17話
私は高1のとき、イジメに遭っていた。
原因は友達の好きな人の好きな人が私だった、というだけ。
私は別にその人に恋愛感情はなかったのだけれど、それは別らしく、友達だと思ってた子に次々と裏切られた。
……とても悲しかった。
最初はクラスの雰囲気だった。
どうやら彼が私に告白したことがクラスに広まったらしい。
友達が泣いていて、周囲がそれを慰めている。
私は告白を断った、と言ったけれど、まともに聞いてはもらえなかった。
それからは地獄の日々。
登校すれば自分のものが消えている。
それに慣れ始めると、物が飛んでくるようになった。
いつのまにか私は痣が絶えない体に。
でも見事に顔だけは傷つかなかった。
自分で庇っていたのもあったけれど。
それからエスカレートするのは早かった。
トイレに呼び出され、拒否するとイジメが酷くなりそうなので行くと、水をかけられる。
授業に出られるはずも無く、空き教室にずっといた。
もちろん誰も探しには来てくれない。
今度は直接暴力が振るわれ始める。
頭は守ったけれど、その代わりに腕がボロボロになった。
学年が変わっても、イジメは終わらなかった。
私は教室から逃げるように図書室に行った。
本だけが救いだった。
教師には言えなかった。
言うともっとひどい目にあう、そんな気がした。
実際、教師は知っていたのかもしれないけれど。
そして図書室で出会ったのが萩田翔先輩だった。
イジメの最中に家族が死に、身も心もボロボロだった私と、たくさん話をしてくれる人。
私は暇さえあれば、図書室に行くようになった。
教室ではほとんどまともに勉強できないので、図書室と家での勉強が主体になる。
先輩にはイジメのことは気づかれないようにした。
心配をかけたくなかった。
迷惑をかけたくなかった。
聡い先輩のことだから、少し感じてはいたのかもしれない。
でも、イジメがあることを私に確かめることもなく、毎日を過ごしていた。
私の心が大分落ち着き、クラスも大人しくなって、やっと教室に戻れたのだ。
そんなときに、魔導師として覚醒し、今私はここにいる。
……今でもまだ昔のことを夢に見て、目が覚めることがある。
そんなときは一晩中体を抱えて震えているしかできない。
涙を流すこともあったけれど、極力泣かないようにした。
目が腫れてしまっていたら、バレてしまうから。
先輩が大切だからこそ、離れてほしくなくて、何も言えなかった。
ただの私のワガママだということはわかってはいたけれど。