腐った世界の凡人。と少しゾンビ
かなりぐろいです、自分基準で
誰もが一度は考えたこと。
天才になってみたい。
そう、誰もが一度は天才になってみたいと考えたはずだ。
バスケの天才、野球の天才、数学の天才等。
俺たち凡人は天才に敵う確率なんて万分の一もない。
悲しいことだけど、悔しいことだけど、絶対に敵いっこない。
俺だって、何かで一番になろうと凡人以上の努力をしてきた、でもその努力は天才の前では意味などなかった。
学年一位になりたかったけど、トップ十にすら入ることも出来ず、スポーツにおいても右に同じという結果だった。
凡人以上の努力をした結果、学校では友達も居ない、いつも一人だ。
両親にはお前は一位にはなれんのか?と言われた。
どこかの国会議員が二番ではダメなのですか!と言っていたけどどうやらダメらしい。
そういえば、あの国会議員最近見ないな。
今も自分の席でヘッドホンで音楽を聴きながらスマホをいじっている。
勉強はもう一通り終わってしまった、天才に勝とうとしたあの頃の努力が少しは役にたったみたいだ。
ああ、何で天才どもに挑もうと思ったんだろうか。今でも不思議に思う。きっとあの頃の俺はラリっていたに違いない。
ん?いつになってもチャイムが鳴らないな。どうしたんだ?
どうやら外の方で騒ぎがあったらしい、ヘッドホンを外すと外が騒々しかった。
凡人は凡人らしく野次馬になって外の様子を見ようか。
あれは喧嘩か?
一人人間がふらりと歩きながら先生達に向かっている。
嫌な予感がして、すぐに帰りの支度をして教室を出た。
ゾンビ、もしかしたらと思ったけどゾンビなんて物はこの世には存在しない。そう、存在しないと思っていた。
う、そだろ。
俺が学校の四階から一階に降りるまでに異変が起きていた。
人が人を食らっている。ああ、世界は狂ってしまったらしい。
でも、どこかの天才どもが解決してくれるのだろう。
天才はどこまで行っても天才なのだから。
しかし、その考えはすぐにぶち壊された。
俺はどうやってここから逃げようか校舎内を移動していたときだった。
「及川傑……か?」
目の前に異形の物に成り果てた文武両道、性格も非の打ち所がない完璧な天才の及川傑がいた。
……なんだ、この世界は狂ってしまったけど、不公平ではなくなったらしい。
笑いが込み上げてくる。
ああ、愉しい。とても愉快だ。
天才も死んでしまう世界になったのか。
まあ、天才といっても色んな種類がある。
でも、及川傑が死なずに大人になったら必ず国を背負って立つ人材だっただろう。
ゾンビに成り果てた及川に近づく。俺に気づいたゾンビは足を引きずりながら接近してくる。
どんどん近づく距離。
俺の手にはお手頃な掃除道具の箒。
剣を持つかのように握り、間合いに入った所で顔面に突きを一発。
それでも動いたから二発、三発、四発と突きをする。
突くごとに肉が抉れ、潰れ、鮮血が飛び散る。制服が返り血で汚れるけど、突く手をやめない。こういうのは完全に破壊しないといけないというのがセオリーらしい。
ぐちゃ、ぐちゃと肉は音を立てて飛散する。
そして、とどめとして高々と飾られてあるトロフィーを鈍器代りに何度もソレの頭に打ちつける。
頭蓋骨が割れ、中身の脳みそが露わになった。
やっぱ、天才だけあってシワがいっぱいだな。
でもそのシワはもう役に立たないぜ?
そして、勢いに任せて脳みそを潰した。
あまりに夢中すぎたために自分がどんな状態になっているのかわからなかった。
とりあえず、手を洗うためにトイレに行った。
そこにもゾンビが溢れかえっていたけどみんなぎゃあぎゃあと騒いでる生徒たちの方に向かって歩いていった。
手を洗い、顔を上げて鏡で自分を見ると酷かった。
さっきのアレの返り血や、脳みその一部、肉片がこべりついていたのだ。
「とりあえず今は生き残ることを考えるか」
学校中に響く、生者の断末魔。
痛いよぉ!痛いよぉ!死にたくない!いや!来ないでぇ!多種多様な声が耳に入ってくる。
助けてあげたいけど、殆どが手遅れで一度助けに行ったがもうゾンビになった後だった。
とにかく学校は危ない、なんとかして外に出なきゃ。
血だらけの箒を片手に歩く。
全生徒数は600人ほどの高校。
今や生き残っているのは何人だろう。
まあ、そんなことはどうでもいい。
あっ、生き残りの生徒じゃないか。俺以外にもいたんだ。
おい、何故そんなに怖がる。別に俺は感染してないって。
「や、やめて、来ないで……来ないでよ……」
えっ?俺は感染してないのに来ないで?何故?
表情か?
両手で顔をペタペタと触ってみるとすぐに女の子が怖がっている理由がわかった。
笑っていたのだ。
狂気的に、悦楽的に、愉悦的に。
俺は天才ではなかったがサイコパスだったみたいだ。
俺は女の子に一歩一歩近づく。
「こ……ない……で……」
女の子は泣いていた。大粒の涙を流しながら。
良い涙だ。もっと見たい。どんな味なのだろう。彼女の肢体はどれくらい柔らかいのだろう。
「ゾ、ゾンビ……が」
彼女は後ろを指差し言う。
後ろを向くと一体ゾンビが目の前にいた。
気づいたときには、箒で殴っていた。殴るたびにびちゃ、びちゃと音を立てる。
手に伝わる感触はとてもリアルで気持ち悪くて、そして気持ちいいものだった。
ゾンビはすぐに立ち上がらなくなった。
彼女の方に向き変えると彼女は床にへたり込んでいた。
そして、近づき涙に触れる。
暖かい。涙は暖かいものなのか。
急に興が覚めてしまった。
まあ、いい。
仕方ないので彼女を抱えて、学校の外に出た。
「あ、ありがと……」
返事を返さずに、とりあえず歩いた。すると彼女もついて来る。
「俺についてこない方がいい。また気持ち悪いものを見せてしまうぞ?」
彼女はびくつきながらに言う。
「わかってる。でもあなたについて行かないと死んじゃう気がする……から……」
「なら勝手にしろ。あといつお前に手を出すかもわからないから逃げる準備くらいはしておけ」
そう言って、道を歩く。
こんなに俺は腐っているのに、太陽は俺を明るく照らしていた。
これで楽しんでくれましたか?なんて聞いてはいけませんよねー、あはは……




