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恋の魔法、学びます。  作者:
もう1つの思惑
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26話

両手に金属でできているような感じの輪がはめられると、同時に布で口もふさがれた。

何故か、魔法が使えない。

(どうしよう……!)

魔法が使えない、ということは今の私には致命的であり、明らかにまずい状況。

自分よりもはるかに体格の良い男達に私はなすすべもなく、精一杯抵抗しても、意味がなかった。

体を抱えあげられて車の中に連れ込まれ、抵抗しても、抵抗しても、無駄だった。

男達の顔はわからない。

マスクで顔を隠しているから。

とにかく、唯一自由な足を暴れさせて、男達を遠ざける。

するとドアが閉められ、私はさらに焦った。

このまま動き出してスピードが出てしまったら、逃げ出すのは困難になると、感覚でわかった。

何とかドアのそばに移動し、ドアを開けようとするが、男の1人に体を押さえられ、身動きが取れなくなる。

他の男の1人が刃物を取り出し、私は恐怖に震えた。

でも、動きを止めたら、相手の思う壷だと思い、私はなおも抵抗した。

すると、刃物が私の体をかすった。

(痛っ!)

制服が切れて、血がにじむが軽い傷なら後で回復できる。

そう思い、さらに抵抗。

だが、抵抗すればするほど、体にも顔にも傷は増えた。

今度は殴られ始め、制服も体も傷だらけ。

(せっかく、綺麗になれたと思ったのに……)

「頼むから、大人しくしてくれ。アンタをしばらく預かるだけだからさ。ただ、俺達はな……」

なんて言葉が耳に入ったが、信用はできない。

渾身の力をこめて、体をねじるとその瞬間に、男の手から解放された。

その隙に、後ろ手でドアを開け、体を外に投げ出す。

車はいつの間にか動いていたようだが、それほどのスピードではなかったようだ。

それでも、私の体は道を転がる。

「ごめんな……」

そんな声が聞こえたかもしれない。

私は受身もろくに取れず、体の痛みは増した。

「けほっ、けほ。……はあ、はあ」

少し咳き込み、息を切らしながら周囲を確認すると、学校からそう遠く離れてはいないようだ。

少しホッとするが、中途半端な時間のせいか、人の気配はない。

痛みと恐怖がよみがえる。

いまだに拘束されている手とふさがれている口が生々しく、恐怖を増長させた。

(怖い……助けて……)

ただ震えることしかできなく、足には力が入らなかった。


すると……。

「愛!」

(え……?)

彼の声が聞こえ、そうしてまもなく体が優しく抱きかかえられる。

「……アンロック」

おそらく本で読んだのだろう呪文を唱えたとき、パキン、と音を立てて輪が外れた。

「どうして……?」

萩田先輩だった。

「説明は後だ。今は何よりも愛の体が心配だ」

言いながら、着ていた上着を脱いで私に着せてくれる。

そして私を横向きに抱えあげ、学校へ歩いていった。

人の腕の中がこんなにも安心するものだとは知らなかった私は心から安心して、先輩の腕の中で意識を手放す……。


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