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恋の魔法、学びます。  作者:
1つの終わりと1つの始まり
44/48

43話

「え、皆……?」

「止まれ!」

「ねえ、どうしたの?私だよ?」

私は制止の声も聞かずに近づいた。

「ファイア!」

すると、呪文を唱える声が聞こえ、弱く赤い色の魔法が向かってくる。

「ウォーター」

私はそれを水属性魔法で反射的に打ち消した。

……呪文を唱えたのは、怖さのせいか震えている明ちゃん。

「そんな……明ちゃん……?」

「き、気安く呼ばないで!」

心が音を立てて壊れたような気がした。

「あ、ああ……」

私がしたことは無駄だったのだろうか。

「嫌、なんで、どうして、こんなことに……」

私は、一体どうしたら良かったのだろう。

魔法が暴走し、私を守ろうとするかのように周囲のものを攻撃する。

悲鳴、泣き声、叫び……それらがどこか遠くから聞こえてくるような気がした。

私は、手に無属性で造形した短剣を持つ。

「皆を傷つけるくらいなら、いっそ……」

刃先を胸に向けて、私は短剣を振り降ろす。

「だめだ!」

ふわっ、と温かい腕が体を包んだ。

その瞬間、ドスッ、という感触が手に伝わる。

私の目の前にいるのは……

「翔さん……?」

「良かった……。無事、で」

ズルッ、と翔さんが滑り落ちる。

私は慌てて翔さんを支えた。

短剣は造形なので、コントロールをなくすとすぐに霧散。

「翔さん、どうして……」

「さあな。体が動いただけだ。というか、簡単に死のうとするなって……」

魔法の暴走はいつのまにか収まっていた。

「翔さん、ごめんなさい……。私の、せいで」

私は地上に降りて翔さんを抱きかかえる。

出血がひどく、翔さんの顔色はみるみる悪くなってしまう。

ここまでだと、回復魔法も効果はなさそうだが、ダメもとでかけてみる……が、やはり変化はなかった。

翔さんの意識はもうほとんどない。

「どうしたら……」

『彼を助けたいですか?』

あの「声」が聞こえてきた。

「助けたい、助けたいに決まってるじゃない!」

『では、選んでください。あなたの持っているものを犠牲にして彼を助けるか、何もしないで見守るかを』

「何を犠牲にしても構わない!翔さんを、助けて……」

『……かしこまりました』

私は翔さんを助けるためなら、何でもするつもりだった。

私には、翔さんがいないとダメだもの。

翔さんがいないこの世界に生きている意味なんて、ないのかも。

『大魔法、発動準備……完了。桜原愛を源に、発動』



私は体から力が抜けていくのを感じていた。

意識が飛びそうになるが、翔さんの無事を確認するまでは倒れられない。

「ん……?」

「翔、さん?」

「愛?」

「無事、ですね……良かっ、た」

「愛?愛!」

そうして私は意識を闇に委ねた……。


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