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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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二十三話「弁明」

「弘太君……」


 あの後、隊員がこの基地を制圧、救護班も到着し民間人を保護した。


 検査をした後、事情聴取をしようとしたがメンタル面で不安定なので警護という名目の監視付きで5人の生存者たちを一時的に帰宅させることにした。


 幸雪 零華は西幸 弘太が監視することになった。何より零華本人が弘太から離れようとしなかったからだ。


 彼女の自宅へ行くと。


「零華!!!」


 母親は凄く心配していた。


「大丈夫?! 不審者に追いかけられたって聞かされたけど?」


「……うん 。弘太君が助けてくれた。」


「西幸君。 本当にありがとうございます! 何とお礼をしていいか……」


「いえ。当然のことですから。」


「でも本当に怪我がなくてよかったわ……だって刃物振り回してたんでしょう?」


「……うん。」


「複数名で実行された計画的なモノらしいですが、警察が収めてくれました。」


「それでもやっぱり心配ねぇ。 西幸君は親御さんに連絡したの? もう日も暮れてるし心配してると思うわよ?」


「……家族はいないので問題ありません。」


「あら。お出かけ中なの?」


「……いえ 。小さい頃に亡くなってるので。」


「……いけない事を言っちゃったわね。 ごめんね。」


「大丈夫です。 物心つく前の事なのであまり覚えてませんし。」


「それでも悪い事言っちゃったわねぇ。 今度何かご馳走するわよ。」


「……機会があれば是非。」


(弘太の両親、いないんだ……ずっと一人ってこと……?)


「では、これで」


「………」


 零華は弘太の腕に抱き着いたまま一向に離そうとしない。


「こら零華。西幸君、帰るみたいよ? 離れなさい。」


「……ヤダ。」


「……どうして?」


「凄く怖かった あんなのもう体験したくない 今は弘太君と一緒にしたい!」


「でもねぇ……」


「だって……弘太君、少しの間だけで良いから一緒じゃ……ダメ?」


「ハァ……西幸君はどうなの?」


「私は別に構いませんが……お邪魔のようなら直ぐに帰ります。」


「……ダメ。」


 やはりあんな目に遭ってしまったのか、彼女は弘太と一緒に居たがっている。実際、何かあった時に必ずと言えるほど守ってくれるだろう。


「零華ねぇ……保護者はいらっしゃるのでしょう?」


「……はい」


「ならまずは電話して安心させてあげないと、もう夜10時だし。」


「わかりました。では少し……」


 少し離れ無線機で柳を呼び出す。


「……どうした?」


「少し困った事態になった……」


 事の内容を話す。


「……今日は俺がやっておく。 相手が良いならそうしてこい」


「わかった……」


「そんな事、ないだろうし体験しといてもいいんじゃないか?」


「……それにしても非常識だと感じるが……」


「……まぁそうかもしれないがいきなり日常から引き剥がされて生死を分けた環境に放り込まれば誰でも精神的に不安定になるし守ってくれる人がいるなら尚更じゃないか?」


「………」


 弘太は自分なりに彼女を理解しようとした。


「……それに報告で読んだがクラスメイトじゃないか。仲良いのか?」


「……よく突っかかってくる。」


「……友達を大事にしろよな、特にお前は」


(友達……)


 その言葉に弘太は少し惹かれた。


「聞いてるか?」


「……ああ」


「とりあえず行ってこい。 たまには話したいことを友達に話しても良いと思うぞ?」


「……わかった。」


「……最後に一ついいか?」


「……何だ?」


「……俺の家族についてだ」


 少しの沈黙を得て、柳は返事を返す。


「……それがどうした?」


「柳は何か知ってるか?」


「……さあな」


 柳はさも知らない風な口調で言った。


「……そうか」


(……この調子だと知ってようが知らなかろうが話す気はないな。)


「……そろそろ切る」


「わかった。 俺も任務に戻る。 それじゃあな」


「………」


 零華の元へ弘太は戻った。


(……弘太にはもう少し普通に暮らしてほしかったんだけどなぁ……)





「弘太君。 少し遅いよ……」


 そう言い、袖口を掴んで、弘太の横を確保する。


「……少し近すぎないか?」


「……わかった」


 袖口から手を放し離れる。少し寂しそうだ。


「どうだったの?」


「……大丈夫だ。」


「よし……!」


「元気そうだな……」


「そ、それは弘太君がいるから……」


 モジモジしながら彼女は言った。


「………」


「で、もう遅いし、泊まることになっちゃうけどホントに良いの?」


「はい。」


「まぁ、流石に零華と寝かす訳にはいかないし別室を用意するわね」


「……ありがとうございます。」


 母親は二階へ上がり、準備を始めた。


(……にしても警戒心が無さすぎるな……年頃の娘が男を連れてきて家に泊める……もう少し年齢が高ければ別だがこれはおかしい……これが普通なのか?……いや違うか……)


「弘太君! 一緒に話そ!」


「……あ、ああ」


 手を引き連れられ、リビングへ連れてかれる。


「何か飲む?」


「……水でいい」


「……わかったよ」


 テーブルに水の入ったコップを二つ置き、二人は席に座った。


「……先に言っておく。 口外したらタダじゃ済まない、だから守秘義務は守ってくれ。」


「わかってるよ!……私は弘太君の力になりたい。」


「そうしてくれると助かる。 あと、落ち着いたら日を改めて、支部へ向かい色々としなければいけない。 その時、君は必ず来なければならない、今日の件も含めてやる事はたくさんある」


「……わかったよ。あと、一つ聞いていい?」


「……何だ?」


「……あの子は助からなかったの?」


 あの子……それはあの基地で実験されてしまい化物となってしまった少年のことだった。


「……無理だった。 あのままじゃ全員殺されていた。」


「……弘太君は怪物以外にもああいうのも倒してきたの?」


「……そうなる」


「………」


 零華は黙り込んだ。


(……たくさんの人を殺してきたってことだよね……? でもそれは悪い人でその人たちを止めなかったら関係ない人が次々と死んでしまう……)


 人を殺すという行為に拒否反応を示しながらも、そうしなければ生きられない二つに彼女は困惑した。


「……まだ大人じゃないのにあんな事を繰り返して、苦しくないの?」


「………」


 今度は弘太が黙り込んだ。


 だが。


「……話はここまでだ。」


 階段を降りて来る音だ。零華の母親が部屋の準備を終えたのだ。


「準備できたわよ……二人とも、お風呂と食事まだよね? 早く済ませちゃいましょうか。」


「……はい。」


「うん……」


(……確か能力者だったっけ?……これも何かの縁なのかねぇ。)


 身体を洗い、食事を取ってその日はそのまま眠りについた。








「……ふぇ~」


 顔を洗いに洗面所に向かう。


「弘太ぁ、おはよう~」


 眠たそうに挨拶をした。


「……ああ、おはよう」


 弘太は既に着替えを済ませていた。


「顔洗って来るねぇ」


「わかった」


 洗面所で水に顔をつける。


(……朝から家で家族以外の人といるってなんか新鮮だなぁ。)


 ふわっと考えながらリビングへ向かう。


「零華、もう朝食できてるわよ」


「は~い」


 豆腐とわかめの味噌汁、きゅうりの浅漬け、焼き鮭、ご飯といった和食であった。


「西幸君もどうぞ召し上がってね」


「……はい、ありがとうございます」


「いいのよ、ほら、冷めないうちに召し上がっちゃって」


「はい。 いただきます」


「いただきます!」


 二人は朝食を取り、零華は登校の準備を始める。


「一旦、帰るの?」


「ああ、今日の分の教科書を取りに行く」


「わかった! じゃあその時は外で待ってるね!」


「……先に行ってていい」


「時間あるし問題ない!」


「………」


 そして、玄関まで来た。


「………」


 弘太の手をつないだ。


 ………やはり外への警戒心はまだ解けてないみたいだ。


「……行ってきます」


「……ありがとうございました」


「どういたしまして。 二人とも、気を付けて行くんだよ!」


「はい。」


「……うん。」


 二人は外へ出た。このまま弘太の自宅へ向かう。


(……やっぱりただのカップルに見えるんだけどなぁ。 まぁ、能力者だと少し厳しそうだけど……西幸君! 娘の事は頼んだ!)


(……うちの人、ぐっすり寝てて全く気付いてなかったなぁ)








 手をつないだまま歩く二人。


「………」


「………」


 何事もなく自宅へ到着した。


「……やっぱり一緒に行く」


 手をさらにぎゅっと握った。


「……わかった」


 いざ外へ出るとなるとやはりまだ恐怖心は薄れていない。精神のケアをする必要もあるようだ。


 すると、道路から猛スピードで走っている人がこちらに来る。接触しそうになった。


「っとと、すまない!」


 恐らく我々と近い年齢の男は何か切羽詰まった顔で走り去っていった。


「………」


 考える必要もなく、教科書を取り、学校へ向かう。


 その途中。


「あ、あなたは!?」


 一人の少女が話しかけてきた。昨日、保護された者の一人だった。


「せ、先日はありがとうござました!」


「……ああ」


「あ、私は穂乃﨑(ほのさき)です! 穂乃﨑 深玲(ほのさき みれい)です!」


 彼女は元気そうに言った。


「その制服は...私より年上……ってことは先輩ってことですか!?」


「……ああ、そうなる」


「……一応、名乗っておく。 俺は西幸 弘太。 彼女は幸雪 零華だ」


「……恋人ですか?」


「違う。 手をつないでいるのは先日の件が原因だ」


「あー……にしても恋人でもないのにずっと手をつないでるのはどうなんですか?」


「……彼女がこういう目に遭うのは三度目だ」


「なるほど……なら仕方ないかもですね」


「……学校へ行く」


「そうだった! 私も中学校へ行かなきゃ! 西幸先輩! また後で会いましょう!」


「……ああ」


(……行きたい高校決めた!)


 彼女が来ていたのはこの近くの中学校の制服であった。


(……地元の中学生か)







 学校を終えた。担任の吉木田 葵は不審者の出没により気を付けて帰るようにとクラス全員に伝えた。刃物を持っているとの情報を流しておけば流石に不用心でにはならないだろう。


 ……にしてもここのところ、何か変だ。主に胸が苦しい。こんな事は今までなかった。これが感情が原因だという事はわかっている。だが何の感情かはわからない。後で白神主任か柳あたりに調べてもらう事にした。


「……支部へ向かうぞ」


「……うん。」


 彼女は学校では授業では流石に冷静を装っていたが、それ以外は弘太にべったりだった。友達はいないのだろうか?


(……このままじゃダメだよね……でも怖い)


 そのまま支部へ着いてしまった。


「……失礼します」


「どうぞ。 入りたまえ」


 支部長室へ入る。


「……先日の任務はご苦労。 被害はゼロとはいかなかったがそれでも少なく済んだ」


「はい。 幸雪 零華も連れて来ました」


「君が幸雪君か……まぁ、座りたまえ」


「は、はい……」


「西幸君、まずは改めて報告を」


「ハッ。 敵対組織「クレット」は民間人12名を誘拐、人体実験を行ったものの、成功せず我々に制圧されました。 本部についてめぼしい情報はありませんでした。 そして、未だに宗教を信仰していることが彼らの活力源と思われます。」


「シュウキョウ?」


「宗教については後で説明する。 続きを」


「……生存者は5名。 人体実験の目的はやはり、我々、能力者への対抗策と思われます」


「ふむ。 やはり能力者の詳細は漏れてないか。 密告者は下の人間の可能性が高いな……」


「……この件は私が後で処理する。 さて、幸雪君、質問はたくさんあると思うがまず何が聞きたい?」


「……シュウキョウって何ですか?」


「ふむ。 宗教というのは、まず神と呼ばれる存在から始まる」


「カミ?」


「ああ、神は絶対的な存在。要は万能で何でもできる存在と思った方が早い。 人々は心の支え、信じる物が必要だったんだ。 そして人々はいつしか神を信仰し、宗教に入信する者が昔はほとんどだった。」


「昔ですか...」


「そんな中、現れたのは報告通りなら君が二度遭遇した化物、「創無」だ」


「創無……」


「彼らは水や鏡などの映し出すモノにしか存在を確認できなかった。 当時の人々は悪魔と思い込みたかったが、創無は全身真っ黒、姿はこの世界の生物や物質で出来ているような見た目をしていたし、何より天使や悪魔に見えなかったからね」


「だからあの時、普通に見えなかったんだ……」


「話を続けるよ。 そんな時、現れたのは能力者、その例が西幸君だね。 なぜかはわからないが創無の中から裏切り者が一個体だけ現われ、全人類に能力を与えようとしたんだ」


「……? できなかったんですか?」


「ああ、全ての人類がその能力に適応できるわけではなかった。 だから適応できるものだけ能力を水蒸気のような物質にし、全世界にばら撒いたんだ」


「……すいません。 現代の兵器じゃ無理なんですか?」


「……現代どころか恐らく科学がどれだけ進歩しようが不可能だろう。 彼らは文字通り「次元」が違うんだ。 人類が知っているどの次元にも属さない、まるで「無」であるかのように。 創無は特殊な空間で包まれているんだ」


「空間?」


「ああ、言わば彼らは「世界」というバリアで包まれているんだ。」


「世界……?」


「ふむ、例えばコップに入った水に粉を入れる。 通常は溶けてしまうが彼らは溶けずにコップの底へ行ってしまう。 我々はこの世界に溶け込んでいるが、彼らはこの世界を拒んだ状態なんだ。 この世界に出現した創無は自分の周りに自分たちの世界が地続きに展開している。  だけど干渉は彼等、創無の一方的になってしまっている。 すまない、説明は苦手なんだ。 いつもは部下に任せてるからね……」


「……いえ、感覚的にですが、わかりました」


「で、こちらに味方した創無。 「ラヴァ」が適応できる人類を能力者、即ち、創無と同じ存在にしたんだ」


零「同じ存在……」


 弘太を眺める。


「同じ存在になったことで彼等と同じ次元の者になった。 つまり、世界を共有できるようになったんだ。 だから能力者だけ攻撃が通用するんだ。 そして、この戦いのあまりの激しさに信仰者は減ってしまった。 それどころの事態ではなくなったからね。 創無と戦うには世界の中心を宗教から能力者にする必要があった。 まぁ、そのおかげで今も生きていけているのはその時の人類の判断が正しかったと言える。」


「……ありがとうございました。 疑問だったことが大分わかりました。 でも何故私に教えてくれたんですか?」


「……では言おう。 我々の仕事に入ってくれ。」


「……!?」


 突然の事に彼女は驚いた。

時間があったので長めに書きました。

割と重要な設定を伏せていた気がします。

1章の所々とラストの構想は出来てるけど、その過程をどう生かすか迷う。

そして年内に1章を完結できるか不安。

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