8話
「はい、お疲れ様。私も実は1000を超える者が出るとは思ってなかったな。でも事実、2人もいるんだから、何が起こるかわからないものだな」
と、感心した様子で先生は言う。
「ではこれで、今日やることは終わりだ。各自、ABに送信したことをしっかり読んで、明日また学校に来てくれ。……ああ、それとだな、さっき1000を超えた者……ええと、桜原愛と萩田翔は少し残って、私のところへ来てくれるか。では、また明日。解散!」
桜原と俺は先生のところへ行くと、
「2人とも、今日はお疲れ様。手短に言うぞ。おそらくお前ら2人は学校1位と2位だ。普通科目も2人とも優秀な点数を取っている。そこでだ。実は、生徒会を発足しようと思っている。2人には生徒会に入ってほしいんだ。役職は後日決めるが、どうだ?」
と、言われた。
桜原と俺は顔を見合わせて、お互いの意志が不思議とわかったので、軽くうなずく。
「別に俺は大丈夫です」
「私も大丈夫です」
2人で了承の意を示す。
「そうか、ありがとう。詳しくは明日だな。じゃあ、今日はゆっくり休んでくれ。また明日な」
「はい」
「先生、さようなら」
2人で教室を出て校門に向かうとき、ABで校内図を出し、それに従って歩く。
桜原はABをいじって、規則やこの学校について読んでいた。
桜原がかいつまんで説明してくれたことによると、
*校外での魔法の使用は基本禁止。ただし特例があり、命が危険にさらされたときなどは認める。さらに、使用が許可されている場所に関しても同様。例としては、自宅や寮など。
*時間割については、普通科目+魔法学で組まれる。
*校内では"バディ"と呼ばれる自分のペアと一緒に行動するのが望ましい。校外についても同様。
……ということらしい。
とりあえず今日は自宅に帰り、各々準備をしようという話になり、校門に出る。
そこで別の先生に会い、その先生によると、魔法学校生専用の車があるという。
家から学校までの送迎をしてくれるらしい。
だが、学校に近い場所に住んでいる者は、徒歩での通学も可能だという。
2人とも遠い場所に住んでいるので、ひとまず一緒の車に乗り、送ってもらうことにした。
ちなみにこの車は魔法車というらしい。
「……安直なネーミングが多いな」
「え?」
「いや、CPも、ABも、この魔法車も、安直だなと思ってな」
「でも」
と、桜原は言う。
「安直なほうが覚えやすくていいじゃないですか」
微笑みながら桜原はそう言う。
その素直な意見が少し眩しい。
「……ああ、そうだな」
2人で魔法車に乗りこみ、見ると外見は普通の車と変わりないが、中は全く違った。
運転席などは無く、壁に沿って椅子が付いているだけだ。
窓はぐるっと車を1周するようにつけられている。
俺達は向かい合わせに座り、シートベルトの代わりに腕輪を付けた。
腕輪にはチューブが繋がっていて、その先は車に繋がっており、先生の説明によると、乗車している者から均等に魔力を吸い出して、エネルギーとして使用するためだという。
モニターに目的地を設定し、車が動き出した。
「……桜原は、自分が魔導士だとわかったとき、どうだった?」
「どういうことですか?」
「俺は、少し受け入れるまでに時間がかかった。今もにわかには信じがたいんだ」
「……私は、自然と受け入れてました。実感はあんまりないですけど」
「……そうか。頑張りすぎて、体壊すなよ?」
「え?」
「杖を作るとき、周りの奴を手伝ってただろ?」
「ああ……。気をつけますね」
桜原は笑いながら言う。
その後も学校のことや個人的なことについて話し、気がつくと、桜原の家の前に着いていた。
「じゃあ、また明日、先輩」
「ああ」
1人になり、これからのことについて考える。
自宅と学校は離れているので、寮暮らしを志望しようかとか、そんなことだ。
考え事をしているうちに、自宅に着いたので車を降り、部屋でABに送信されたことを読みながら、明日の支度をする。
明日は1日中魔法学のようて、説明などが多いのだろう。
ABを見て、準備するものを確認。
まずは杖を入れて腰につけるホルダーだが、製作魔法を使って簡単に仕上げる。
もう1つ、薬の材料を用意しなければならないらしいが、これも製作魔法で作れるようなので、作ってABにしまっておく。
これで準備しなければならないものは全て終わった。
あとは、ABに入っている教科書を読みながら、時間が過ぎるのを待つ……。