葬黒の箱-墓標墓石の伝言-201601
サウンドクリエイターであるRevoさんの生誕記念作です。
荒れ果てた野を一つの影が往く。
身体から汗を流し、
塵の舞う砂風に吹かれながら、其れでもゆっくりと歩くその影の先にあるのは、
静かに時間を眺めているようなそんな穏やかな雰囲気を持つある一つの墓標。
墓標の前に辿り着いた影は、一つの焔を灯して、一つの言葉を零す。
さざ波揺れる時の岸辺に一つの影が佇み、黄昏ている。
涙を流し、水に侵され潮風に吹かれながら、
静かに佇む独りの影、視線の先に有るのは先の見えない広大な海。
もうすぐ夕暮れを過ぎようとしていた。
ある丘の上でのこと――。
悲しみのたけびを上げながら、辺りを包む大きな感情よりも、
はるかに小さな棺の前で項垂れる二人の姿を、
いったい誰が嬉しく観て居られるというのか。
小さな棺の中に居るのは――光なのか闇なのか、憎悪なのか愛情なのか。
泣いているのか、笑っているのか。
項垂れる二人には知る術はない。
例え――――彼らの頭上に、物語を照らす人形が居たとしても、
彼らの後ろに四の数の黒猫が居たとしても、彼らの眼前に複数の死神が居たとしても。
両親を先頭にして葬儀に参列する皆々は、
「残念だったね」「まだまだこれからだったのに」「可哀想にねえ」
「そういう運命だったんじゃないのか」などと棺の箱を前にして口々に言葉を零した。
参列するモノの中には、
軽口を叩く者も、憐れむモノも当たり前のように居て。
けれども皆、口をつぐみ辺りの雰囲気と同じように暗く影を落としていた。
ある瞬間が訪れるまでは。
幾人もの人間が暗い表情や悲しい表情をして棺を後にして行ったが
ある時、どこからともなく唐突に聴こえた誰かの言葉が、
何故だか、棺の周りを、俯く彼らを熱くさせる。
「誰かの想いは諦めない。想いは途切れない。想いは負けない。想いは死なない。」
その言葉は――風に乗って何処までも地平に、空間に世界に広がって行くかもしれない。
温かくまばゆい焔と共に。
その言葉を口にしたのは、親友なのか戦友にして盟友なのか。
言葉を受けた者によって変わってくることだろうと思う。
今があるからと言って明日があるとは限らないからこその想いや言葉が在るように、
きっと生きている今にしか無いモノがたくさんこの世界には広がっているのだと。
――――「ありがとう。 」そう言葉を棺の前に残して、
荒れ果てた野へと戻って行った――。
去りゆく一つの影の眼元には黒いサングラスが一つ。
言葉を受けた墓標と其れを残す墓石には三つの品物が置かれていて、
左側には、赤い薔薇。
その右側には古びた懐中時計。
その赤い薔薇と古びた懐中時計の真ん中にはこれまた古びたサングラスが置かれており、
墓石や墓標に、思い出を語っているようだった。
墓石に思い出を贈った影が荒野から去るのと時を同じくして、
さざ波揺れる時の岸辺で黄昏ていたもう一つの影も、
座りながら見上げていた星空に手を伸ばした後、
少しばかり息を吐いてその場所を後にした。
時の岸辺を後にした影の表情は、憑き物が落ちたように晴れていた。
――朝と夜はくりかえし、どれだけ色褪せ、変わっていくものがあっても。
創り出されていく強い想いはこの世界から消えないと信じて生きていきたい。
生きるということの難しさは在れど、
生も死も、その大切さをしっかりと感じさせてくれる貴方の音楽や言葉に感謝を。
Revoさん生誕おめでとうございます。01