十六話「必殺」
(……ここか)
柳の向かった場所はこの街の導水路の中である。
(狭く暗いが……問題ない)
導水路の中を進んでいく、が、気配すら感じられない。
(反応はここだ……数は二つ、どこから仕掛けてくるか)
暗闇しかない空間を歩みを止めることなく奥へと進む。
(………)
歩くのをピタリと止めた瞬間に事態は動いた。
「……!!」
以前弘太が戦ったディーストとは違い全身が氷の刃でできていた。
ディーストは二体同時に挟み込む形で柳に突撃する。
柳は即座に身体を下へ下げ、左足で地面を蹴り、片方のディーストの真下へ身体を移動する。
そしてディーストを吹っ飛ばす形で氷の刃を横から蹴り、もう片方のディーストへぶつける。
「……!?!」
ディーストがぶつかった瞬間に短刀で刺し、もう一匹へハンドガンを放つ。
「!!!」
ディーストは音のない咆哮をし刺された短刀を振り落とし、迅速な速度で柳との距離を取る。
「………」
「………」
ディーストは隙を狙っているかと思えばそうではなかった。
(……!?)
床一面が氷になっており、柳の足元は固定されていた。
ディーストは柳の身動きを封じた瞬間に再び襲い掛かって来た。
柳は急いでもう一つの短刀を取り出し、両方を使い、ディーストの牙を防ぐ。
無理やり足にエネルギーを溜め放出、どうにか足の自由を得て、ディーストを突き飛ばす。
「……!」
状況は再び先ほどと同じ状況に戻る。
(……次で決める)
柳はその場で一回転し、左足に溜めたエネルギーを床の氷に放つ。
蹴られた氷の床は砕け散り、大量の氷が空中に散り、一瞬の輝く雨となる。
ディーストたちは身構えたが、既にこの戦いは決着は決まっていたに等しい。
「……!?」
何が起こったのか、片方のディーストが一瞬にして身体を真っ二つに切り裂かれていた。
そこにはそのディーストを斬ったであろう柳の姿がある。
彼の持っている短刀の放つ次元エネルギーは先ほどの黒い靄とは違いさらに濃い紫色の靄になっていた。
そして、柳の眼光は生きているもう片方のディーストに向けられる。
ディーストが行動を取る前に柳が先に動いた。
ディーストの方へ床を蹴り軽く跳躍、右手の短刀で首を掻っ切る。
その後、逆手に持った左手の短刀で胴体を刺す、自らが回るように短刀を斬り進め、切断。
「………」
これで二体をどちらとも倒し、彼の分の仕事は終わりである。
(……少し見回りをしたら戻るか……)
彼は弘太の元に行くことなくディースト二体を吸収し、街の中へ溶け込む。
「………」
場所は採石場、今は使われていない、さらに街から離れ人も近寄らないので他の事を気にする必要もない。
弘太にとってこれは格好の機会であった、D-00の実戦で試していない機能も試せるチャンスであった、本人は微塵もそんな事思っていないが。
02を使って移動する手段もあったが流石に場所を正確に知っていないと飛びづらくそれに加え、障害になる物が多く普通に移動するより時間がかかると判断した、だが一度見た場所は脳の機械部分のメモリーに記憶されるので問題はない、ちなみに初めて見る場所でも邪魔なものがなければ見た瞬間に移動はできる。
「………」
「………」
どうやら奇襲することなくそのまま戦闘に挑むらしい。
数は二つ、反応が出たときにここからは三体が計測されていたが今は目の前の事に集中しながら警戒をする手段を弘太は取った。
二つのナイフを逆手に構え、堂々と前へと前進する。
ボロい継ぎ接ぎな犬人形のような姿をしたディーストは腐敗しているような見た目をした牙を剥き出しにし、次元エネルギーの靄を纏う。
茶色に発展させたエネルギーをナイフに込める。
両者は接近、ナイフと牙の刃がぶつかり合う。
エネルギーの濃さではこちらが上だが数では押されている。
上手くナイフで捌き切り、ディーストの距離から離れる。
弘太はナイフをしまい、02から何かを取り出す。
それは02にしまい込んだ倉庫の武器である。
彼が今手に持っているのは槍である。
彼が何を考えて槍を選んだのかはわからないが戦況を変えるにはこれでよかったのである。
エネルギーがあらかじめ溜められてる槍を構え、そのままディーストへ突く。
ディーストは当然の如く横へ躱す。
だが、躱した瞬間に突いたと思われた槍を弘太を横へ振り、殴るようにディーストへ攻撃する。
そして、一体の怯んだディーストへ槍を突く。
ディーストはそのまま絶命した。
「………」
弘太はディーストを刺したまま残りのディーストへ向かう。
ディーストは弘太をかく乱するように弘太の周りの障害物を使い、走り回る。
恐るべきスピードで走ったディーストは次の瞬間には弘太に飛び掛かっていた。
弘太は槍を振り回し、刺さったディーストの死体を残ったディーストへ向けて当てた。
ディーストはそのまま吹き飛ばされ身動きを取れない。
弘太はそのまま槍で二体とも一気に串刺しにするように止めを刺した。
「………」
二体の死体を吸収しようとしたその時。
「………」
彼の前に姿の見えなかった3つ目の創無が現れた。
その姿は人型でありながら、人の外見は何ひとつ持っておらず、一言で言えば蜘蛛に似た化物である。
人型に変形している蜘蛛のような創無の背中からは八本の蜘蛛の足が生え、まさに「怪人」と呼ぶ存在であった。
(……ダバーソンタイプか)
弘太は槍をしまい、刀を02から取り出す。
刀を抜き、紺色のエネルギーを溜める。
ダバーソンは獣のような黒い手にエネルギーを溜め始まる。
……能力者の使う次元エネルギーには段階がある、創無は黒一色だが能力者は八段階に分けられる。
黒→紺→茶→青→紫→灰→白→黒
といった段階で分けられる。
濃さにより決まり、能力者は好きに調整できる、八段階目の黒まで使うということは緊急事態に陥る、使わないと負けると判断する等の場合に多く、あまり使用されない、というより八段階目まで行けるものはあまりいない。そして通常はそこまで上げる必要性がないため一段階目の黒の状態が多い。
ちなみに8年前のあの弘太のクリスマスの悲劇で柳がクラウディラーに放とうとしたエネルギーは灰色の状態である。
「………」
弘太は刀で斬りかかる。
ダバーソンはゆっくりとこちらに歩いてくる。
刀を胴体に一気に振り下ろす。
だが、切断されることなく強靭で異質な肉体と刀の激突、そしてエネルギー同士の衝突により、火花だけが散る。
ダバーソンは背中の蜘蛛の足で拘束しようとする。
弘太は刀で防ぎつつ距離を取ろうとする、が。
ダバーソンは口から体液を吐き出す。
「……!!」
体液が左手にかかる。
それは熱く、中に着込んでいた戦闘服が一瞬にして溶けてしまった。
その隙を突き、ダバーソンは爪で弘太を殴るように斬りかかる。
胸部の戦闘服に何度も攻撃が入る。
それを受ける弘太は後退り、次に蹴りを受け、吹っ飛ばされる。
「………」
静かに立ち上がる。
静かに深呼吸をし、息を整える。
「………キック」
『RELEASE』
D-00の右靴の装置から低く落ち着いた男性のような電子音声が流れるとD-00に変化が起きた。
脚に密着するように装着されていた薄い装置のラインが青く光り、エネルギーを溜め始める。
「………」
弘太は刀を構え、再びダバーソンに斬りかかる。
ダバーソンは腕をクロスし、防御の態勢を取る。
腕に振り下ろす、火花は散る、その瞬間を左足で恐るべき速度で腹部に蹴りを入れる。
「……!!」
ダバーソンは態勢を崩す、そして右足、左足の交互に蹴っていく。
だがその状態を壊し、ダバーソンは振りかぶるように爪で斬りつけて来る。
弘太は後ろへ軽いステップをし、その後ダバーソンの腹部へ左手にエネルギーを溜め、拳を放つ。
腹を抱えるようにダバーソンは後ろへ下がらさせられる。
右手に持った刀を逆手に持ち、さらに斬撃に入る。
ダバーソンはその斬撃をただただ受けるしかなく深手を負う。
そしてダバーソンに回し蹴りをお見舞いし吹っ飛ばす。
『CHARGE END』
再び電子音声が聞こえると弘太は、キックをする構えを取り、姿勢を低くする。
「……フィニッシュ」
『FINAL STRIKE』
戦いの終わりを告げる電子音声が流れ、ラインから流れる青のエネルギーは一気に放出される。
「……フッ!」
弘太は上空へジャンプし、身体を丸め、前転する、そしてその状態を崩し、右足をダバーソンへ突き出し、キックの構えへ入る。
ダバーソンは防御する余裕もなく身体をふらふらさせながら何もできずいる。
「ハァ……!」
弘太は掛け声を上げ、キックをダバーソンに放つ。
「……!!!」
ダバーソンは胸部に一点の強烈な青い閃光の一撃を受ける。
弘太はキックした状態からさらにキックしダバーソンを押し飛ばし、自身はその勢いで後ろへ後転しながらのジャンプ、ダバーソンに背を向ける形で着地した。
「………」
ダバーソンは反応を出すことなく、その場で倒れ、エネルギーが暴走し、爆発した。
「………」
弘太は立ち上がり、周囲を状況を確認した。
(………異常なし)
弘太はディーストの死体を吸収しこのまま街の巡回をするためにその場から立ち去った。
ここから少しずつ特撮要素が増えていきますが雰囲気を変えない程度なのでそこに関しては大丈夫だと思います。




