7話
翔side……
自分が魔導士であると発覚してから数時間。
最初こそその事実を受け入れるまで少し時間はかかったものの、今は素直に受け入れられる。
先ほど行われた普通科目のテストはよくできたと思うが、魔法のテストは内容が予想できないだけに不安が拭えない。
桜原を見ると、周りの人を手伝っているようだった。
桜原は魔法が得意らしい。
見たところ杖も1番に作り終えたようで、俺は、きれいな杖だと思った。
手の中から真っ直ぐに伸びた黒い杖。
それを見ている桜原の顔はとても嬉しそうだった。
だが、前の学校にいたときもたびたび見た、あの作ったような笑顔が、少し気になる。
(そろそろ20分だな)
先生に言われた時間がきて、先生が教室に入り、言う。
「杖は作ったな?では移動するから、荷物を持って1年生から順に来い」
1年生が立ち、荷物という荷物も特に無いまま、ABと杖を持ってついて行く。
2年生、3年生も同様だ。
先ほど説明された隣の教室、つまり魔法学の教室に入る。
中は小さなホールのような作りになっており、椅子などはなく、部屋の中央に大きな球体があるだけだ。
生徒達は、学年ごとにまとまっていて、桜原は藤井明という生徒と一緒にいる。
説明が始まった。
「これから魔法のテストを行う。さっき作ってもらった杖を使うから、準備してくれ。ではまず私がやって見せるから、それを真似するように」
と言うと、先生は杖を球体に向け、こう言った。
「ナッシング」
すると、杖から白い霧のようなものが現れ、勢いを増していく。
恐らくこれが魔法だろう。
魔法が球体に当たると、球体が光りだし、そして数字が現れる。
「670」
と書いてあった。
「まあ、なりたてなら500が平均かな。1000もいけば大したもんだけどな。これは魔力を数値化する装置だ。壊れないように魔法はかけてあるから、安心して全力で魔法をぶつけろ」
高等部の生徒が揃って緊張する。
「あ、ちなみに、順位は普通科目と魔法学は別で出されるからな。頑張れよー。じゃあ、名前呼んでくから、順にやってくれ」
1年生から順に魔法テストを受けていくがそこまで高い数字は出ない。
次に2年生の番が来て、最初は男子だ。
「石岡優」
「はい」
……結果は760で、まあまあといったところだろう。
「桜原愛」
「はい」
桜原は少し緊張した面持ちで、球体の前に立つ。
「ナッシング」
杖を真っ直ぐ持ち、唱えると魔法が発動。
球体が光る。
「1637」
確かに球体はその数字を出し、周囲がざわつく。
なにしろ、今までの生徒と比べ、桁違いに大きい数字だからだ。
すると、先生がおもむろに拍手。
「いやー、すごいな。私でも出せないぞ。ほら、皆も拍手!」
パラパラと拍手が起こる。
桜原は恥ずかしそうに笑い、お辞儀をしてから俺の姿に気がついたようで、少し笑った……ような気がした。
桜原が2年生の集団に戻り、ざわつきが落ち着くがその後、2年生から1000超えの者はいなかった。
次に、3年生の番になり、テストを終わらせていく。
しかしこの中にも、1000超えの者はいない。
「萩田翔」
「はい……ナッシング」
杖に力を込め、唱えた後魔法が発動、測定される。
「1274」
球体がその数字を出して、自分自身驚いたがすぐに3年生の集団に戻る。
拍手されたりするのが嫌だった。
……残りの3年生も終了し、結局1000を超えた者は桜原と俺だけ。
このクラスにおける魔法学の順位は決まった。