十九話「拳火」
ここは誰もいない廃墟の古びた街、砂が宙を舞う。
ここにいるのは西幸 弘太でもなく相原 柳でもない、一人の女性である。
弘太たちとは違い西洋人でポニーテールの赤い髪で腕に特殊なガントレットを付け、服装はショートパンツといったラフな格好をしている。
弘太より二歳年上の十七歳。
彼女「ファイ・メイリー・ラプーク」は、Ⅴと呼ばれた者だ。
「異常はないわ」
無線機に報告する。
「今のところはな……現状のまま警戒、現れたら、直ぐ戦闘に入れ、今回のは特に手強いからな」
「了解、わかってるわよ、ロル」
ロルと呼ばれた通信相手の男に返答する。
「はいはい、通信終了」
ロルはそのまま通信を切った。
(……さてと、行きますか……!)
廃墟の街を徘徊する。
(ここに来る直前まで反応はあったけど来た瞬間に消失……やっぱり来ることを想定済みなのかしら……?)
(となると……手下を連れてる可能性は高いわね)
さらに街の中を回る。
(……反応があるわね)
数は一つや二つどころの話ではない、推定100体を確認できた。
(……どうやら手下が居るのは間違いないみたいね)
ファイは戦闘態勢に入る。
彼女が装備しているガントレットは本来は守るための防具であるが、その形状は守るというより、殴るための形をしていた。
そして、戦いは幕を開ける。
地面から次々と創無が出て来る。
その姿は人型ではあるが、まるで木偶人形のような姿であった。
現時点で見えるだけで20体はいる、100体の確認があることからどんどん地面から出て来るであろう。
だが、彼女にとってこの数は些細なモノに過ぎない、この後に大物が待っているのだから。
「……ふぅ」
一息つく、そして。
(速やかに片付ける……!)
木偶人形たちは各々異なる武器を持って攻撃してくる。
ファイは軽いフットワークで躱し、黒エネルギーの溜まったナックル型ガントレットでまず1体にストレートをお見舞いする。
木偶人形は耐えられず、そのまま消滅する。
負けじと木偶人形たちも応戦する。
ファイは素早い身のこなしで無駄なく避ける。
その直後にフックを喰らわせ、その勢いで二体、三体と撃破していく。
続けて、木偶人形に物凄い速度でパンチを放ち、胴体を貫く。
それを利用し、貫かれた木偶人形に次元エネルギーを溜め、跳躍、群れている木偶人形たちの中へ投擲。
群れに当たった瞬間、爆発し十六体は粉々に散った。
(ふぅ……順調順調……)
木偶人形たちはまだ出て来る、次は三十五体といったところか。
「………」
静かに構える。
そして。
「ハァ……!」
超スピードで接近、目の前の木偶人形に拳を振るい、撃破、その瞬間に次の相手に接近し拳を振るう、隙を与えず確実に倒していく。
剣や斧などの攻撃が来るが、いくつをガントレットで防ぎ膝蹴りを放ち、弓や銃による射撃が来たが、ガントレットの前腕部分から人間の拳とサイズが同じ牙が両腕のガントレットから1本ずつ展開させる。
茶エネルギーを溜め、振り上げるようにエネルギー光球を発射する。
光球により、弾と矢を消滅、光球を発射させる際に発生した衝撃が木偶人形たちに当たり、一時的な拘束状態となる。
それを利用し、どんどん敵に高速でパンチをファイは放つ。
木偶人形はほとんど倒し、残り一体となり、そいつにありったけの連続パンチを炸裂させる。
第二ラウンドも終わり次は第三ラウンドと言ったところか、次の対戦相手達が出現する。
残りの四十五体全てが出て来た、これを超えれば次はファイナルラウンド、彼女にはまだあまりある余裕がある。
(……彼らの戦闘スタイルはわかったから……早く殲滅しましょうか)
彼女は跳躍し、群れの中へ着地、透かさず攻撃へ入る。
そのパンチは威力よりヒットを重視したものになっていた。その拳は確実に木偶人形へヒット、まるでコンボを繋げるように連続した攻撃をする。
木偶人形たちは反撃しようとするが彼女の攻撃が勝ってしまう。それも当然だ、木偶人形たちは創無と言えど所詮は人形、ただの駒に過ぎない。そして何よりファイ自身の戦闘能力の高さもある。ファイにとって彼らは勝手に近づいてくれる的である。
エネルギーを茶から青へ上げ、さらに敵を撃破していく。
(これで……!)
最後の一体に渾身の一撃をお見舞いする。
(後は……)
残りはあと一体、そう今回の任務対象の創無である。
「………」
気配はしない、警戒しながら辺りを見回す。
突然、彼女の周りの空中から無数の巨大な針が出現、ファイに襲い掛かる。
「……!!!」
彼女は即座にガントレットで防ぐ、が、その後に出現した大量の針に対応できず傷を負う。
「チッ……」
針で攻撃してきた本体は直ぐに姿を現れた。
(クラウディラータイプか……)
その姿は道化師の姿を残しながらも変化していた。
道化師の服装と思われるモノにはぶら下がった数多の針、耳に該当する部分と背中には悪魔を思わせる異形に変貌していた。
(……少し厳しくなりそうね)
紫のエネルギーをチャージしつつ思考するファイ。
クラウディラーは動く気配もなく、ただその場でじっとしている。
「………」
(どんな行動をしようと全て捌ききって_____!?)
突然、意識が遠のく。
(さっきの……針ね……)
身体が熱くなる、目眩が起こる。
彼女に不調が起こったその瞬間にクラウディラーはその場から姿を消した。
「………」
またその場は静寂に支配される、その静寂は直ぐ崩れることになるが。
「……!?」
彼女が事態を把握した時には敵の攻撃は目前に迫っていた。
彼女の後ろの接触しそうな距離でクラウディラーはいた。
ぶら下がっていた針は、彼女の方に向き、毒を帯び、襲い掛かっている。
その姿はまるで全身が獲物を仕留めようとする動物の牙みたいであった。
目の前にもクラウディラー本人はいないものの針が出現し、同じ形を取っていた。
「……!!」
彼女はガントレットからエネルギーを放出、障壁の代わりとした。
障壁に牙がぶつかる、その隙にガントレットに再度エネルギーを溜める。
そして、地面にパンチを放つ。
足場を崩す、それと同時に障壁が崩れ、双方の牙にガントレットからの光球が迫りくる。
牙は消滅、クラウディラーは後退する。
「………」
「ハァ……ハァ……」
双方ともに傷を負っているが、このままではこちらが押し負ける可能性がある。
(……一気に方を付ける!)
クラウディラーは針を宙に浮かす、そして縫うように飛行させ、こちらに来る。
ファイは空を縫う針の軌道に沿うように走る。
次の瞬間、彼女は「二つ」になった。
「!?」
クラウディラーは動揺した、それが命取りになると知らず。
「ふぅ……」
クラウディラーが「二人」のファイに気を取られているうちに、腹部を貫通されていた。
二人しかいないはずだったが、いないはずの三人目が勝負を終わらせに来た。
「ハァ……」
クラウディラーを宙に打ち上げる。
右拳に灰のエネルギーを溜める、タイミングの合う頃合いまでギリギリまでだ。そして。
「イヤッ!!」
彼女のアッパーがクラウディラーを粉砕する。
「……ハァ……ロル、任務終わったわよ」
「了解、任務終了。 ご苦労様、ファイ」
「少し危なかったかなぁ」
「……大丈夫か?」
「うーん……「分離」したけど、一瞬しか使ってないからエネルギー消耗は最小限のはずよ」
「……まぁ巡回が終わったら検査だ」
「了解」
彼女は廃墟の街を後にした。




