11話
「さあ、話を止めてこっちに集中しろよー。今日は説明と実習を交互にやるからなー」
と、先生が言う。
「さて、まずは2年生の桜原愛!普通科目2位と魔法学1位おめでとう!」
先生の拍手につられるように他の生徒も拍手をするのでちょっと恥ずかしく、昨日と同じようにお辞儀。
「そして、3年生の萩田翔!普通科目1位と魔法学2位おめでとう!」
また拍手がされ、先輩は無表情に軽く頭を下げた。
「私は嬉しいよ。高等部が1位と2位を独占したんだ!……まあ、もともとの能力だから、私は関係ないんだがな」
笑いが起こったので、私もあわせて少し笑った。
「さて、これから皆にはまずやってもらいたいことがある。それはバディ決めだ」
昨日読んだ規則に書いてあった"バディ"だ。
「バディとは、魔法学のときに互いを助け合うペアのようなものだ。もう既に"パートナー"としてできている者もいるみたいだがな」
ざわっ、と生徒が周りを見回す。
「おそらく皆の中に、片耳にピアスをつけている者がいるだろう。それは魔水晶のピアスで、女子は左耳に、男子は右耳につけられるんだ。"パートナー"として認証されたときに自動的にな。ペアごとに色が異なり、さらに"パートナー"と一緒にいると魔力が安定する」
私はそっと自分の左耳のピアスに触れた。
不思議とこれを触っているときは心が安定するような気がする。
「確か私の記憶だと……桜原と萩田はもう"パートナー"になっているはずだな」
一斉に生徒の目線がこちらに向けられる。
注目されることに慣れていない私は、体をできるだけ小さくしようとするが、無駄だ。
「先生、これのことですか?」
と、先輩が自分の右耳のピアスを皆にも見えるように示す。
「そうだ。それは絶対に盗られるんじゃないぞ。とは言っても、そのピアスはそうそう取れないがな」
先生は笑いながら言うが、笑えるようなことなのか……。
「さて、バディ決めだが、とりあえず"パートナー"は前に来てくれ」
私と先輩が立ち、先生の方へ歩いていくが、他に"パートナー"はいないようだ。
「よし、コントラクト」
先生が唱えると先生の杖の先からいくつもの光の線が飛び出し、その光の線は教室内の人と人を結びつけた。
「さて、光が結んだ生徒と生徒はそれぞれ集まってくれ」
生徒が移動してペアを作ると、先生が杖を振る。
「サモン」
すると、それぞれのペアのところに紙が出てきた。
羊皮紙のように見える。
「それは契約書だ。とは言っても、堅苦しいものではない。魔法の一種で、その紙に色々と記入する欄があるだろう?そこに名前と取引するもの、今回は"時間"と記入して、あと期間だが、とりあえずは"1年間"にしようか。それぞれ記入してくれ」
皆がCPを取り出して記入。
記入が終わった紙から順に、くるくると丸まって光の輪となり、ペアを囲んで溶けるようにして消えていく。
「これで、契約完了だ。ABに相手の情報を入力しようか。……ああ、お互いのABを合わせるだけで中の情報をコピーできるから、それだけでいいぞ。ついでに、ABは連絡機能もあるから、連絡先の交換にも使ってくれて構わないぞ」
途端に付近で連絡先の交換が始まる。
「この時間は、バディやクラスメイトと仲を深める時間だ。……というか、体のいい自由時間だ」
クラスが賑やかになっていった。
私は先輩と連絡先を交換し、ときどき来るクラスメイトと交換したりしながら過ごしていた。
その中で、印象的だったのがまずは明ちゃん。
名前の通り明るい元気な子で、誰とでも楽しそうに話す。
次に石岡くん。
名前で呼んでほしいということだったので、優くんと呼ぶことにする。
もう1人、清水詩先輩。
綺麗な女の先輩で、いつもニコニコしている。
あ、あともう1人が林先生。
先生曰く、
「学校1位と2位の生徒であり、生徒会に入る予定の2人とは一応連絡先を知っておきたい」
ということらしい。
そんなふうに、1時間目はすぐに過ぎていった……。