2話
「先輩……」
桜原が言うと、また「声」が聞こえた。
『リミッターを解除しなさい』
「「リミッター?」」
桜原にも「声」が聞こえているらしい。
また「声」が言う。
『翔。愛の手に口づけを』
俺は「声」が言うとおりにする。
「桜原。手、借りるぞ」
「……はい」
桜原は立ち、俺はひざまづいて彼女の手の甲に口づけを落とした時だった。
ドン!
と音が聞こえたような、そんな気がしてふと見ると、俺と桜原を囲むように、魔法陣が敷かれていた。
『桜原愛、萩田翔をパートナーとして、ここに証明し、力を解放する』
また「声」が言う。
『2人を国立魔法学校の生徒として、登録する。速やかに学校へ移動せよ』
「声」が消え、魔法陣が発動。
俺は立って、桜原の両手を握って見つめると、桜原も同じように俺を見つめてくる。
すると、今着ている制服が変わった。
桜原の制服は、セーラータイプからブレザータイプに。
水色ベースのチェックスカート。
ブラウスは角襟の白。
上着はネイビーのロングジャケットで、下の方に金のボタンが二つ。
胸元には赤いリボン。
そして左耳には薄桃色の水晶のピアスがついている。
俺の制服は、学ランタイプからブレザータイプに。
水色ベースのチェックズボン。
シャツも上着も彼女と同じだ。
胸元には緑のネクタイ。
俺には右耳にピアスがついている。
2人ともピアス穴は開けてはいなかったが、自動的に開いたらしい。
桜原のミディアムの髪と俺のショートの髪は黒だが、微かに藍色に光っている。
「桜原、行こう」
「はい」
2人で窓の方へ歩いていくが、そうしてやっとここが教室であることを思い出した。
先生も桜原のクラスメイトもざわざわと落ち着かないし、よく見ると、いつのまにか俺のクラスメイトや他クラスの奴まで来ているようだ。
説明をする意味で少し声を張り上げて言う。
「先生、俺たち、魔法学校に転入します」
「……な、何を言って……」
『内ポケットにある入学証明書を2人とも置いていきなさい』
「声」が言い、俺と桜原は窓際に立って内ポケットから封がされた封筒を取りだし、窓のそばに置いた。
「これが証明書です。もう行かなければなりませんので、では」
「ちょっ、待ちなさい!」
不思議と魔法学校への行き方も、場所もわかる。
「「エンチャント」」
2人で言ったとき、背から純白の翼が生えた。
そのまま窓を蹴って飛び出す。
快晴の青い空に、白い翼。
俺と桜原は新しい世界へと飛び出したのだ。
魔導士として覚醒し、胸を期待に染めて。