡されたと言う事はつまりは一緒に行けと言う事だろう……。
「……これからは戦場に赴く事になる。 本当に大丈夫か?」
「う、うん! だからここに居るんだし!」
……今更だったろうか。
「……あくまでデータを取るだけだ。 そこまで創無と距離が近いわけではないから問題はない。 もし問題が発生すれば俺が完璧に対処する。 異論はあるか?」
「ううん。 異論はない!」
「……それじゃあ、行くぞ」
「はい! 分かりました!」
軍人がよくやる敬礼っぽいポーズを取り、少し格好付けているがこの組織は別に軍隊ではないぞ。
……突っ込みを言っても良かったが時間が惜しいので、直ぐに向かった。
「タイプは……サドゥシング?みたいだよ。 場所は、解体前のビルの屋上みたいよ」
偵察機からの映像でサドゥシングタイプは大体がデカいので特定にそう時間は掛からなかった。
「分かった。 零華はそのまま監視を継続、戦闘が始まっても変更はなし。 サドゥシングに変化があったら言ってくれ」
「……こういう時は、了解で良いのかな?」
「……それで良いよ」
「じゃあ、了解しました!」
調子が狂う。いつもは一人、協力する時でも全員がプロなので予定が崩れる事無く遂行できた……今回から色々と注意しながら任務をやらなければならないと弘太は悟りながら向かう。
そうこう考えているうちに目的地へ着き、改めて状況を確認する。
タイプはサドゥシング。四足歩行の甲羅を持つ亀のような姿で、屋上をゆっくり徘徊していた。
弘太は02を改め、アモリから2mに及ぶハンマーを取り出し、奇襲を掛けようとしたが……。
「あれは……」
「……ん? 何か人影が飛んで来てる……」
首に巻かれた赤いマフラー、前腕と同等サイズの盾、そして刃部分が黒く染まっている槍……アレが主任の言っていた能力者だろうか?
そして、その能力者はサドゥシングの目の前に着地した。
「……ハァ」
作戦を奇襲から新たな能力者との連携に切り替える事にした。このまま奇襲するのも良かったが、あの能力者との連絡が取れない為、余計な事態を招く可能性を考慮して変更した。
「………」
能力者は無言のまま、盾に備えられている銃口から弾を連射した。
だが、サドゥシングに当たるも傷すら付かなかった。
「……!!!」
サドゥシングはその場で足をジタバタ踏み始め、ビルは揺れる。
「………」
能力者は無言の状態を依然に保っていた。そして、弾丸をこちらへ向けて撃ち付けた。
「……!」
顔の隣を通過する。この男、分かっててやっている……何故だか知らんが気に食わない。
サドゥシングの真上までジャンプ、ハンマーにギリギリまでエネルギーを溜め、甲羅に叩き付ける。
「……!?!」
衝撃に驚いているようだが、傷一つ付いていなかった……内部を直接攻撃する必要がありそうだ。
アモリからハンマーに代わり、D-02を取り出した。
「ファイア」
『SHOOT』
電子音声が流れ、D-02は起動した。
「………」
こちらも無言でサドゥシングに銃口を向け、1発撃ってみる。
光線のような一撃がサドゥシングに襲い掛かる。
直撃を受けた甲羅にはヒビが入っていた。
「?!!?!!!?」
先ほどまで銃は効いていなかった筈なのに、突然効くどころか一瞬で殺せるであろう兵器を用いられ、サドゥシングは混乱していた。
「……ハァ」
能力者は少し弘太の戦闘を観察して、もう見飽きたかのように息を付き、再びこの戦いに乗り込む。
槍で甲羅のヒビの部分にピンポイントで1ミリも狂うことなく、この能力者は恐るべき速度で刺した。
そして、さらにそこから奥へ刺し込み、抉る。
それに苦しみを受けたサドゥシングは足と頭を甲羅の中へ引っ込める。そして、甲羅の引っ込めた所からエネルギーを放出、そのまま回転し始めた。
そのまま屋上を高速で移動する。弘太と能力者は余裕で避け、鋼鉄の柵にぶつかり、跳ねるようにまたこちらへ向かいそれをまた避けては柵に当たり、ピンボールのようにそれを繰り返す。
「……フィニッシュ」
『METEOR』
D-02のラインが青く発光し、エネルギーを溜め始める。
「………」
能力者は腰に身に着けていた「ブーメラン」を取り出し、サドゥシングへ向けて投げ付けた。すると、ブーメランに穴が開いており、そこから数多もの「爆弾」が降り注ぎ、サドゥシングを襲う。
「……!?」
通常ではありえない攻撃にサドゥシングは回転を止めてしまい、隙を作ってしまった。
「……!!!」
その隙で、能力者は先ほど作ったヒビに再び槍で抉りこみ、怪力で上へと持ち上げた。
そして、弘太はD-02のトリガーを引き、能力者は槍の柄に備えられているトリガーを引いた。
D-02から青く目映い流星の軌道が直撃し、槍に仕込まれている銃口から火花が散り、灼熱の火球が直接サドゥシングへ襲い掛かり、あまりのオーバーキルに残骸も残さずに散ってしまった。
「………」
「………」
しばらく、静寂だけが居座っていたが能力者が口を開くことによってここに嫌な空気が漂う。
「……俺の名は、賀霧 雅哉、今日からここに配属だ……戦闘能力はまぁまぁだな、お前」
……何だこいつ。と思いそうなほどに弘太は少しイラッときていた。
「……西幸 弘太……ナンバーⅣだ」
「へぇ、アンタが……ま、よろしく」
「……何が起きたの?」
この状況の中、零華だけが置いてけぼりだった。弘太が全てを終わらせると思いきや、突然、見知らぬ男が現れ、この状況を収めた……彼女にはこれしか理解できなかった。
「………」
「………」
また、静寂がこの場を支配する。
が、ピリピリとした空気感が漂っているのは間違いなかった……果たしてこの先、この男と一緒に戦うにしても連携を合わせられる気がしなかった。
「……戦闘は終了している。 支部へ来い。 詳しい話はこれからだ」
「はいはい」と言いたそうな顔で雅哉は弘太に付いて行く。
「もしもし、弘太君?」
弘太からの電話に零華は出た。
「……先に戻っててくれ。 その後にまた会おう」
「う、うん。 分かった。 またね」と電話を切り、偵察機を回収し、零華も支部へ戻って行く。
……この男との出会いが彼の運命を大きく変える事になる、それは決して良い方向ではない。だが、彼はその道を進まなければならなかった……。
雅哉を出したくてずっとムズムズしてましたw
1章のラストまで大雑把でありますが、本筋の話は出来ていて、その中で早く書きたいシナリオも幾つかありますねぇ。
まだまだ新キャラは出る予定です。




