十八話「急襲」
家族……それは弘太にとって忘却の中へ消えた大切なはずの「何か」。
突然頭の中に浮かんできた「家族」というワード、その家族の何かが思い出せない彼にはわからないことだったが……その状態から少しずつ確実に動き出していた。決して良い方向ではないが。
「………」
「……? 西幸君?」
「……すいません、少し考え込んでました」
「そ、そうなの……お口に合わなかった?」
「いえ、美味しく頂きました」
「それならよかった……零華~!まだ支度終わらないの?」
「もう終わった! 今行く!」
二階から速い足音が降りて来る。
「お待たせ」
「西幸君を待たせ過ぎよ、さ、早く朝食取って学校行きなさい」
「わかってるよ~、いただきます!」
急いで朝食を取る零華、弘太はさらに今の疑念を晴らそうと思考する。
だが考えても考えてもそれを解決する手段が思いつかず、記憶を思い出すこともなかった。
父、母、弟、は確か居たと記憶していたがそれ以上は脳と機械化された脳のデータにもなかった。
……会っていない以上死んでいる可能性は高いが……ただ離れているかもしれない、あくまで推測の域なので断定はできないがそれでも今後彼のやることが見つかった、彼にとってこれは影響が大きい事である。
………
「ごちそうさま!」
考えてるうちに零華は朝食を食べ終えていた。
「っと、一緒に行こう!弘太君!」
「……ああ」
カバンを持ち、玄関へ行き、靴に履き替える。
「……いってきます!」
「いってらっしゃい、気を付けるんだよ 西幸君もね」
「はい……お世話になりました、失礼します」
「こちらこそ、寄り道せずちゃんと行くんだよ~」
「は~い」
そうして家を出る。
「ね、弘太君は、その……恋愛とか興味ないの?」
勇気を振り絞り彼女は言った。
(……はぁ~!?……何でこんな事言っちゃったんだろう私、やっぱりお母さんに言われてから少し変かな……)
「…ない」
彼はきっぱりと言った。
「……そうなの」
ガッカリした、彼女の心を表すにはこれが今一番だろう。彼女はそのことに気付かずモヤモヤした気持ちではあるだろうが。
「………」
「………」
会話のない時間が続く。
(……うー、空気が重い……何か話さなきゃ……!!)
「……弘太君は学校生活楽しい?」
「………」
また沈黙が起こる、彼はこの質問に答えづらい。何故なら彼自身楽しいのかわかっていないからだ。
弘太は学校における事を彼なりにであるが満喫しようとしているが、やはり能力者としての仕事、そして自身の存在感が異彩を放ち、クラスの人は彼を避けている。
何人か彼に話しかけようとしたがやはり彼の放つ異彩は常人では出せない異常なモノであり皆近づけないのだ。
幸雪 零華は過去に助けたからか、すんなりと弘太に話しかけてきた。
能力者についての話をよく振ってくるのは事情を知らなければ話かけてくるのは不自然ではないが、やはり何回も振られると少し対応をしなくちゃいけなくなる。
……実は弘太が彼女から話しかけられたのは嬉しかった、答えられない質問はあるがそれでも彼にとって幸雪 零華の存在はイレギュラーでありながらも、特別な存在、「友達」だろうか。とにかく弘太にとって大切な人になりかけているのは間違いのである。今はまだ弘太の中で過去のトラウマともいうべきはあり、彼自身が否定し、冷酷になりきろうとするが。
「……まだそこまで経っていない」
「そ、そうだよね、始まったばかりだし楽しくなるのはこれからかもしれないもんね!」
そこまで話すと学校が近くなってきた。
「もうすぐ学校だね」
「ああ」
他の生徒も見受けられた、幸雪 零華の家で時間を潰したことによりちょうど良い時間で登校できた。
教室へ行き、中へ入る。
何人かのクラスメイトは居て各々スマートフォンを弄っていたり、勉強をしていたりしている。
「………」
自身の席を座り、何をすることもなくじっとしている、が零華が直ぐにこちらに向かい、話しかけてくる。
「ね、今日のお昼一緒に食べない?」
「……結構だ」
「え~、なんで?」
「食事はそこまで摂らない」
「ん~、ならせめて一緒に話そう!」
「………」
少し間が空く、そして。
「……話すだけなら」
「うん、約束ね!」
「……ああ」
続々と教室に人が入る中、二人はそんな約束を交わした。
午前の授業も過ぎ、お昼の時間となる。
ちなみに、午前の体育の授業で弘太がかなり抑えてるが驚異の身体能力を発揮し、周りの注目を集め、体育の教師からは部活の勧誘をされた。自身の運動能力を使ってここまで称賛されるとは思ってなかった弘太はこの時、対応に戸惑ったが、と同時に少し嬉しかった。
「弘太君、体育の時間、凄い速度で動いたよね? カッコよかったよ!」
「……あれぐらいは当然だ(能力者としては)」
「でも凄かったよ! みんな驚いてたよ! 絶対人間超えてるとかって!」
零華はそう言いながら弁当の蓋を開け、食べ始まる。
「弘太君はホントに何も食べないの?」
「……ああ」
栄養剤のみで彼にとって十分なエネルギー源となる、身体の一部が機械化されているのが一因でもあるが。
「…もう少し何か食べた方が良いよ!」
そして、彼女は自分の弁当から卵焼きを箸で持ち、弘太の口元まで運ぶ。
「……遠慮する」
「……ダメよ! さあ早く!」
「………」
成す術もなく口の中へ卵焼きが運ばれる。
「どう……?」
「……美味しい」
彼の口から素直にその言葉が出た。
「……!! ありがとう! 口に合ってよかったよ!」
彼女がここまで喜ぶのもこの弁当、零華自身が作った弁当である。
弁当を作るのは普段はあの母親だが、高校に入ってからは少しずつ自分で作るようになっている。
零華はその後も卵焼きの他にも煮物、焼き鮭などの和風料理をどんどん弘太の口へ運ぶ。
周りの視線は自然に弘太と零華に向かっていた。クラス内で堂々とこんな事をしていれば当然だろうが、弘太は視線を気にせず、零華はそもそも視線にすら気づいていない。
そうするうちに昼休みも終わりに近付いてきた。
「あ、そろそろ終わりにしないと、お昼に付き合ってくれてありがとう」
「……ああ」
午後の授業も受け、放課後。事態は動く。
「これは……」
思わず声に出してしまうくらいには深刻な事態であった。
その時、通信が入る、支部からだ。
「こちら支部長白神、応答せよ」
「こちら西幸、詳細は?」
「ふむ……全世界のうちの三ヵ所、つまりここもなのだが、同時にとんでもない量のエネルギーを感知した、対応は君と柳の二人による任務となる」
この事態はないわけではないがそこまで多い頻度ではない、そして二人による共闘となるとそれは敵が通常より遥かに強いというわけでもある。
この担当地域に能力者が二人いるのは他と比べ、ここの創無の強さが桁外れだからである。何も不自然な状況ではなかった。強敵を任せられているからこそ、さらに強敵が現れる。むしろ自然な状況である。
「……他の区域は?」
「……ⅡとⅤだ」
「……了解」
弘太は妙に納得した顔で戦場へ向かう。
(弘太君また急いでどっか行っちゃったなぁ……怪物が出たのかな?)
考えてるうちに自宅へ着く。
(……今考えたら弘太君に「直接」食べさせたあれって……恋人同士ですることだよね!?……恥ずかしい……)
頬が少し赤くなる、やはり母親に言われたことで意識し始めたのだろう。
(も、もう! ホントに母さんのせいだよ……!)
その時。
「!?______」
彼女の意識はそこで途切れた。
突貫工事で書いているせいか、少し急ですのでこれからはもう少し丁寧に書いていければと思います。




