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夢屋  作者: 西本 拓人
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十一章「同業者」

新崎は呼吸しにくくなったことから、酸素濃度が極端に低いことに気付き、ラースはペースを落とし、チームの体力を配慮していた。


ラースによると湿原を越えた先…、つまり此処からは高原になると言う。

高原は新崎が感じた通り、酸素濃度が低く、先に視える山まで後3日かかるが、その山が格段に近くなったことをさす。


また山のくっきりとした岩崖の輪郭、その崖に刻まれた無数の罅割れなどがはっきりと分かるようになったのだ。


しかし、チームの疲弊は明らかだった。

全員の足取りは重く、息切れも多くなってきている。


ペースダウンしているとは言え、この状態ではおそらく今日はもたない、そう新崎が思った時、


「ラース…ごめん、今日はもう休憩にしよう?」


エルが疲れ切った顔をして、苦しげにラースに言った。


「そうだな…すまない、この辺でキャンプをしよう」


テントを張り、キャンプ場を作るとラース以外、全員が崩折れるように地べたに座り込んでしまった…。


「つ…疲れた〜」


口から勝手に声が漏れる。

自分の脚は痺れ、微かに痙攣していた。


ラースは


「おいおい、皆、大丈夫か?…高山が近くなったとは言え、まだ後3日あるぞ?」


もう立ち上がれませんとぼやくチームに向かい、問いかけるが、


「あはは…実際、今日はもう無理…かなぁ」


エルが苦笑して、そう言った。


「たくっ…」


ラースは彼女のその言葉に呆れ、…が、小さく笑いながら、


「分かった。…ま、今日はゆっくり休め。…また、明日から頑張ろう」


と言うと、彼は自分のテントに戻っていった。


新崎達も無言で各々のテントに戻り、新崎はそのテントの中で横になり、目を瞑った。


ーーーーーーーーーーーーーーー


新崎は歩道を歩き、交差点に差し掛かると彼は横断歩道を渡り始めた。

信号は青。

停止線に停まる、または停まろうとする車は横目で見て、一台もない。

新崎はなんの感慨もなく、いつもと同じように横断歩道を渡る。


だが…。


最初は耳を劈くようなクラクション。

次に視界を濁らせるような光の眩しさ。

遅れて、強い衝撃。


痛みは感じなかった。

だけど、空中に投げ出される中で、彼は


ああ、死ぬんだな。僕。


と死を悟った。


ーーーーーーーーーーーーーーー


新崎は目を覚まし、ゆっくりと身を起こした。


あたりを見渡せば、見慣れた自分の部屋で、ベッド近くに置いてある目覚まし時計に目を向ければ


「6時か…」


まだ起床するには早い。


だが、


「しっかし、酷いもん観た…」


自分が吹き飛ばされて、死に行く夢なんて…


それに自分から流出する血液はあまりに多く、観た限りでは蘇生は厳しいと思われた。


あれでは、助かる見込みなんて…。


新崎はそこまで考えて、


「っ…⁉︎」


突然、激しく鋭い頭痛が彼を襲った。


それに胸の内側が何かに押し潰されるような痛みも。


「か……あ…」


平衡感覚を失ったようにぐらつく視界。


ーーーなんだ…、これ


堪らず新崎は壁に手をついて、だが、脚に力が入らない。


彼は笑い出した両膝が落ちていくのを感じ……、


目を固く瞑り、…彼は気を失った。



「…る!」

声が聴こえる。


「春!」


自分を呼ぶ声だ。

「ねえ、春⁉︎」


ああ、何処かで聞いたことのあるような声だ…。


「起きてよっ!」


その声の主は、自分を強く揺らしてくる。


ーー揺らすなよ。今、すごく気持ちがいいんだ。


あれ?…でも、ほんと何処かで


「うっ…」


新崎は、目を覚ました。


すると、


「笹木…」


「良かった〜…」


幼馴染みである笹木が隣にいた。


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