20話
次の日。
今日は珍しく遅めに学校に着いた。
出掛けに家族と少し揉めていて、結局私が折れたのだけれど。
教室に入ると、泣き声が聞こえてきた。
見ると、明ちゃんが泣いている。
「ど、どうしたの?明ちゃん」
私が明ちゃんをのぞき込むと、バシッ、という音がした。
直後、頬を殴られたのだとわかる。
「……サイテー」
「え……?」
周りからヒソヒソと声が聞こえてくる。
「明の好きな人盗ったんだってー」
「えー、友達なのに最悪じゃん」
「明ちゃん、可哀想……」
「ちょっと成績いいからってね……」
顔から血の気が引いたがとりあえず、着席。
(頬が熱い……)
「ウォーター、ヒール」
水属性魔法で冷やし、その後回復魔法をかける。
傷は治ったが、心の痛みはなくならない。
(どうしよう……)
よりにもよって、今日はあの悪夢で目が覚めた日。
その日の授業で小さな嫌がらせが続くが、基本的には無視する。
それが1番良いとわかっていた。
魔法学の時間には、製作魔法を使っているときに属性魔法を何度も当てられる。
本人達は手が滑ったとか言っていたけれど。
(もう嫌……)
ものすごく怖かったけれど先輩には知られたくなかった。
だから何でもないように振舞うも、心が悲鳴をあげている。
その日の放課後、明ちゃんを見た。
誰か知らない人と話していたが、私はすぐにその場を去る。
明ちゃんやクラスメイトに告白は断ったと説明したが、無駄だったから、会わない方がいいと思った。
図書室にも行けなくなった。
明ちゃんがいるから。
私が目の前にいると傷ついてしまうから。
だんだんと嫌がらせはエスカレート。
当てられる魔法の威力は上がり、常に防御に気を配らなければならなかった。
時には召喚された魔法生物に攻撃されることも。
(怖い……でも、どうしようもできない……)
あのときのイジメの記憶が蘇り、体が震える。
私はもう、どうしたらいいかわからなくなった。