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夢屋  作者: 西本 拓人
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六章「魔族と人間」

新崎はラース率いる四人構成のチーム「レイディアント」に連れられ、彼らの所属しているというギルドのある、大国「アルマ」の中央街「ラゲラス」を歩いていた。


大国「アルマ」は中央街「ラゲラス」、東街「ヒート」、西街「ヘルメス」、そして、最奥の街「ラーミナ」の四つの街で出来た国で中でも一番大きな街は日用品や食材など多種多様な品が売られている商店街がほとんどの中央街「ラゲラス」だ。


そのため、新崎は見渡す限り人だらけ、…というのに観てるだけで息が詰まりそうな思いだった。

だが、いざ歩いてみると現実世界の商店街の様相とそう大差なく別段、…若干苦しくてもある程度は平気で歩くことが出来た。


しかし、人々の喧騒などが聞こえようが小物屋の店主が叫ぼうが、エルが重苦しい空気から脱却しようとあれこれ話題を振ったが虚しく、レイディアントと新崎の間に漂う空気は重苦しいままだった。


彼らのギルドは道なりに真っ直ぐ進み、彼らから見て左にあった。

3階だての木造建造物で、一階は中に入ってみると喫茶店のようで、百人は収容できそうななかなかの広さだった。

三人掛けのベンチに机を挟み、向こう側にも同じく三人掛けのベンチがある。

それが並列に目測で二十席はあった。

カウンターは奥の依頼板と呼ばれる大小さまざまな紙が散り散りに貼り付けられている板の近くにあった。

新崎はラースが指定した窓際の席に座り、新崎、エル、中性的な男の子?とラース、ネイルがこれで机を挟み、向かい合う形で座るという構図になった。

するとエルが口を開き、

「じゃあ、改めて自己紹介するね」

確認し、ラースを除く新崎ら3人は頷いたが、当のラースは目を閉じ、頬杖をついたまま黙りこくっている。

エルはそれに失笑しながらも、

「えっと、…私はエル。…使える魔法は攻撃系統は苦手だけど『解析魔法』はお手の物。…改めてよろしく」

と新崎に名乗った。

次に白衣の…確か、名は

「僕はネイル。…魔法は医術系統。…つまり、回復ができたり、相手の細胞からはか…」

「あーあー!」

「何だよ…エル。…大声なんてだしたりして」

ネイルはエルを呆れたような眼をして見て、そう言った。

エルはそれに対し、場を見渡しながら、

「…ご飯食べてる人もいるんだからそう言う話は違う場所で!」

と注意したがネイルは

「はいはい」

と二つ返事で済ませた。

そして、次はラースが目を開き、低い声で名乗った。

「俺はラース。…このレイディアントというチームを作った人間で指揮権は俺にある。…それで、魔法は『焔の魔導』っていうやつだ」

最後に、中性的な男の子?が名乗った。

「私はリーク。…いえ、あのラースさん」

「あ?…なんだ?」

「チーム創設に関わるような話ですが、いいんでしょうかここで話しても」

「別にいいだろ。…どうせそいつが信用ならなくても口は割りそうにないし、何より賑やかな場所の方が話しやすいはずだ」

ラースがそう「リーク」の質問に答えると「リーク」は頷き、新崎の顔を見て、

「では、改めて名乗ります。…私はエイゼル。…この名はX暦より五十年間栄え、そして滅びた古代都市『luminis』の文明の一つである聖天文字と呼ばれるものの意味で『光の川』だそうで、当時、女の子に良く名付けられたそうです」

「滅びた…古代都市?」

「はい」

新崎の言葉に頷き、「リーク」改め「エイゼル」は話し始めた。

自らの種族、先祖代々伝えられてきた昔は栄華を誇り、今では魔窟と化していると探検家達では噂されている古代都市『luminis』の話しを。


「今より千年前、その古代都市には人間と魔物が共存していました」


ーーーーーーーーーーーーー


今より千年前、その古代都市には人間と魔物が共存していた。

しかし、ある日、何をしたのか定かではないが些細なことが原因で、最初は口論。…だが、それが発展して大きな紛争が勃発。

それが十年続き、一時、両陣営は協定を結んで平和を取り戻した…かに見えた。

再度、紛争が勃発したからである。

そして、それは止まることを知らず

肥大化。

人間と魔物、両陣営は双方共に一歩も引かず、当然、双方共に多大な被害をこうむった。

後にその都市は崩壊、人間と魔族の血が混在した一族は『異端』とされ投石されたり、特に悪い時には殺害されたりした。

そんな異常な状況が長く続き、疲弊していたその一族は迫害から逃れるため何処か遠くへ。

人間もその場を離れ、都市に住み着き後にそこに調査をしに来た探検隊を襲うようになった魔物たちに対抗するため、自らの国を創設した。


「私はその一族の末裔であり、唯一の生き残り。…私はいつしか先代の彼らが犯した罪やその都市に隠されている謎を解明したくて当時、…いえ、今もなお著名なラースさんに『無理を承知でお願いします。私はどうしても私の祖国で「luminis」に行かなくてはならないのです。…ですから、貴方を加えたその都市に行けるだけの実力派集団を創り、依頼という形で頼みたいのです。私を助けて』と頼み込んだんです」

新崎はそこまで聞いて、その突拍子もない事実にただただ驚いていた。

「そうだったんですか…」

「それで、俺たちの目的はその時のまま変わらず彼女の祖国、『luminis』を目指すことだ」

ラースは腕組をして、そう言い、

「で…だ。…お前はこれからどうする?…成り行きでお前を怒鳴りつけてしまったが、行き場はあるのか?」

と今度は新崎の眼を見て、聞いた。

「えっと、その…」

新崎はいきなり話しを振られたため、返答に困り、あれこれ考え込んでいるうちに

「分かった。…入れ。…俺たちのチームに」

「ええ⁉︎」

驚き息つく暇もないままトントン拍子で話は進み、新崎は晴れて彼らのチーム「レイディアント」に入ることになった。


その時、新崎は少々困りつつも、ラースさんって結構優しい人なんだなと思い、胸中楽な思いになれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


2014年12月17日 加筆修正

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