30話
愛side……
10月になった。
暑さは和らぎ、すごしやすい季節。
そんな時期、この学校にも学校祭というものはあるらしい。
林先生の説明によると、初等部、中等部、高等部、社会部別に魔法を必ず使って出し物をするのだという。
種類としては、装飾とステージが絶対で、開閉祭式と出店は自由。
開催する目的は、魔法のことを国民に理解してもらうため、らしい。
クラス内で装飾を分担し、ステージ発表の内容を決めることに。
ちなみに、私と翔さんは教室に戻ることになった。
清水詩先輩がしたことは、私と翔さんと林先生しか知らない。
そのほうが皆のためにいいと私が提案したから。
そうして話し合いの結果、演劇でシンデレラをやるということになった。
華やかで、かつ魔法を使う場面があるから、だという。
役決めでは、なぜか満場一致で私がシンデレラ役を、翔さんが王子役をすることになった。
翔さんはしぶしぶの承諾だったけれども。
そして衣装決めをすることになり、女子と男子に分かれて決めることに。
あの後、明ちゃんや詩先輩とはきちんと仲直りして今では親しい友人になれたと思う。
明ちゃんは魔法使い役を志願し、早々と衣装を決め終わっていた。
「愛の衣装、どうしよっか?普段のみすぼらしいやつはすぐに決まったけど……」
「うーん……。やっぱりシンプルだけど華やかなほうがいいよね?」
「そうだねー」
「あれー?まだ愛ちゃんの衣装決まってないのー?」
詩先輩は姉役になっていて、こちらも衣装を決め終わっており、とても綺麗な暖色のドレス姿で話しかけてきた。
「じゃあ、詩先輩は愛にどんなドレスが似合うと思います?」
「そうだねぇ。清楚な感じのパステルブルー系はー?白だとウェディングドレスっぽくなっちゃいそうだしぃ?」
「そうですね!愛、やってみよっか?」
「うん!」
……私は、先輩を信頼していることに気づいたおかげで、他の人も信じられるようになっていた。
そうして製作魔法を使い、試行錯誤しながらドレスを作る。
結果、シンプルかつ華やかなものができた。
ウエストで大きめのリボンを結んで結び目を後ろに回し、そこから下を軽くふくらませ、そこに小さな宝石を散らす。
下の生地はレースのように柔らかくし、胸元は少し大胆に開けた。
(胸元は反対したんだけどなー……)
そして開けた胸元に大きめのアクアマリンのネックレスをつけ、セットした髪にティアラを乗せて完成、かと思いきや詩先輩が……
「……なんか違うー」
「え?」
私は素でびっくりした。
ドレスはとても素敵だと思うが……。
「愛ちゃんと、そのドレスがちょっと合わないかなぁ?」
「うーん……確かにね」
「えー……」
「たぶんねー、瞳の色が黒だからじゃないー?」
……確かに私の目は真っ黒だ。
「あ、それならさ、魔法で色変えられない?」
という明ちゃんの提案に賛成し、図書室の本で調べてきてもらうことに。
そして明ちゃんは1冊の本を手に戻ってきた。
「えーと、あるにはあったんだけど……」
「どうしたの?」
「……これ、1回色変えたらもうそれ以外には変えられないんだって。つまり、もう元には戻せない」
「……私は全然いいよ」
「え、いいの?」
「うん」
私はそこまで躊躇しなかった。
これまでの疑心暗鬼な自分と決別し、人を信じられる新しい自分になろうと思ったから。
「あ、あとこれ、自分じゃかけられないみたい」
「じゃあ、私はダメなんだね」
「詩もダメー。詩、魔法苦手すぎるからー」
「じゃあ……私がするね?」
「お願い」
そして、明ちゃんが本を見ながら呪文を唱える。
「……チェンジ」
鏡を見ると、瞳の色がブルートパーズの色になっていた。
「……愛、成功してる?」
明ちゃんが不安そうに聞く。
「うん、大成功。視力も問題ないよ」
「よ、よかったー……」
「……思ったんだけどー」
「「?」」
「カラコン、使ったらダメだったのー?」
「……あ」
「……で、でも私、コンタクトしたことなくて怖いから、これでよかったんだと思う」
「……ふーん、そっかぁ。じゃ、いっかー」
目の色を変えてからもう一度衣装と合うか確認。
「すごーい!ぴったりじゃないー?」
「本当!可愛いよ!」
「あ、ありがとう……」
いきなりの2人のテンションの高さに困惑したけれど、衣装が決まった。
そして、割れないように魔法をかけたガラスの靴を履き、男子と衣装合わせをするために教室へと向かった……。