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恋の魔法、学びます。  作者:
もう1つの思惑
30/48

29話

愛side……

とても怖かった。

先輩が来てくれなかったら、私はどうなっていただろうか。

……考えたくもない。


あれから数日して、結局教室には戻れず、もうしばらく生徒会室で過ごすことになってしまった。

あんなことがあったから、当たり前なのだろう。

もう明ちゃんのことは許しているので、私としては、いつ教室に戻ってもいいのだけれど。

先輩にそれを言ったら反対された。

心配してくれてるのだろうか、それが嬉しく、こんなときでも幸せを感じてしまう。

不思議。


先ほど先輩が林先生に呼ばれて行ってしまっていたので、私1人で生徒会室にいる。

すごく心配そうな顔をしていた先輩の背中を押して行かせなければならなかった。

コンコン、とノックの音がする。

「はい?」

ドアが開き、入ってきたのは清水先輩。

「あれぇ、1人ー?」

「はい、そうですけど」

「この間はごめんねー?愛ちゃんを詩が呼んだせいで、あんなことになっちゃってー」

「いえ、先輩のせいじゃないです。気にしないでくださいね」

「そぉ?ありがとー。それでさ、1つお願いがあるんだけど」

「なんですか?」

聞いた途端、清水先輩が私を床に押し倒した。

(え?)

首に手がかけられ、体重がかかってくる。

まさか、と思うと、

「死んでほしいの。邪魔なの。……アンタさえいなければ、詩は幸せに……」

と、清水先輩が言うのが聞こえる。

「うっ……あっ」

苦しい。

なんとか手をほどこうとするけれど、離れなかった。

魔法を使おうにも、痛みと苦しさのせいで、集中できない。

「魔法を使うと、カメラに気づかれるかもしれないからさ。ちょっと苦しいけど、我慢しててねー?」

意識が遠くなる。

「いっ……や」

「んー?何か言った?」

(もう……ダメ……)







ドン!

大きな音と同時に、体の上から重さが消え、息ができるようになる。

「けほっ……は、あ……」

なんとか肺に空気を入れた。

何が起きたかを確認すると、私の横に清水先輩が倒れていて、ドアの前には先輩が立って杖をこちらに向けている。

(ああ……また助けてもらったんだ)

「愛」

「けほっ……。翔、さん」

無意識に名前を呼んでいた。

起き上がれない私を抱きかかえてくれたので、それに甘える。

「怖、かった……」

何よりも恐怖が大きくて、私は思わず翔さんに抱きついていた。

泣きそう。

翔さんは私にだけ聞こえる声で、

「もう大丈夫だ。愛は俺が守る」

と言ってくれる。

翔さんは杖を清水先輩に向けたまま、

「……なぜこんなことをした」

と、今まで聞いたことのない怖い声で聞いた。

「……あなたのことが好きなの。あなたを私だけのものにしたかった。そのためには……その子が邪魔だった。だから、協力してくれる人を見つけて誘拐させた。……させようとした。少しの間、消えててくれれば良かった。あなたが私のものになったら、ちゃんと解放するつもりだった。……それくらい、あなたを愛してるの」

清水先輩は起き上がってうつむきながら告白する。

「……俺はお前を許さない。たとえ愛がお前のことを許しても、お前が愛にしたことは消えない」

翔さんはそれに対してはっきりと自分の意思を伝え、清水先輩はそれから動くことはなかった。

よく見ると、清水先輩の目からは涙が流れている。

私には清水先輩がそこまで悪い人だとは思えなかった。


「さあ、行こう」

私は翔さんに連れられて寮の翔さんの部屋へ行き、私はずっと聞きたかったことを聞くことにした。

「……翔さん」

実際、名前を呼ぶというのは恥ずかしいものだが、今更戻すわけにもいかない。

「ん?」

「翔さんはどうして、私を助けて守ってくれるんですか?」

「……長くなるが、いいか?」

「……はい」

そう言って、翔さんは自分の過去について話してくれた。

それを聞いて、なぜか私は幸せを感じている。

(……私のことをこんなに信頼してくれてることがわかったからかなー)

そして、私も翔さんを心の底から信頼していることに気づいた。

「もう、1人で悩まないでくださいね」

「……ん。わかった」


私は、清水先輩を許すことにした。

なんとなく、清水先輩だったらさっきみたいに直球で向かってくるような気がするから。

つまり、最初の誘拐は清水先輩らしくなく、誰かが裏にいるかもしれないなと思った。

(だから、もう大丈夫)

それを翔さんに言うと、

「……本当に、愛は優しいのか、お人好しなのか……」

と、苦笑いされてしまった。


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