21話
翔side……
ここのところ最近、桜原の様子が変だ。
顔色が悪く、体も少し震えている。
具合が悪いのかと聞いたところ、何でもないと言われたが、何でもないわけはないと思い、注意深く見ることにした。
すると、いくつかのことに気がつく。
1つ目に、友人達から無視されているということ。
2つ目に、魔法学の時間に明らかにわざと攻撃をされているということ。
教師は気づいているのかいないのかわからないが、これは許されることではない。
「桜原」
「は、はい」
「今日の放課後、ちょっと生徒会室に来い」
「?はい」
放課後、生徒会室が空になることを俺は知っていた。
そして放課後……。
「先輩、どうしたんですか?」
「……率直に聞く。桜原、お前いじめられてるだろう」
「え?いや、そんなことは……」
「あるだろう?」
「……」
「……はあ、桜原、迷惑とか考えてないか?もしそうなら、今更だ。俺はお前が心配なんだよ。……俺を頼ってくれよ」
桜原の目が潤み、ポロポロとこぼれだした涙に焦ったが、冷静にそれを拭う。
「……我慢しなくていい」
「うっ……」
両手を顔に当てて声を抑えながら泣く姿がいたたまれなくなった。
「……え?」
俺は桜原の頭を撫でた。
「……大丈夫だ。お前は何も悪くない。俺がお前を支える」
「うっ……うああ……」
桜原は俺に体を預けて、子供のように泣き出す。
そうして落ち着いた頃、俺は気になっていたことを聞いた。
「なあ、どうしてあんなに必要以上に怯えていたんだ?」
「……実は、K高校にいたときいじめられてて……」
桜原は苦しそうに話し始め、それらは今まで知らなかったが、なんとなくわかっていたことでもあった。
「……そうか。辛かったな。もう、大丈夫だからな」
「はい……。ありがとうございます……」
「とりあえず、今日はもう帰ろう。日も暮れてきた」
「……」
「桜原?」
「私……帰りたくない……」
「え?」
「あの家には、帰りたくない……」
「……どういうことだ!?」
桜原は、家庭のことも話してくれた。
「……そうか、じゃあ寮で暮らせばいい」
「でも……!」
「桜原。それは愛されてるんじゃない。いいように使われてるだけだ」
「……」
「明日からでも、寮で暮らそう。幸いにも、部屋は余っているらしいしな。今日は帰って、荷物をまとめて、明日学校に持っておいで。先生に話して、寮で暮らそう」
「はい……」
「よし」
それから、俺は桜原を家まで送り、それから帰寮。
(明日はやることが沢山あるな……。でも、なんだか幸せな気分だ)
そう思いながら、目を閉じた。