32話
そして学校祭当日。
ステージで初等部から順に発表していく。
発表しない人や、発表が終わった人は教室での発表に切り替えていくシステムだ。
初等部の発表内容は魔法をふんだんに使ったパフォーマンス。
キラキラと会場を飛び回る魔法はとても幻想的だった。
中等部の発表内容はダンスと音楽の融合。
魔法を効果的に使い、アクロバティックな動きも難なくやって見せていた。
どちらも相当練習したのであろうことが窺える。
そしてとうとう、高等部の発表。
皆かなり緊張しているようで、その中でも特に主役の愛は人一倍不安そうだった。
俺はそのことに気づき、愛の頭にポン、と手を置いて
「俺らはたくさん練習してきたんだ。大丈夫、絶対成功する」
「……はい!」
そうして、高等部の発表が始まった。
「シンデレラ!掃除と洗濯、皿洗いを早く済ませなさいな。それが終わったら料理をして、食堂に運びな!」
「はい、お母様。すぐにやります」
……見ていて胸が痛くなるようなシーンがたくさんだが、あくまでこれは劇だと自分に言い聞かせる。
「ねぇ!お母様ー!舞踏会の招待状が来てるー!」
「王子様が帰ってくるんですって!」
「まあ、本当かい?だったらすぐに準備をしなくちゃね。……シンデレラ!私と娘達のドレスアップを手伝いな!もちろん、お前は留守番だよ」
「……はい、お母様」
……ボロボロの服を着て、健気に手伝うその姿を見るといたたまれなくなる。
そうして継母と姉達が馬車に乗って城に行ってしまうと、照明が落とされてスポットライトが愛に当てられた。
「ああ、私も舞踏会に行ってみたい。でも……」
愛がポロポロと涙をこぼす。
「……おやおや、シンデレラ。泣いてはせっかくの綺麗な顔が台無しだよ?」
そこで、すかさず魔法使いが登場。
「……あなたは?」
「私は魔法使い。心優しいあなたを舞踏会に行かせてあげよう」
「そんなことができるんですか?」
「もちろん。……それ!」
藤井が杖を振ると、例のカボチャの馬車が現れ、キラキラとしたエフェクトと共に愛があのドレス姿へと変わる。
「……これが、私?」
「そうだよ。さあ、馬車に乗ってお行き。でも、忘れないで。魔法は12時になったら解けてしまう。それまでに戻ってくるんだよ」
「わかりました!ありがとう、魔法使いさん!」
暗転。
(……さて、俺の出番か)
セットをダンスフロアに変え、中央よりかは少し横にずれて立つ。
明転。
各々好きなドレスに着替えた女子達が俺の前に一礼して、下がっていく。
そこに、おずおずと愛がステージ上に現れた。
俺は愛のもとに歩み寄ってその小さな手を取り、ダンスフロアの中央へと誘った後、ダンスの準備。
愛の右手と俺の左手を繋ぎ、俺は右手を愛の腰に回して引き寄せ、愛は残った左手でドレスの裾を持った。
魔法で楽器が操作され、ゆったりとした音楽が流れる。
そうして、俺達は音楽に合わせて踊り始めた。
さんざん練習してきたおかげで、体が自然と動く。
2人で互いを見つめながら踊り続けた。
……突然思った。
愛しい、と。
守りたい、助けたい、ではなく、愛しい。
初めて感じたこの感情に内心動揺が走るが、理由はすぐにわかった。
(……俺は、愛のことが好きなんだ)
実感すると同時に、この時間が続いてほしいと願ってしまう。
でも現実は物語のように残酷で……。
12時の鐘が鳴り響く。
自分の腕の中にいたプリンセスは慌てたように走り去ってしまった。
俺の目の前にガラスの靴の片方を残して。
物語の中の王子の気持ちが痛いほどよくわかる。
俺はガラスの靴を拾い上げ、舞台から去った。




