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恋の魔法、学びます。  作者:
授業
11/48

10話

……数分後。

学校に着いたことを知らせる表示がモニターに表示されたので本をABにしまい、車を降りる。

周りを見ると、他の生徒はほとんどいなかった。

ちょうどそのとき、別の魔法車が到着。

出てきたのは、萩田先輩……ではなく、昨日私の前に魔法テストを受けた石岡くんだ。

「おはよう、石岡くん」

「お、おはよう、桜原さん」

少し緊張しているように見える。

(魔法学校初日で緊張しているのかな?)

「緊張しなくても大丈夫。一緒に頑張ろう」

「う、うん」

校門には林先生がいた。

「林先生、おはようございます」

「おはようございます」

「おう、おはよう。2人とも早いな」

私は曖昧に微笑んだ。

(まさか家にいたくなかったからとは言えない……)

「先に魔法学の教室に行ってくれ。椅子があるから、座って待ってな」

「はい、わかりました。行こう、石岡くん」

言いながらABを起動し、校内図を出して少し歩いた後、高等部の魔法学の教室に着く。

私は窓の近くの椅子に座り、読みかけだった本を出して読み始めた。


季節は初夏。

これからどんどん暑くなるからそれを考慮してか、窓が開けられていた。

さらに遮光カーテンもかかっている。

ときどき吹く風が心地よく、カーテンと私の髪が揺れる。

静かな教室で本を読むことは幸せだ。


ふと教室の前の方を見ると、モニターが表示されていたことに気付き、本を読むのを中断、モニターの方へ近づく。

見ると昨日のテストの順位表だった。

魔法のテストは、先生が言っていたとおり、私が1位で、萩田先輩が2位だ。

普通科目のテストの順位を下から見ていくが私の名前はなく、だんだんと視線が上に上がる。

え、と思い、じっとその文字を見つめると、私の順位は2位だった。

そしてその上に先輩の名前がある。

つまり先輩は1位だ。

(まさか、私と先輩が1位と2位を独占するなんて……)

思いもよらない結果に驚きながらも、椅子に戻り、本を再び読み始める。

ちらほらと生徒が増え、だんだん教室が賑やかになるが、皆の話題はやはり順位のようだ。

私と先輩が学校1位と2位を取ったことは共通の話題となり、皆の仲を良くするきっかけになっているようだ。

そして、先輩が教室に入ってきたとき皆の視線が一瞬向くが、また逸れて各々おしゃべりを再開する。

先輩はモニターの結果を確認すると、納得したような顔をして教室を見回す。

私の姿を見つけたようで、近くに来て、椅子に座った。

「……面倒だな」

「……はい」

2人してため息でもつきそうな顔をし、先輩もABから本を取り出し、読み始めた。


すると、教室の隅から明ちゃんが近づいてきた。

私に声をかけてくる。

「おめでとう、愛ちゃん!萩田先輩もおめでとうございます!」

「……ありがとう、明ちゃん」

私は読んでいた本から目を上げて、本を閉じて明ちゃんに笑いかけた。

「なんかねー、私はあんまり順位良くなくてさー。魔法の方なんてやっと表に載る程度!」

「そっかー」

「そうなの!それにひきかえ、愛ちゃんと萩田先輩は凄いねー!2人で1位と2位を独占しちゃうんだから!」

「私はそれほどでもないよ……」

「またまたー!表に出てるんだから、そういうことでしょ!」

「そうかな……」

「そうだよー!私のことたくさん助けてね!学校1位の愛ちゃん!」

「うん……。何かあったら言ってね……」

「うん!何でも言うー!」

と8時30分の鐘が鳴り、明ちゃんはもといた場所に戻っていった。


結局本はほとんど読めず、林先生が教室に入ってくる。

「……迷惑だったらちゃんと言わないと」

萩田先輩が言う。

「……でも、言うと明ちゃんに悪いかなーって思っちゃって。本はいつでも読めますし」


私はこんなときでも他人の顔色を窺ってしまっていた。


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