二話 「殺刃」
……戸が開いたテラスから来るそよ風に当てられながら男はベッドで静かに寝ていた。
外はまだ昼の時間で爽快な気分になる程の快晴であった。
そんな時、茶髪の女性が男に近づいて来ていた。
「いつまでも寝てないで外で出て気分変えたら?」
「___ふぁぁ、もう少し寝たいんだがなぁダメか? アリー?」
「ダメよ。3日間ずっと家に籠ってるんだからいい加減出なさいよ、わかった?」
「……わかったよ、アリー」
「ほら、さっさと外へ行きなさいよ。ヴィオ。」
「はいはい。」
そう言いながらヴィオは外へ出た。
「……はぁ、やることないなぁ」
男が住んでる自宅の野原は見えるものすべてが私有地であり、人があまり入って来ず、そのせいでヴィオは退屈していた。
(創無退治も人はたくさんいるし金にも困ってないから、やる必要もないしなぁ。)
そう考えながら気づいたら敷地外の近くまで歩いていた。
(……歩きすぎたな、戻る……ん?)
戻ろうとしたヴィオはこちらに来る人影を見つけて歩みを止めた。
(あれは……街の自警団の制服だな……なんかあったのか?)
「……あなたがヴィオ・バロックさんですか?」
「ああ、そうだが……用件は?」
「はい、単刀直入に言いますとボスからの仕事の依頼です。」
「……そうか、わかった準備が出来次第、すぐそちらへ向かう。」
「では、私はこれで」
男はそう言いながら去って行った。
(……久々の仕事か、まぁロクな仕事じゃないのは確かだが)
ヴィオは直ぐに自宅に引き返した。
「あら、帰るの早いじゃない。何かあった?」
「ああ、あったよ、仕事だ」
「……気を付けてね」
「わかってるよ、アリーも留守番よろしく。」
ヴィオは飾ってあるマスケット銃を持ち自宅の地下室へ行き、着々と準備を進めていた。
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ここはとある高校の体育館、入学式の真っ最中である。
「晴れて我が校の生徒となった新入生諸君には勉学に励んでより一層______」
「………」
____特に異常が起こることなく入学式は終わり、今はクラスの教室で自己紹介の最中である。
__ 海導 和樹です、1年間よろしくお願いします。 琴木 彩織……です。 幸雪 零華です、よろしくお願いします! ……津田 命です……よろしく。 ……西幸 弘太です。 三田口 慶です、勉強頑張っていければいいなと思ってます、よろしく!
各々の紹介、ホームルームが終わり、今日の学校での活動は特になく、帰る以外に選択肢はなかった。
(……帰るか)
この学校は組織の支援を受けて一応の防備、エネルギー感知装置もあり、他に比べれば多少マシな環境であった……事情を知ってるのが少数しかいないのは厄介だが。
この学校の教師の9割は政府の圧力が掛かっていることしか認知していない。
弘太についてもいくつか上辺だけだが後押しがあり、学校で仕事が発生した場合に対処しやすい環境になっている。この地域の警察も同様である。
帰ろうとしたその時。
「ちょっといいかな……?」
クラスメイトである幸雪零華が話しかけてきた。
「……どうされました?」
「いや、ちょっとね、君だけ一人でいて何もしないからちょっと気になって……少しお話ししない?」
「……用事があるので」
「そっかぁ、ま、次の機会にお話ししましょう! 絶対ね!」
「……暇な時間がない、そんな余裕はない。」
「……わかったわよ。でも、時間があったら少しは良いよね?」
「…その時になったら」
弘太はそのまま帰って行った。
(西幸 弘太君、かぁ、友達になれるといいなぁ~)
自宅へ帰った弘太は栄養剤を飲み込み、6時間の仮眠をとった。
柳が見回りから戻っていた。
(……西幸 弘太は確か今日から高校だったな……負担が増えなければいいが)
柳はそう言って自宅へ帰って行った。
(………)
弘太は無言のまま見回りの準備をし終えた。
「………」
出る前に反応があった……街中であった。
(……路地裏に誘い込むか)
現地へ赴いた弘太は現場の状況を確認した。
(一部の一般人に鏡越しに見られてるが一種のイベントと思われてるみたいだな……幸い誰もアレに近づいてないおかげで被害はまだないが……)
敵の創無の姿は四足歩行の獣のような形からして「ディースト」タイプと判別できる。
その姿ははっきり言って、刃そのものであった。
全身が黒い湾曲した刃で出来ており牙と該当する部分には、ショーテルのようなものが左右に2個ずつ縦と横になって、代わりを担っていた。
弘太はディーストにエネルギーを見せびらかせ、こちらに注意を惹かせ、見事路地裏に誘い込んだ。
ディーストは路地裏に入り込んだ瞬間に爪で攻撃してきた。
弘太はそれを後ろへ瞬時に後退して、ディーストがショーテルの牙で追撃した瞬間に2回ほどバク転しながら回避、後ろへジャンプし壁を蹴りながらナイフを逆手で2本装備した。
そのままディーストへ上から刺す攻撃をしたが敵はこれをショーテルで受け止めた。
そのまま一旦距離を取り、5秒の沈黙が流れた。
ディーストが先に仕掛けた。
ショーテルでそのまま突進し、ナイフで受け止めたがそのままディーストはショーテルを横へ振り右、左、と怒涛のラッシュの対応に追われた。
ショーテルが次にこちらに攻撃する瞬間を見極めた弘太は次の攻撃が来る前にショーテルを右腕のナイフで止めさせ、左足にエネルギーを溜め、刃のようなものなった左足で右ショーテルに攻撃、破砕した。
続いて攻撃を止めずに右足にもエネルギーを溜め攻撃、左右による連撃を繰り出した。
2撃、3撃と確実にディーストに傷を負わせた。
ディーストは後退し始めた、逃走するつもりだ。
弘太はディーストの後を追った。
街の外であり、戦う場所としてはちょうどよかった。
だが、ディーストも逃げてるわけじゃなかった。
(……同型か)
同じ姿のディーストがもう一体の存在を確認した弘太は先に負傷したディーストを仕留めたがったが、2体になった途端に息の合うような連携攻撃を繰り出してきた。
片方が突撃し、数秒の攻防の後に退避、もう片方のディーストが襲い掛かりまた攻防戦が始まり、また同じことに陥った。
そして、傷が癒えてしまったディーストは2体同時に攻撃してきた。
ショーテルで1回の攻撃したらそのまま通り過ぎ、もう片方がさらにショーテルで攻撃し離脱、この1回の動作を2秒であらゆる方向から行い、この一撃離脱を繰り返した。
弘太はナイフで防ぎきっていた。
(……行ける)
片方のディーストの攻撃が来た瞬間にそれに合うように回転し、逆手で持ったナイフでエネルギー込めて思いっきり体の刃と刃の隙間に寸分の狂いもなく突き刺した。
「!!!____」
もう片方のディーストは連携が崩れたことで動きを止めた。
弘太はナイフに突き刺したままのディーストを相手へ勢いよく投げた。
ディーストが避けようと瞬間、弘太はその前に取り出した長刀を持ちながら、一瞬でディーストの前まで来ていた。
エネルギーの溜められた長刀は一撃でディーストを切断した。
(………)
弘太は何も言わずディースト2体を吸収した。
弘太はその後も見回りの後、自宅に戻っていて、相原柳と連絡を取っていた。
「……無事終わった。」
「そうか、ご苦労……」
「………」
「………」
「………」
「……そういえば、高校はどうだった?」
「…特に異常はなかった。」
「……そうか……」
「………」
「………」
「……連絡は終わりだ、以上。」
柳はそのまま連絡を切った。
(……あいつは今も変わってないな……)
柳はそのまま朝の街の見回りへ出かけた。
(……寝るか)
弘太はそのまま寝てしまった。
「♪~♪~」
鼻歌しながら零華は勉強していた。
(......にしても弘太君って子なんか無愛想だったな~、もっと愛想良くすればいいのに)
(明日も良い学校生活を送れますように~!)
そう念じながら零華は勉強に勤しんでいた。




