42話
愛side……
隣でガタン、と音がしたので見ると、翔さんが気を失っていた。
ローズがそれを見て、手を振る。
すると、電流が消えて体が少し楽になった。
「っ、はあ、はあ……」
体は上手く動かない。
「……ごめんなさい。でも、仕方がないことなんです」
「……あなたのやり方は間違ってる。そんな犠牲の上の世界に、私は暮らしたくはないよ」
「でも、もう決まったことです。……既に、仲間達が学校に向かっています」
「え……?」
「総理達から活動の許可が降りた時点で、使い魔に合図を送り、動き出させました」
「そんな……」
「林を使って、学校に全生徒を集めさせておきました。そこを狙います」
「皆が……」
嫌だ。
会えなくなるかもしれない。
嫌だ。
そんなのは、嫌だ。
体のどこかが、プチッ、と切れる音がしたような気がした。
ドンッ!
「え……何が……」
「ローズ……私はあなたを許さない。今までしてきたこと、私は忘れない!」
私は私達を縛り付けていた装置を破壊し、気絶している翔さんを横に浮かばせながら、共に空中に浮かんでいた。
背中に翼が生えている。
周りに魔力の渦ができて、それが私と翔さんを守るように囲んでいた。
私は無我夢中で、ノワールの本拠地を飛び出して、空へと飛ぶ。
焦るローズの叫ぶ声が聞こえてきた。
「ノワールメンバーに告ぐ!全員本拠地に戻り、桜原愛を押さえよ!……あ、総理ですか!緊急事態が発生しました!桜原愛が暴走しました!至急応援をお願いします!指揮は……」
ローズは本能的に私に勝てないと判断したのだろうか。
すると、目の前に使い魔と思われる悪魔が姿を現した。
私は杖すらもう持たずに、唱える。
「サモン」
そして、魔法弓を手に取った。
翔さんと相談しながら作ったこの弓で、私は悪魔を射る。
「エンチャント、ライト」
同時に光属性をつけた。
私は上位の属性魔法を既に習得していたのだ。
放たれた矢はまっすぐに悪魔を射抜く。
……悪魔は霧となって消えた。
次にあのドラゴンが現れる。
「ダーク、モデリング」
私は闇属性の槍を作った。
長さが1mほどの、投擲用のものにする。
その槍を、ドラゴン目がけて、投擲。
「ブースト」
威力を上げる呪文をかけ、ドラゴンの体に命中させる。
……ドラゴンは悲鳴を上げ、消えた。
私はその後も襲い来る使い魔を殲滅しながら学校の方向へと向かう。
方向はなんとなくわかった。
これも魔力のなせる技なのだろうか。
そして、学校に着いた私の目に映ったものは……
「止まれ!止まらないと撃つ!」
杖を私の方に向け、構えている学校の皆だった。