38話
それからまた一月経った。
今は12月。
外は冬景色となり、葉の落ちた枝には白い雪が積もっている。
制服も冬仕様となったそんなある日。
俺と愛は生徒会の仕事、というか雑用で暗くなってから寮に帰ることになった。
足元もよく見えず、風が冷たい。
ふと、一際強い風が吹き、目の前に人影が現れた。
「……誰だ?」
俺達は杖を構えようとした、ができなかった。
体が動かない。
「なっ……」
「嘘……」
人影が口を開く。
よく見ると、人影は2人いるようだ。
「……手荒な真似をすることをお許しください。お2人には我々と共に来ていただきます。……失礼」
と、体が抱えあげられる。
声は中性的で男か女かの判別はできない。
人影はマントのようなものを着ていて、コウモリのような羽を広げた。
……俺達はなんとか口だけは動かせるようだ。
「吸血鬼か?」
「ええ。……あなたがたの血は吸わないように言われているので、ご心配なく」
俺と愛の両手に輪がかけられ、魔法が使えなくなった。
以前愛がされていたものと同じものだろう。
「余計なことはなさりませんよう。あなたのパートナーに危害が及びます。私共としても、そのようなことはしたくありませんので」
……俺は叫ぼうとした口を閉じた。
(この距離なら聞こえると思ったんだがな……)
抵抗する術をなくして俺達はされるがまま、吸血鬼に連れていかれる。
「目的地は」
「ローズ様のところです」
「目的はなんだ」
「お2人の勧誘だそうです」
「俺達をどうするつもりだ」
「私にはわかりかねます」
「俺達の身の安全の保障は」
「お2人次第です」
「戻れるのはいつだ」
「それもお2人次第です」
俺はできるだけ情報を聞きだそうと思ったが、既知のものしかでてこない。
これ以上は無意味だ、と俺は大人しくすることにした。