1話
6月。
とある市にK高校という高校がある。
そこには現在2年生の桜原愛という女子がおり、クラスでは倫理の授業が行われていた。
「そういえばみんな、知ってるか?今日の午後2時、つまりもう少しあとに政府が魔導士を見つけだすために怪しい儀式をするっていう話」
クラスがざわつく。
「もしかしたら、このクラスから魔導士が見つかるかもなー?」
教師は笑いながら言うが、自分には関係ないこと、と愛は思っていた。
そしてもう1人、3年生に萩田翔という男子がおり、今は現代文の授業中である。
翔は社会的な問題には詳しいので、儀式が行われることも知っているが、自分には関係ないだろう、と翔も思っている。
このときまでは、2人ともこの平凡な時間が続くと思っていた。
しかし、午後2時。
それは唐突にやって来る。
愛side……
突然のこと。
自分としてはかなり好きな部類に入る倫理の授業で、クラスも特にいつもと変わりなく、普通の日常を過ごしてたのに……。
「……っ」
頭痛だ。
これは今までもよく起こっていたから、特に気にもとめなかったけれど、今回のはいつもとは違う。
どんどん激しくなる頭痛。
これはさすがにダメだと思ったとき、ふっ、と意識が遠くなるのを感じる。
え、と思う間もなく、私は倒れた。
時間はそんなに経たずに目を覚ますが、それに気づいた先生がこちらに来る。
どうやら、勢い余って椅子から落ちたようだ。
「桜原、大丈夫か?」
はい、と答えようとしたが、それよりも先に、頭に「声」が響く。
『出会いなさい。あなたのパートナーのもとへ行くのです』
「パートナー……」
思わず口をついてでるその言葉。
「桜原?どうした、大丈夫か」
先生は声をかけてくるが、教室の外から足音が聞こえてきた。
「桜原!」
彼の声。
私が今、この世界で最も信頼をよせる相手によって次の瞬間、教室のドアは開かれた。
それが始まり。
翔side……
……時間は少し前に戻り……
日常を過ごすことは当たり前のことだが、いつそれが変わるのかは、誰にもわからない。
今がそうだ。
「……」
頭痛がするが珍しいことでもない。
だが······。
「痛い……」
そう口に出すほどの痛みがあるが、保健室には行きたくないから、我慢する。
ガタッという物音がした。
それは自分がたてた音だと気づくまでに数秒。
さすがの痛さに椅子から落ち、そのときの音のようだ。
「萩田?」
先生が聞いてくる声に大丈夫です、と言おうとしたが、「声」が聞こえてきた。
『出会いなさい。あなたのパートナーのもとへ行くのです』
すると、パートナーの居場所がなんとなくわかり、すぐに行かなければならない、と無意識に感じて教室を出た。
先生やクラスメイトが呼び止める声が聞こえたが、無視して1つ上の階へ上り、目的の教室へと向かう。
彼女を迎えにいくために……。
「桜原!」
呼びながら、教室のドアを開けたとき、教室の床に座りこんでいる彼女の姿が見えた。
これが始まり。