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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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二十話「審判」

 断末魔が聞こえる。ここは戦場、何人ものテロリストが一人の青年に殺害される。


 全てのテロリストが青年の放つ幾つもの「鎖」に殺された。


「………」


「ハァ……ハァ……クソッ! なんだあれは!?」


 同志が次々と一瞬で殺される。その状態を理解するのに時間がかかったが理解していると思われる今は必死に逃げている。


(何故何もない空が割れて鎖が出るんだ!? いくら特殊能力を持っていると言っても非常識だぞ?!)


 テロリストはさらに青年から距離を取る。青年はテロリストを追うが、走る気配はなく、ゆっくりと歩いている。


 その間にも他の同志は殺される。鎖の先に付いた刃、鉄球に成す術もなく。


(このままじゃ埒が明かない……一か八か仕掛けるか……?)


 その手段を実行する前に彼は終了してしまったが。


「!?……嘘だろ……――――――」


 彼はそのまま絶命してしまった。地面から深々と胸に突き刺さった鎖、それが彼の命を奪ったのだ。


「……ハァ」


 青年はため息をつく。


「……プロテ、邪魔者は一掃した。この先か?」


「はい、この先に目標の創無が潜伏しています。シリス様」


 テロリストを殲滅した能力者「シリス・グラット」とその執事の老人である「プロテ・クディヤール」は弘太たちとファイと同じく高エネルギーが検知された場所の区域担当でその任務を遂行する途中、進路上に敵対組織の本部があり、障害となるため攻撃を開始し、ものの七分で壊滅させた。


「わかった、撃破次第直ぐに報告する」


「では、私はこれで、処理班はそちらに向かわせています。シリス様が任務を終える頃には到着する手筈です」


「ああ、頼む」


 通信を終了し、組織跡地を後にし、目的地へ向かう。


(……反応は未だ変わらず、増える気配もないが……警戒はしておくか)


 ゆっくりと歩を進める。


 右手に鞘から剣を引き抜く。この剣はエストックと呼ばれる種類の剣であった。


 左腰にもエストックがあるが、どちらも彼は最初は使わない。ほとんどを鎖で終わらせてしまうからだ。


「………」


 目的地へ近づいていくにつれ、エネルギーの濃さも高まっていく。


(……見当たらないな)


 いるのは「蝙蝠こうもり」くらいだ……。


「………」


 そのまま過ぎようとする。過ぎ終わろうとした瞬間。


 シリスは綺麗に躱す。案の定、群れていた蝙蝠たちは攻めかかってきた。


「……ふぅ」


 エストックを使う素振りは見せない。


 代わりに空を割って出る鎖が蝙蝠を仕留める。


(エネルギー反応はなかったが……創無ではないのか?)


 何にせよ障害となるなら蹴散らすまでだ。


(……ポイントはここだが……やはりいないな、いや)


「“空”か」


 鎖が怪人の爪から彼を守る。


「………」


(蝙蝠型のダバーソン……見た所大きな変化はないが)


 人型ではあるが他の創無と違い複数の生物が融合したような姿ではなく純粋な蝙蝠のみで構成されていた。


 だが、他よりも強いのは確かだ。


 蝙蝠は自身の爪を突然剥ぎ始めた。


「………」


 剥がれた爪は動き始め一つになり、古めかしい奇形な剣となる。剥がれた爪の指は急激なスピードで爪が生え始めていた。


 奇形な剣を持ったダバーソンはこちらへ攻めに入る。


 シリスは動かない。


 ダバーソンは攻撃を通そうとするが鎖に阻まれる。


 ここからは鎖と剣の攻防になっていった。


 ダバーソンは剣で鎖の連撃を防ぎつつ、襲い来る鉄球を避ける。


 対してシリスは自身は何をするわけでもなく鎖に全部を任せていた。


 埒の明かない攻防に痺れを切らしたのかダバーソンは生えた爪を肥大させ巨大な爪と化す。


 その巨大な爪で鎖を払い除け、シリスへ近づく。


 だが、さらに鎖を出現させ、行く手を阻む。


「……!!」


 翼を展開し、空へ羽ばたく。


 速度は音速に達しており、そのスピードを生かし攪乱かくらんしながら次々と鎖を切り裂いていく。


 シリスは動じることなくその場から動こうとしない。


 鎖をほとんど壊滅させ剣の切っ先が届こうとするが。


「……!」


 右手に持ったエストックで防ぐ、やっと戦う気のようだ。


 ダバーソンの剣を離した瞬間、腹部に高速の突きを放つ。


「!?」


 そのまま吹っ飛ばされたダバーソンは起き上がる。


 満月の光がこの戦場を照らす、今宵は青年の独壇場となる。


「………」


「……!!!」


 ダバーソンは猛スピードで斬りかかってくるが、受け止められ、薙ぎ払われる。


 そして、怒涛の突きの連撃がダバーソンを襲う。


「……!?!―――――」


 かなりのダメージを負わせるがシリスは攻撃の手を緩めることなく続ける。


 左腰の収めているエストックを取り出す。


 二つのエストックの次元エネルギーを白へと段階を上げる。


 左のエストックで斬撃を喰らわせ、右のエストックで突く。組み合わせを変えながらボロボロになるまで追い詰める。


(……そろそろ来るか、手短に終わらせる)


 左腰にエストックをしまい、代わりにまたいくつもの鎖を召喚する。


 ダバーソンは鎖に付いた刃と鉄球の猛攻をあらゆる方向から隙も無く延々と受け続ける。


 これでもかと言うくらいでも攻めの手を緩めない。


 ……はっきり言ってダバーソンは瀕死であった。確かにこの創無は強かった。だがそれ以上に彼が強かっただけの話である。そう、彼が能力者として世界で二番目の強さを持っている、ただそれだけだ。だからこそ、彼に「Ⅱ」のコードネームが与えられた。


 戦いは仕上げに入る。


 ダバーソンの手足を鎖で拘束し、四方向から引っ張る。


 今にも引き千切れる勢いであった。


「………」


 エストックの白のエネルギーが十分な濃さで満たされていた、剣先を上で向かせ、自身の胸へ近づかせ、まるで敬礼するかのようなポーズを取り、近づく。


 その光景は罪人に審判を下し、裁く執行者であった。


「……ハッ!」


 ダバーソンの胴体に強烈な一撃を突き放つ。


 聞こえることのない悲鳴みたいな事をしているがシリスに届くことなく空へと突き上げられる。


 じりじりと痛みが増していく、そして抉るようにしてエネルギーを叩き込み、ダバーソンは完全に砕け散る。


「……プロテ、終わったぞ」


「流石です、シリス様、処理班も丁度今到着いたしました」


「わかった、戦況の状況を概ね伝え次第直ぐに戻る」


「お待ちしております、シリス様」


 シリスは立ち去った。この戦場に残っているのは月の光だけであった。








_______________________________________


 街からは一応離れてはいるが今回は距離が近い、下手をすれば一般人に被害が出る恐れがある。


 弘太は反応源へと向かう。


(場所は街から少し離れた発電所の近く、いつもより慎重に事を運ぶことが必要だな……)


 近くなると、そこにはすでに相原 柳が待機していた。


「来たか」


「状況は?」


「タイプ・サドゥシング。今のところ活動はしていないが……どうしたものかな」


「少なくとも変異前に襲撃できる」


「わかってはいるが問題はサドゥシングの戦闘能力が未知数ってことだ」


「……騒ぎが大きくなるなら01を使う」


「……例の空間の事か?」


「ああ、その時は柳に負担をかけることになるが問題あるか?」


「……いや、問題ない。それぐらいの負担は大丈夫だ」


「助かる」


 柳はハンドガンと短刀、弘太は刀を取り出す。


「タイミングを合わせて行くぞ」


「了解」


 ………


 静かな時の中で二人は化物に襲い掛かる。

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