9話
愛side……
翌日、朝早めに準備して、ABを操作し、魔法車を呼び出す。
昨日帰ってからABをたくさんいじったので、大体のことはできるようになった。
魔法車が到着するまで、持ち物のチェック……とは言っても、ほとんど無いのだけれど。
今持っているものは、ABとホルダーに入れた杖だけ。
ABを開いて、入れてあるものを確認。
(よし、忘れ物はなし!)
身だしなみも確認し終えたころ、魔法車が到着したことがABに表示される。
「行ってきます」
一応声をかけるが、返事はなく、それもいつも通りのことだ。
それに加え、K高校から連絡があり、私が授業中に教室を文字通り飛び出したことが知られ、家族は理由も聞かず、私を怒った。
魔法学校に転校することになったことをなんとか説明したが、
「魔法なんて、ふざけるな」
と、また怒られた。
家族は、父、母、妹、私の構成だが、何かあると怒られるのはいつも私なのだ。
私は要領が悪く、物事を上手く処理できない。
両親は妹をとても愛しているし、もちろん私のことも愛してくれている。
学校で良い成績を取って、レベルの高い学校に行ったときは、とても喜んでくれたから、魔導士になったことも喜んでくれると思ったけれど、ダメだった。
どうしても家では孤独感を感じてしまうため、あんまり家には帰りたくないが、帰らないと生きていけないので仕方がない。
そして私は本の世界に逃げ込むことや、周りの人の顔色を見て、上手く立ち振る舞うことを覚えざるを得なかった。
必然的に図書室に通いつめるようになり、そこで萩田先輩と出会ったのだ。
それはさておき。
魔法車に乗りこみ、腕輪(シートリングというらしい)をつける。
ABにしまっておいたお気に入りの本を出し、学校到着までの間、読みふけっていた。