十一話「接触」
美しい音色がそこからは響いていた、ベランダから響く音色は通りすがる人々の心を惹き、魅了した。
だが、その曲を最後に演奏は聴こえなくなった、曲が終わると通行人はみんな自分の作業へと戻っていった。
「ハァ……」
「どうした?」
「いや、クラウディラーの行方が気になってな......」
「まぁ、他に対応できる能力者に依頼したから大丈夫なはずだ」
「それで良いんだが……少し不安でな」
「……依頼を続けるか?」
「いや、このまま帰る」
「そうか……報酬は提示通りに出しておくぞ」
「すまない、助かる」
「ああ、後ここ最近創無の活動が活発になってきている、それに加えて進化し強力になってきてる個体も確認されている、気を付けてくれ」
「わかった、アリーにも伝えておく」
「よろしく頼む」
二人はそこで別れた。
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……少々厄介な事態になった。
複数の反応が確認されたのだ、恐らく全てダミーの可能性もあるが次元エネルギーの塊を放って置くわけにはいかない。
「………」
反応は5つ、1つ目を潰してそれから残り4つの対策を立てる事にした。
脚にエネルギーを溜め速度を上げる、5分と掛からず最初の反応源へ着いた。
「………」
ピエロに似た人形が居た、弘太が遭遇したあのピエロとは違った。
あのピエロ、「クラウディラー」の姿が劣化し、ボロボロになった見た目であった。
「………」
ピエロはこちらを視認した直後に行動を開始した。
弘太も警戒する、右手にハンドガンを構え、左手はナイフを持ち、間合いを計っていた。
ピエロはゆらゆらと左右に揺れながらこちらに向かって来た、そして口からエネルギーを漏らしながら突進してきた。
弘太は弾丸を放った。
だがピエロはそれを綺麗に避けた。
続けて弘太はもう一発撃ち、ピエロへナイフを刺した。
ピエロはその全てを避け切って見せた。
「………」
「………」
一向に攻撃する気配はない……可能性としては時間稼ぎ又は戦う気がないかだが……前者が当て嵌まると推測できる。
だが、クラウディラーが何のために時間を稼がせてるのかはわからない、早急に事を終わらせなければならない。
弘太はハンドガンを右腰のホルスターに収めた。
「………」
ピエロはこちらへ再び向かおうとした、しかし。
それと同時に弘太はピエロへ一直線にナイフを投げた。
ピエロは回避する間もなく胸部へ刺さった。
隙を逃さず距離を縮める弘太は左足で右横から蹴りを放った。
ピエロの左腕を見事蹴り裂き、さらに、右手にエネルギーを溜め、ブローを放つ。
「____」
ピエロの人形の破壊を確認した、後4体を片付けなければならない。
「………」
1体につき所要時間……30秒で十分だと判断した。
4つの反応が人形でなければ時間が掛かるが反応したエネルギー量は全て同一なので可能性は低い。
「………」
弘太は次の反応源へ向かった。
次の地点へ到達した瞬間に弘太は刀を構え、一振りし刀に溜めたエネルギーを見えない速度で放出した。
それは一瞬の決着であった。
衝撃波となった放たれたエネルギーは森の中にいたピエロを一撃で木っ端微塵にした。
「………」
弘太は次の反応源へ向かおうとした、だが。
(………)
肉体に少しの変化が起きていた。
前よりも強い力を体から感じ、エネルギーも感覚的に扱える量が増えエネルギー自体の濃さも高まっていた。
(………)
弘太はそれが普通であるかのように次の地点へ向かった。
強化されたことで前よりも速く移動できるになり、残り3体も予定より早く始末できるであろう。
その通りとなり2体も楽に始末できた、残り1体、クラウディラーの殲滅に戻る事ができる。
残る1体は街から離れた廃坑にいた。
地上から見えないことからして廃坑の奥深くに居ると思われる。
「………」
弘太は廃坑の中へ入りエネルギー反応を辿って進んだ。
廃坑の中へ進んでいくほど血液が見えていき、さらに深く進むと幾つも奇怪な形に変形してる人の死体が出てき始めた。
恐らく以前にクラウディラーはここを使用し、一般人を殺してきたのだろう。
「………」
さらに奥へ進んだ、人の死体も奥へ行けば行くほど腐敗していたりするものもあった。
エネルギーの反応も段々強いなってきた。
「………」
弘太は左手にナイフを手に持った。
最深部へ到達する前に最深部の状況をチェックした。
奥にピクリとも動く気配のないピエロが立っていた。
一撃で片を付ける、そうするために弘太は脚にエネルギーを溜めた、前と比べ格段に能力が上がっていた、そして、エネルギー量を限界までまで溜め強化した脚でピエロに向かって突撃した。
その速度は生物が行けるの筈のない光の速度であった。
ピエロは動く間もなく弘太のナイフに突き刺された。
弘太はそのまま足を上へ上げ、踵落としを決めた。
ピエロは身体を引き裂かれた。
「………」
これで5体全てを倒した、後はクラウディラーのみである。
だが、急激に光の速度で走った為、肉体への負担は無視できるものではなかった、いくら人ならざるとはいえ、無茶である、そもそも光の速度を出せる時点で問題なのだが……。
「………」
弘太はそのまま廃坑を出た。
「………」
刀を構えた、その意味は目の前にあるからだ。
「………」
人形全てを倒したことで流石にこちらへ対応をせざるを得なかったのだろう。
「………」
「………」
少しの静寂の後に、戦は始まった。
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「帰ったぞ~」
「仕事はどうなったの?」
「逃げられた、まぁここらには恐らくいないだろうがどうなんかねぇ」
「……報酬は?」
「提示通りに貰ったよ」
「そう、ならいいわ」
「あのタイプと戦うには割と苦労するだろうねぇ、依頼を受ける奴は」
「どのくらい?」
「俺並の能力者4人は必要じゃないか?」
「それは大変ねぇ……それがここに来た時、そいつを倒せるの?」
「う~ん、その時はその時かねぇ」
「まぁ、あのピエロを倒せるのはよほど長けた奴かある種の感情が高い能力者じゃないと無理だろうなぁ」
ヴィオはそう言いながら昼寝に就いた。
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「津田君お疲れ~」
「お疲れさまでした」
津田命はバイトが終わり帰宅するところであった。
「………」
無言でスマートフォンを弄る、それだけであった。
すると。
「……あれは……」
空中を飛ぶピエロの姿を彼は見かけた。
(最近わけわからないものが多くなってきたような気がする……)
(……撮ろう)
だが。
(……映らない)
(……まぁあのピエロもういないし帰ろ)
疑問に思いつつ命は帰って行った。




