16話
愛side……
全てのペアの実戦が終わり、今日の授業はこれで終了となる。
「授業はこれで終わりだが、皆に決めてほしいことがあるんだ。この学校にはいくつか組織がある。生徒会、図書、文化、保健の4つをそれぞれ誰がやるかを決めてほしい。生徒会は他の組織と兼任が可能だ。……ああ、それと、生徒会には桜原と萩田に入ってもらおうと考えているんだが、どうだ?」
皆が賛成するような声をあげた。
「よし、じゃあ、明日の朝希望を聞く。それまでに決めておけ。それぞれの組織には2人まで入れるからな。じゃ、気をつけて帰れよ」
と、先生が言い終わると、教室がざわつきだす。
見ると萩田先輩が先生のもとに行き、話していたので、なんだろう、とは思いつつも明ちゃんが話しかけてきたので意識を向ける。
「ねえ、愛ちゃん。図書、一緒にやらない?」
「え?でも私、生徒会に入っちゃったし……」
「でも、生徒会って兼任可能だってさっき先生言ってたしさ。ね、一緒にやろうよ?」
「ええと……」
「私1人じゃ嫌だし、どうせなら知ってる人と一緒にやりたいし?」
「……う、うん。わかった……」
「本当ー!?ありがとう!じゃあ明日ね!」
と言うが早いか、明ちゃんはすぐに教室から出ていった。
「桜原」
突然声をかけられ、少しビックリした。
見ると、萩田先輩がいる。
「な、何ですか……?」
「桜原、また安請け合いしただろう?」
「う……」
「……大丈夫なのか?無理はするなよ?」
「は、はいっ!大丈夫です!」
笑顔を作って先輩を見る。
「……桜原の"大丈夫"は信用できないんだけどな……」
「え?」
「いや、なんでもない。……図書室に寄って、帰ろう。本を戻さないと」
「ああ、そうでしたね」
2人で本を運んで図書室へ行き、返却手続きをしてから返却棚に置いておいた。
昨日と同じように魔法車に乗り、帰宅。
「そういえば、さっき先生と何話してたんですか?」
「ん?ああ、寮に入ろうかと思ってな。今の家からここまでは遠いからな。桜原は入らないのか?」
「私は魔法車を使えば早いので、大丈夫です」
「そうか」
それから他愛もない話をしていると、時間は早く過ぎるもので……いつのまにか、家に着いていた。
「……じゃあ、先輩。また明日」
「ああ、またな」
降りたくない気持ちを抑えて車を出た後、魔法車が行ってしまうと、そっとため息をつく。
憂鬱。
ここの家族は、私の本当の家族ではない。
本当の家族は、去年交通事故で死んでしまった。
祖父母も既に他界し、親戚もいないため、この家族に引き取られたのだ。
でも、他人の私を育ててくれているので、とてもありがたいと思ってはいるんだけれど……。
「……ただいま」
「やっと帰ってきたね。早く夕食を作ってよ」
母が言う。
「はい……」
……いつものことで、平日は朝食と夕食、洗濯は私の役目。
休日にはこれに加えて昼食や掃除などもやる。
(育ててもらっているんだから……)
私はお金を家に入れることはできない。
今まで通っていた高校はバイトは一切禁止だった。
だから、家の仕事は私の役目で、私にとってはこれが当たり前なのだ。
……夜遅く、勉強をする。
この時間だけが、私が自由になれるとき。
でも、1人になると辛い記憶ばかり思い出してしまう。
そんな自分が、私は嫌いだ。