二十二話「救助」
「……ってて……!? ここどこ……?」
目を覚ました彼女は目の前の状況を飲み込めずにいた。
(落ち着かないと……!……ハァダメだ!どうしていいかわからない……)
すると彼女が捕まっている実験場の扉が開く。
「!?」
「入れ」
明らかに銃を持った男に零華は警戒した。その男だけではなく同じ格好をした男たちを見て零華は軍か何かの人かと思った。
当たらずも遠からずな推測だが、この後の出来事でこの推測を改めなければならなかった。
男たちは人をこの部屋に入れた、大体11人ぐらいだろうか。性別年齢はバラバラで男の子や女の子、中学生、私以外の高校生もいる、男性やお婆ちゃんもいた。
武装した男の集団の一人が銃を上に向け、発砲した。
「キャアアアアアアア!!!」
耳が裂けそうなぐらい叫んだ。
「うるせえぞ!! 今度、騒いだらお前から殺すぞ!!」
「!?」
彼女は恐怖した。そして彼らがテロリストの類であることを理解した。
(何でこんなことになってるの……)
「……お前も騒ぎすぎだ、出るぞ」
「……わかったよ。」
兵士は実験場を出る、そして扉は自動でロックされた。
(怖い……誰か助けて……助けて、弘太君……)
恐怖を感じつつも、一人の男の助けを期待する彼女はしばらくうずくまった。
「お待ちしてました、西幸隊長。」
「……事態はどうなっている?」
「ハッ、完全には把握できてはおりませんが攫われた民間人全員の生存は確認されています。組織『クレット』の目的は不明、この基地に潜伏している構成員は凡そ80人、機動隊員が30人、研究者が15人、警備兵25人、残りの10人が事後処理班だと思われます。」
「……最初に私が行く、指示が来たらその後5人が突入、周辺を制圧した後に残りの15人が侵入、救出対象者は私が先行して安全を確保する。各自準備を。また、各員の作戦中のコードネームはAからTまでのアルファベットで区別する。」
「了解しました!」
隊員全員が準備に入る。と言っても武装は既に終えており、後はメンバーの振り割りのみだ。
………
「準備完了しました!」
「わかった、各員待機、連絡があり次第指示通りに動け。」
「ハッ!」
「………」
弘太は透明化を使用し、基地の入口まで接近する。
耳を研ぎ澄まし、中を探る。
(入口ゲート付近に警備兵2人、監視カメラあり……こうするか。)
02で中への侵入に成功、透明化で監視カメラは機能してないも同然なので人目を気にせず監視室を探す。
しばらく基地内を忍び歩いてそれらしき部屋を発見する。
(……とりあえず入るか。)
再び02を使用し、部屋の中へ、中はたくさんのモニターが並んでおり、全ての監視カメラの映像を見ることができ、セキュリティもここで制御を行っているようだ。やはりここが監視室で間違いないようだ。同時に制御室でもあるようだ。
モニターを見ているのは二人だけのようだ。彼らを殺して監視体制を壊し、弘太が救助者の位置を特定でき次第に突入させる。
(……外に三名……)
武装した兵士が近くまで来ていた。ただの徘徊だろうが。
「異常なし。任務を続ける。」
男は定期報告をした。
「……もう少しで始まりますね。人体実験。」
(………)
「ああ、これが成功すればあの化物共と能力者を始末できる!」
「私語を慎め。我々のこの任務も立派な神に対する奉仕の証だぞ。」
「ハッ!申し訳ありません!」
兵士三人は再び基地内を徘徊し始めた。
(……かみ?……ああ、神か。そういえばこの組織、まだ宗教を信仰しているんだったか。)
そう考えていたが直ぐに止め、次の行動に移る。
まず監視をしている目の前の二人をナイフで殺害した。
そして、各監視カメラを操作、兵士の行動を探りながら、救助者を探す。
(……これか)
モニターには研究者と一般的な服を民間人と見られる者を12名を確認できた。
そこには幸雪 零華の姿も確認できた。
「………」
さらに探したが他に見られないことからこの実験室だけに民間人は集中してるようだ。
(……今すぐ急ぐ必要があるな……)
実験室では既に少年が実験の餌食になっていた。これ以上、犠牲者を出すわけにもいかない。
「各員、全体図を転送する。前述通り、AからEが突入、敵を翻弄しろ。敵を分担したら、残りが突入だ。わかったか?」
「了解!」
………
「開始だ。」
入口ゲートを開け、すべての監視カメラの機能を停止した。
「!?」
突然、開いたゲートに警備兵は驚愕する。
「どういう事だ!?」
「まだここを開ける連絡は来てな―――――」
「!? クソどこから―――――」
「警護していた二人の射殺を確認、突入する。」
5人は基地へ突入した、A、BとC、D、Eの二グループに分かれてどんどん基地内を制圧していく。
「敵、17人ほど確認、そちらは?」
「……24人だ。 頃合いだ、敵を惹きつけろ。」
「了解。」
兵士の頭上に一発撃ち込み、牽制し、応戦しつつもどんどんこちらに惹きつけていく。
「……突入しろ。」
その言葉と同時に残りの15人も一斉に基地内へ侵入した。
「侵入者を追い詰めた、そちらも殺さず生け捕りにしろ、情報を吐かせる。」
「了解。直ちに……?! 各員!応戦しろ!」
「何があった!?……こちらも敵を迎撃しろ!」
二つの敵集団は追い詰めたはずだが、その後ろで遅れて突入した部隊によって双方共に挟み込まれたのだ。
(……このまま任せればいずれ殲滅できるな)
位置を特定した弘太は02で研究室へ侵入する。
「順調だな、このまま行けば――――!?、何事だ!?!」
彼等の目の前に現れたその男は空間を割り、そこから大鎌を引き出す。
「クソッ!データの転送だけでも―――――」
そんな事をさせるはずもなく、次々と大鎌で首を刈り取っていく。
そして、全ての研究員を殺し終えた弘太はすぐさまデータのコピーを開始、その間、実験室へ乗り込む。
「嘘……なんなのアレ……」
彼女は目の前の現実を理解したくなかった。
先ほどまで怯えていた少年は連れられ、戻って来たと思ったら異形の化物へ変貌し、この部屋にいる人たちを喰い始めた。
「み、みんな! 早く俺の後ろへ!!」
男は今この場を乗り切るには自身が身を張らないと判断し、みんなを守ろうとする。
「う、うわああああ!!!!」
先ほどまで少年だった化物に困惑しながらも、即決し化物にタックルする。
化物は転倒するが……。
「ウッ……!!」
化物の爪が心臓を貫通していた。
「ヒッ……」
「ヤダよこんなの……誰か助けて!!!」
中学生ぐらいの女生徒が叫ぶ。
化物は聞く耳を持たぬかのように近づく。
(……イヤだ、もうイヤだ!!!)
零華たちに毒牙にかかろうとする。
「――――――」
化物がこちらに来ることはなかった。
代わりにそこに居たのは大鎌で化物を惨殺し、鮮血を浴びた西幸弘太であった。
「弘太……?」
弘太は零華たちに近付く。
「あ、あなたは……?」
女生徒は弘太に問いかける。
「……救助に来ました、あなた方は何もされてませんか?」
「う、うん……今いる人たち、何もされてない。」
「……なら問題はない。直ぐに救護班も来る。」
「本当……?」
「ああ、事実だ。」
「……弘太ぁ……!!!」
彼女は泣きながら弘太に思いっきり抱き着いた。血は付いているが今はそんな事は些細な事であった。
「怖かった、ホントに怖かった……ありがとう。」
「……これも仕事だ。来るのは当たり前だ。」
「うん。だからね、ありがとう……」
彼女は救護班が来るまでずっとこの状態であった。




