31話
翔side……
(まさか王子役とは……)
周りの男子から着せ替え人形のように扱われた結果、衣装が決まった。
白ベースの服にきらびやかな飾りをつけて英国風に仕上げられ、どこからどう見ても王子。
ため息をつきそうになる。
丁度そのとき、女子の衣装決めが終わったようで、教室に入ってきた。
何人かが入ってきた後、愛が入ってくる。
……正直、動揺した。
自分よりも20cmほど小さいその体に似合う、可愛らしくも綺麗なドレスをまとい、シンデレラ特有のガラスの靴の音を響かせながら入ってくるその姿は、本物のプリンセスのよう。
周囲も浮ついた様子で、ぼんやりしている。
俺の目の前に来て一礼した愛を見て、1つ気づいた。
「愛、その目は……?」
「あ、これですか?ドレスに合わせて目の色を変えたんです。もう色は戻せませんけどね」
「……俺も、その色に変えよう。その方がこの服も似合うだろうし」
実際、その目を見たときは驚いたが、愛と同じ色にしたいと思った。
……なぜかは知らない。
そうして、俺も目の色を変えてもらった。
「あ、それと……。愛、よく似合ってる」
そう言うと、愛はニッコリと笑って、
「翔さんも。すごく似合ってますよ」
と言ってくれた。
その後、セリフを合わせたり、舞踏会のダンスの練習だったりをして、時間を過ごす。
セリフ合わせでは、最初はなかなか覚えられなかった人もいたが、繰り返しやることによって、感情面まで気を配れるようにまでなった。
1番苦戦したのはダンス練習。
なにしろ1番注目される場面だけに、失敗はできない。
しかもダンスということは必然的に密着する形になり、そっちの面でも緊張が走る。
リードしなければいけない立場だから、やれることはやったつもり。
できれば魔法は使わないで、自分の力で成し遂げたかった。
そのおかげか、自然と体が動くようになるまで上達したと思う。
学校祭が近づくにつれて校内も賑やかになり、毎日を平和に、幸せに過ごせるようになってきた。
そして高等部は通し練習を繰り返し、もういつやっても問題ないほど、劇は完成。
あとは、発表するだけだ。