40話
俺は愛が心配になり、愛の方を見た。
愛の体の震えは収まっているようだが、顔を俯かせているせいで表情が読めない。
「私は嫌」
だからこそ、思いの外強い声が出てきて俺は驚いた。
「……なぜです?」
「私はただ毎日を幸せに過ごせたら、それでいいの。明ちゃんや、優くんや、詩先輩や……翔さんと、笑っていられたら、それでいい。好きな本を読んで感想を言い合ったり、互いに笑ったり。そんな何気ない時間があればいい」
「愛。……俺も愛と同じだ。お前の仲間にはならない」
「そーですか。では仕方ありませんね。強硬手段に出させてもらいます」
そう言うと、ローズは画面を持ってきて、ボタンを押した。
すると……
「えっ!」
「うわっ!」
座っていた椅子が突然床に降りたかと思うと、その形を変えた。
容器のようなものに変わり、そこから管が飛び出して手についている輪に接続。
さらに、別の輪が出てきて俺達の体を完全に拘束した。
この間に1秒もかかってない。
「さて、後悔はありません?今からでも……」
「「嫌だ」」
「はぁ……では、せいぜい苦しんでください」
ローズが軽く手を振った、次の瞬間……
ビリッ!
「ひっ」
「うっ」
体に電気が流れてきた。
それも結構強い。
「うっ、あ……」
「くっ……」
「……魔導士の体って一般人よりもかなり頑丈にできてるんですよ。ちょっとやそっとのことじゃ死なない。それに、ほとんど老いていかない。あ、これは、私の研究の成果なんですよ♪」
「あ、あ……」
「うっ……」
俺達が聞こえていようがいまいが関係なく、ローズは説明を始めた。
「実はね、魔導士ってずいぶん前からいたんですよ。私はその1人。何人かの仲間とこの"ノワール"を設立して、水面下で活動を続けて仲間を増やしました。おかげでこんなに大きくすることができました。たまに嘘をついて仲間になろうとしてくる輩もいましたけど、魔法の前には無力ですからねー。記憶を消して、強制送還しました」
ローズはもう1度手を振った。
バチッ!
「うあっ!」
「くっ!」
電気の威力が増す。
「ああ、ついでにあなた方の魔力もある程度吸い取らせてもらっていますよ」
意識が飛びそうになる。
「さて、とりあえず目的は大体達成しましたし、あの学校に用はありませんねー」
「な、にを、す、る、つも、り……?」
愛が声を絞り出すように言う。
「ん?まだ声出せるんですか。まあ、確かに愛さんは魔力高いですもんねー。……まあいいです。教えてあげますよ」
ローズは不敵な笑みを浮かべてこっちを見た。
「私の使い魔達と仲間を送って、あの学校を壊滅させます。でも、ただ壊すだけじゃつまらないので、魔導士達から魔力を奪って、それから壊しますけど。……まあ、魔導士になってしまったことが運の尽きだったんですよ」
俺達はもう声を出すこともできそうになかったが、ローズは話し続ける……。