七章「チーム『カイナス』」
新崎を加え、新たなチームの構成となった彼ら「レイディアント」は机上に少し黄ばんだ世界地図を広げ、目的地までどのルートで行くのか確認を取っていた。
ラースが言うには、
「このまま直線上に進み、その途中にある渓谷と高山を越える。…これ以外に進むルートは霧の深い…所謂『迷い森』か、雷獣の住むという『雷撃の塔』を通過するルートというそれらはひとつ目に言ったルートよりもリスクが断然高い。…そのため、多少の手間は惜しまない。…了承してくれ」
だそうだ。
新崎らは特にそのラースの説明に意見も何もなかったため、大きく頷いた。
そして、それを見たラースは
「俺たちは絶対にその『絶境』にたどり着かねばならない」
新崎たちに問いかけるように、
「そう、目的を達成するためにだ…だから……」
彼らは決意を新たに、その瞳に覚悟の焔を灯し、
「行くぞ、俺たちの冒険の始まりだ!」
「「おお‼︎」」
新崎たちはラースの言葉に応じ、己の拳を合わせた。
チーム「レイディアント」はこの日、エイゼルの望みを依頼として改めて受諾し、ギルドの受付に遠征する旨を伝えると、正式にOKが出た。
そのため、彼らはギルドから出て、そのまま最奥の街「ラーミナ」を通り抜け、関所を越えると舗装された林道に入った。
その林道は真っ直ぐ…遠くに見える山まで途切れることなく続いているようだ。
そのため、すごく近くに見える。
だが、エイゼルが言うには我々が知覚もしくは視認している今の光景は騙し絵のようなもので、実際はあの山まで気が遠くなるほどの距離があるそうで、それはまた不思議と納得がいった。
ラースはその距離から現在地と高山へかかる時間を推測、計算すると
「休み休み行くのなら早くても五日はかかる」
と言った。
「五日…か」
新崎はため息をつき、呟く。
すると、その呟きを聞いていたのかエルが
「まあまあ。時間はかかるけど、でも遠征っていつもこんなもんだよ?…慣れればそう大したことないよ」
と控えめに笑いながら言った。
新崎は
「そんなもんなの?」
と彼女に聞き返すと当の彼女は
「うん、そんなもんだよ」
頷いた。
そして、順調に歩き続け、彼らは語り合い、前方へと進んでいると、途中ラースが右手を軽く上げた。
(止まる合図?…まだ、出発してから2、3時間しか経ってないのに?)
新崎はそう疑問に思い眼を細めながらも、ラースの命令に従い、チーム全員が足を止める。
瞬間、視界右方向、その木々の隙間がキラリと一瞬光った。
それに微かに危機感を覚えた新崎は咄嗟に
「load of accele!」
発声、能力を発動し、自身光と化して
「ぐっ…」
ラースを突き飛ばそうとした。だが、
「ふんっ!」
ラースは逆に新崎を突き飛ばし、背にある大剣を引き抜くと上段から右下に一閃。
すると、ギャリンッと甲高い金属質なものが擦れるような音が響き、後に新崎の背後にあった木の幹に黒焦げ、小さく穿った痕が出来た。
それは
「弾痕…?」
「そうみたいだな」
新崎が思い当たり、そう呟くとラースが肯定した。
「そして…」
ラースはその視線を光が見えた箇所に送り、
「俺を狙った…狙撃手か」
と眉をひそめ、睨んだ。
すると木々の隙間から二人の影が現れ、
「早いな。…もう気づいたのか?」
その人影は男二人組だった。
「やはりな。…お前らだと思ったよ」
ラースはそうして、言葉を紡ぎ、
「なあ、チーム『カイナス』?」