帰宅するが未帰宅チュートリア。後書きがぷそに。
ひとまずの邂逅は終わったと言えた。
やりたいこと、やりたくないこと、やらなきゃいけないことがぐるんぐるんと俺の頭の中で竜巻のようにめまぐるしく回る。
いつだってすきっとさせてきたツモリだが、存外、これを難しく感じているようじゃ俺もまだまだなんだろうさ。
――丸眼鏡緑太郎は無職童貞と連絡を取り合った後、合流するという話だった。
それまで俺たちは自分たちに与えられたクエストを攻略し、IRIAの思惑に乗ってやらなくちゃあならない。
「なんだか、かったるい話だわ」
俺がぼやくと赤い竜は意外そうに呟く。
「あっちゃんらしくなくねー?」
俺がそう思うのはらしくないのだろうか。
「だって、そうだろうに。相手の思惑通りに動かなくちゃなんねえってのは普通シャクに思うモンだろーが」
俺がどこか疲れた溜息をつくと赤い竜は屈託なく笑う。
「それを真正面から思惑以上にぶっ潰してドヤ顔するのが楽しいんじゃねーかってあっちゃんなら言うと思うんだけどなぁ」
「ゲームと違うねんで?竜ちゃん」
「ゲームだよ。かわらねーよぅ」
本当に赤い竜ちゃんがバカで可愛うぃわ。
しかし、そんなバカでも人の引き金弾くには十分すぎるようで。
「まさか、ここで思惑通り動いて負けるなんて無様はねーでしょ?あっちゃん」
「まさか。叩き壊してやんよ」
軽口でも返せば意思は決まる。
「――思惑通りに動いてサンプリングしたいならどうぞだ。アップデートの常に斜め上を行く廃人代表なめんなし。半端なクエストなんざ顔真っ赤にしてプギャーしてやんよ」
「楽しそうだ」
どこまでもゲーム脳な赤い竜が子供みたいに笑って俺の肩を叩いた。
――仮想現実の夕日が投げかけるあかね色の光が全てを優しく包む夕暮れに。
たけのこのように伸びている野菜村の建物達が斜光の中に迎えてくれる。
着実に進んでいる俺たちの攻略を形として覚え、俺はどこか大きく溜息をついた。
そこかしこでエルフやビースト、人間達の嬌声が聞こえ、変わった環境にてんやわんやと騒いでやがる。
――これらを人間として、見る、か。
どうにも難しいことを言ってくれるが俺にとっちゃどだい無理な話。
「さくっと飯でも食って狩りに出るかや?」
ウサ晴らしをしたくて狩りに誘ってみるが流石赤い竜。
「うんにゃ、リグニカントさん居ないんだったら面倒だから寝る」
本当にこの子は自由すぎんよ。
俺はしょうがなく村長の館に赴くと、そこに居るであろうキクさんの様子をうかがうことに決めた。
他に修理を依頼している武器の関係もあってか赤い竜もひょこひょことついてくる。
「うぃっすー、ただいまー」
「金剛さんいるー?」
俺達は前回、金剛さんこと島村キクさんの恥ずかしい行いに遭遇してしまったから気を使ってあげたんですよ。
俺たちのにじみ出る優しさステータスが女子力ゼロのキクさんに通じるかどうかわからなかったが、うん、今回は本当にいよいよもってわからなくなった。
――キクさんが小鉢に乗ったマメを掲げて感涙に咽び泣いていた。
「ああ……生きててよかった……」
いやもうね、本当に訳がわからないわけです。
俺と竜ちゃんは何か感極まってイッちゃった感のあるキクさんに怪訝な瞳を向けるとキクさんは俺達にようやく気がついたようだ。
「おかえり、ロクロータ、竜ちゃん」
どこか優しさにじみ出るキクさんの様子に俺と赤い竜は確信した。
「ロクロータさん、金剛さんが豆持って泣いてるよ?」
「とうとう頭がおかしくなってしまったんやな。ドッグ入りせな」
だが俺達の皮肉すらキクさんには届いていない。
「ウフフ……フフ……なんてことでしょう……私はこれで世界を制したかもしれないぃ……エヘエヘアハハフフッ♪」
どこか嫌らしい笑みと頭のおかしい笑みが混ざった気持ち悪い笑みのキクさんに俺達はたじろぐ。
「ロクロータさぁん、キクさんがキモい。ちょっと叩いてあげた方がいいんじゃね?」
「ガチで頭おかしくなっとるわ。キチガイには近づかない方がいいって俺のばっちゃんが言ってた」
俺たちがいよいよもって怖気を覚えるとキクさんはにんまりと笑って俺にその小鉢を見せてくれた。
――茶色い、乾ききったウサギのウンコみたいな豆だ。
「ロクロータ、竜ちゃん、これは勝てるわよ」
どこか白い粘膜を張り付かせたその豆を俺に見せつけ、キクさんは得意げに胸を反らす。
「それ食べると今のキクさんみたくなれるん?それ頭のおかしくなれるバッドステータスやで?」
俺が煽ってみるがキクさんは豆でブーストしているのか煽り耐性がついてるみたい。
「しゃきーん」
いちいち格好をつけてインベントリから箸を取り出すと、さっと横に振ってポーズを決めて豆の中に箸を突っ込む。
――そして静かに箸を持ち上げ、得意げに言った。
「見るがいい………これが、私の得たモノだ!」
「「オオッ!」」
◇◆◇◆◇◆
結論から言えば、新しい食材を見つけた訳で。
「いやぁ、納豆が実装されてるなんてミリグラムを知らんかったわ」
「まあ普通、こんなの実装されてても本気で作ろうなんて思わないわよね」
ねっばねばに糸を引くそれはまさに、納豆。
一粒噛んで口の中ににちゃりと広がる食感も相違無し。
――こんなものを作ろうとは思わないとキクさんは仰るが、俺は思っちゃう人間だよ。
でなければ再現マックをやろうなんざ考えない訳だからな。
「でも私はこれで確信した。将来、現実世界からのログオンユーザーが大量にやってきた時、これは流行る。私が一人勝ちできる。現実の思い出補正に値段を付けていくらでも高く売りつけてやれるわ!」
発想がゲスの子キクさんに俺はふと首を傾げる。
「しかし、キクさんや?これ作ったのお前じゃねーだろ?女子力ゼロのキクさんにゃ朝顔すら育てられないのに豆作って発酵させるとか無理じゃね?つか、もうキクさん自身が女として発酵して腐ったチーズみたいなニオイ出してるし」
「そんなニオイしてねーし!あんたはこの重大な発見をもってしてなんとも思わないの!?この世界には独占禁止法は無いのよっ!」
「まあ、なんだ?生産系はほとんど触ってねーからよくわからんがファミルラの頃から結構、マスクデータになってるアイテムを生産できるってのはよく聞いた話だったわな」
「武器だとか防具の方が結局のところ重要視されがちになっちゃうから軽視されてるんだけど、室内装飾とかは結構、オリジナルで素材加工して作ってた人も居たのよ?」
「わかるで。俺もよく服飾に付けるアクセサリー部分とかを自作して失敗しとったから」
服飾を金策としていたので少しだけ生産には触ったことがある。
だが、生産系を極めようと思えばそれこそ3Dモデリングやら本当の生産知識を得なければいけないくらいに面倒だったから諦めただけの話だ。
「しかしま、よくまあ納豆なんざ作ってくれたよ。キクさんもねばっこい性格しとんのやなぁ。人にもよるだろうけど、あんましねばっこい女って男受けせんのやで?」
「私が作ったんじゃないんですぅ?これは、作ったのを譲ってもらったんですぅ?」
「せやったな。キクさん料理とかできん女子力ゼロやったもんな」
「お前が私をディスりたいだけだというのが良くわかった――これ作ってくれた人から言づて頼まれてるわよ?あんたに」
「俺に?」
「――『ちんちんぶらぶらソーセージ、マヨつけて醤油つけて喰ってまうどー』」
俺の手から箸がこぼれ落ちる。
「……お前さん、どこでそれを?いや、納豆作った奴ってのが多分、俺やキクや竜じゃなかったらあとは……無職童貞?になるのか?無職童貞がそれを?」
「うん。スーツにラビラッツマスクなんてがっさい格好してるから、がっさいわねーって言ったら、逆に向こうが私らの地元についてピンときちゃった訳ですよ。でもま、私もあんたががっさいがっさい言ってたから移ったようなモンなんだけど、そうしたら無職童貞が今のを伝えてみてくれって。女子力ゼロってディスられんの目に見えてるから嫌だったんだけど、納豆だとか無職童貞が今作ってる食料品関係の独占契約結べそうだから……って?ロクロータさん?」
どこまでも驚く俺の顔にキクが怪訝な瞳を向けてくる。
それよりも驚いたのは俺の方だ。
「……まさかよ。あの人、本物の『あっちゃん』の知り合い?いや、違う……俺と同じ?本当にまさかよ」
思考がぐるんぐるんと高速回転する。
俺の思っている通りだとすれば、無職童貞に対する考え方を改めないといけない。
「どうしたん?ロクロータ先生の驚きっぷりが尋常じゃないんですけど。こんなキチガイめいた歌がなんか世界の謎とかそんな面白げな展開になりそうなの?」
「いや、主に無職童貞と俺の謎の確信に触れる部分だったりする」
「二人ともキチガイ。推理終了、ジャッジオブぎるてぃー、何を今更。ロクロータにミステリアスな部分など何一つないじゃない」
「俺、昔いじめられっ子やったんやで?俺をキチガイの道に放り込んだネトゲの師匠がその歌を歌ってたんだよ」
くっちゃくっちゃと興味なさそうに納豆をかみ続ける赤い竜とは対照的にキクが身を乗り出す。
「は?なにそのキチガイ製造器。こんなキチガイを作るなんて頭おかしいんじゃない?」
「俺もネトゲ上ではその自覚はあるが、その人はさらにその上を行くからな?しかも、リアルでだ。タチが悪いとか頭がおかしいとかそういうレベルじゃねえよ。存在自体がリアルでキチガイだよ」
「キチガイに関わっちゃいけないという大原則を守らなかったから。ロクロータ先生も可哀想になってしまわれたのですね?」
俺は思い出してぞくりと身震いする。
「悪く言われると複雑な心境だっつーのもあるんだがな?なんとか俺が自立できるだけの基礎を作ってくれたのもその人だから、ぶっちゃけ、恩人でもあるんだ。だけど、生半可なシゴキじゃなかったからな。やってることも犯罪ギリギリ一歩アウトというか、犯罪者も裸足で逃げ出すレベルだったし」
またまたキクさんが怪訝な顔で俺を見つめる。
「……あんた一体、その人に何されたの?」
「誘拐されて山ン中に放置」
「何そのピッコロさん。はやく天下一武道会に行くべきよ。つか、平成のこの時代にそんなことする人まだ居るの?」
「『大丈夫、俺、昭和生まれだし』ってにこやかに笑って外道の限りを尽くすぞ」
俺は再び覚えた怖気に身を震わせて、口の中で糸を引く納豆にどこか寒気を覚えた。
――俺も『あっちゃん』と呼ばれるが、本来はその人が『あっちゃん』と呼ばれていたのだ。
ゲームを辞めて離れていっていつの間にか俺が『あっちゃん』と呼ばれるようになったからそのまま違和感なく呼ばれ、最初の頃はどこか誇らしげに思えていた。
だが、今、再びその名前を思い出すとどこか懐かしさと同時に腹の底から恐怖がせり上がってくる。
――もし、無職童貞が『あっちゃん』と関わりのある人間だとしたら。
「……竜ちゃんや」
「んー?」
「無職童貞がうちのギルドに合流したら、何も言わんでもいいから『竜魂』二文字くれてやれ」
「別にロクロータさんがいいなら、俺は構わんよ?」
「ちょちょちょ、ロクロータさんいきなり『竜魂』二文字つけさせるのは荷が重くない?あれ色んな意味で重いわよ?」
「多分、いや、間違いなく大丈夫だ――むしろ、背負わせたら奴の本性が見れる」
『あっちゃん』が絡んでいるとなれば、むしろ、『ちんちんぶらぶら』を歌っているのであれば、そこいらのヤクザや兵隊なんかよりよっぽど筋が入ってる。
それでいながらこのゲームを『外側から壊すことができるチート』を持っているとなれば、無職童貞ってのは一体、何者なんだ?
興味こそ沸くが、それよりもまずはやらなくてはならないことを思い出す。
「んで?キクさんや。街にはなりそうなのかや?」
「え?ああ、うん。あとは時間経過ねー。もろもろと足りないモノはあるけど、そこは施設でカバーしつつ、かなぁ。あと足りないモノっていったら時間くらいね」
「そいじゃ、その間、俺と赤い竜は自分たちのクエスト進めてても大丈夫そうだな」
「そうね。でも、この状態だったら他の領地から攻められた時、防衛力が無いから呼ばれたらすぐ戻ってきて欲しいかな」
「俺はそういうの大丈夫だけど、赤い竜は期待できねえぞ?竜ちゃんがそういうときに間に合ったことって一度もねーから」
「そうね、それはわかってるから大丈夫。赤いのは幼稚園児くらいの頭脳しか持ってないってよくわかってるから」
本人を前にズケズケと言うもんだから流石の赤い竜も反論する。
「俺そこまでひどくねーよぉ?」
「でもアレやろ?竜ちゃん狩りしてたら『今、戦ってるんだよー』っていつも言うやろ?攻める時はいるけど、守るときはたいていおらんやん」
「だってー、守るとか面倒じゃん」
「……守らないと溜めた財産取られンのよ?」
「攻めて奪えばいいじゃん」
「「はい、そう言うのわかってましたー」」
ハモる俺とキクさんに赤い竜はどこか得意げにはにかむ。
ああもう赤い竜ちゃんバカでかわうぃーわー。
俺はそそくさと食事を終えると、静かに合掌してごちそうさまをする。
「さて、そろそろうちの根性無しチュートリアでも虐めてくっかな」
「ああ、そうそう。チューちゃんから手紙預かってるわよ?」
「手紙?」
くっちゃくっちゃと口の中で納豆をこねくりまわすキクさんが袖の中から封筒に入った手紙を俺に放って寄越す。
俺は眉を潜めて手紙を受け取ると、乱暴に封を破って引っ張り出す。
俺は思わず、頭が痛くなった。
「なんて書いてあんの?」
「――『実家に帰らせて頂きます』」
赤い竜が盛大に吹き出し、キクさんが納豆まみれになりましたとさ。
◇◆◇◆◇◆
チュートリアの生まれ故郷はヤックモというザビアスタ森林地区に存在する小さな村らしい。
野菜村村長にそのヤックモという村について聞くと微妙な顔をされた。
「……もともとは内戦で住む場所を無くした人間が集まってできた村なのですが、いささか特色が強い村で」
どこか歯切れの悪い村長の言葉だが、俺の方も歯切れが悪い。
「特色、ねえ」
「楽天的、といえば聞こえはいいのでしょうなぁ」
村の中央にしつらえられたベンチに座り、街興しに賑わう様を眺めながらふんむと息をつく。
「ロクロータ先生にゃ珍しく考え込んでるじゃない。チューちゃん迎えに行くのがそんなに嫌なの?」
どこか楽天的なキクさんの言葉にも歯切れが悪くなる。
「いや、迎えに行くっていうのもアレだよなって話でございますよ」
「はぁ」
「別に俺はチュートリアの保護者じゃ無い訳で迎えに行くってのも筋が違うだろうし、帰りたければ帰ればいいじゃないと思うわけなんですよ。そこは本人の自由だし」
「ふむ」
「そうなるとですよ?俺のメインクエが進まないから俺が帰れない訳で、そのためにチュートリアが必要になってくるから拉致って来るしかないんじゃないかと思うわけで」
「それが何か問題でも?」
何だろう、何一つ問題が無いはずなんだが。
「まぁ、そうだよなぁ」
俺は自分の胸の中にある引っかかりを上手く言葉にできないもどかしさに眉を潜めふんむと溜息をつく。
「でも、いずれにしろですよ?嫌だ嫌だと出て行った人間を無理矢理留め置いてもロクな結果にならないっていうのはギルドとか集団を運営する上で学んできている訳ですよ。果たしてどうしたもんかと絶賛考え中な訳ですよ」
「利害関係が一致してりゃノープロブレムなんじゃないの?」
「キク穴先生?それは同じレベルの意識を持っていればそのとおりでございましょう?ですけどチュートリアちゃんの場合はその辺りの小学生中学生と変わらないのでございますよ?自己主張はするけど結果が無いってのは一番困りものでございましょう?簡単にストライキなんかで要求通していたらこの先ずっと同じ方法取りますですのんよ?」
「そこはロクロータ先生が思いもつかないゲスな方法で解決してくれるんじゃございませんこと?」
他人事だからといってどこまでも楽天的なキクちゃんが羨ましいわー。
「僕、ドゥルーえもん。未来から来たゲス型ロボット。不思議な倫理で色んなことを叶えてくれるが慈悲は無い……ワロスワロス」
「基本的に戦闘職の人達って叩くことしかできないからできることを精一杯やるしかないと思うのよね私」
俺の皮肉にさらなる皮肉で返してくれますですよ。
「キクさんそれ知ってるで。それ脳筋って言うんやで?もっとスタイリッシュにテクニカルに行かないと」
「知ってる?グンナーさんはグフになって最後は考えることとスタイリッシュを辞めて脳死インフィをすることに決めるの。前ロールメシアより脳死インフィの方が安定するのよ?テクターに生きる道は無い」
「ぷそにの話か?シュッカランランでソードさんが死んだ時代の話だろ?テクターが最弱とかどこの情弱よ。エアプも大概にしろよこのビジフォン戦士。限界集落の6鯖に送り込むぞ」
「ほーう言ってくれるじゃなーい。あの時点でのテクターさんの生きる道を説いてみせろ」
「必要スキル以外は全て法撃特化でウィンドミル潜在解放すりゃ池沼子で素の法撃1000超える。サ・ザンの威力が2.8kかけることの3で8k安定。レスタも使えるメギバも蒔ける。PP18で下手なグフより火力出るで」
「……それ悲しみのサ・ザン16掘りを終えた後の話よね?プルフアタックで心が折れたわ。知ってる?あれ出ない人400時間掘っても出ないのよ?普通にエリュシオンアカウント買ってTeからElに転職した方が精神的に安定するわ」
「マルグルしながら箱割り安定だろ。まあ、俺はあの当時ガルミラアカウント買って1からキャラ作り直した口だが。悲しみのインスラ16掘りとかライド16掘りとかやるより安価で確実に強くなれるからな。ガチガンナーさんの憎しみを加速させまくってやりましたとも」
「……45からの壁がきっつくない?」
「ビジフォン戦士はこれだっから……45から50のスーパーハード解放まではTAとオーダー喰って課金リセット喰わせりゃ速攻で終わる。レベル1から当時カンスト65まで一週間かかんねえんだからレベリングのうちに入らねーよ」
過去のゲームの話で盛り上がってみせるが俺は大きく溜息をつく。
実際、エルドラドゲートオンラインも現状50カンストまでは1週間もかからないヌルゲー仕様でマゾいのはスキル上げくらいなものなので、それも必要スキル取ってしまえばあとは必死にプレイヤースキルを磨くだけなんだが。
「……こんなヌルゲー状態の今でもう悲鳴を上げてるようじゃ地獄の90台に突入したらどうなるんだよ」
「実際このゲームの折り返し地点ってどこなんだろうね」
「経験値計算してねえの?前作では97が折り返しだったろ?今回も似たようなモンだぞこれ」
「……そこまであげる意味ってあんの?」
キクさんがどこかげんなりした様子で俺に尋ねてくる。
「ある。一応、オワコンレベルが86くらいのパラメーターなんだが90から上の上昇率が結構バカにならん。一応想定敵を99カンストの100スキル持ちと仮定すると防御保護値がそこでボーナスかかるから一確取るにゃベース99のカンスト100スキルが前提なのですよ」
「うへぇ……」
「おまえさんだって生産系極めるならスキルカンスト100取らないといけないから最低でも95まではベース伸ばさないとならんのやで?その頃になればテンガやシルフィリスだって今でこそブッコワレ性能だけど、頭悪ければ狩り場に連れていくのを躊躇うレベルだ。エンドコンテンツがどこになるかわからんが攻略に必須ならきちんと今から育成しとかんとならんのやで?」
「モチベ管理に苦しむわねそれ。テンガもしっかり躾けとかないといけないのかぁ……あんたのところは大分素直そうなんだけどねー」
「……その素直が絶賛家出中でございますよ。もう先が思いやられるどころかクリア不能なんじゃねーのかなって諦めたくなるわ」
俺は今日何度目になるかわからない大きな溜息をつくとゆっくりと腰を上げた。
「あらロクロータさん、お優しい。家出したチューちゃんを迎えに行ってあげるの?」
キクさんがどこまでも嫌らしい皮肉めいた笑みを向けてくる。
――畜生、煽ってくれやがるわ。
「メインクエレーダーが無いと俺、おうちに帰れませんのですよ?おうち帰ってガンダム録画せな」
スラング解説
ぷそに
ぷそに=PSO2「ファンタシースターオンライン2」のこと
グンナー、グフ
PSO2から出展。ガンナーをアルファベット表記し「グンナー」と称する。
ガンナー職のサブ職にハンターを付ける組み合わせを「GuHu」と表記することからグフ。
「テクニカルに戦えば強い職」と実情を知らないままプロデューサーがのたまい、ニコ生で実際に扱ってもらいとことん弱かった現実ことからプロデューサーのエアプ(下記参照)が発覚し、異常に強くされた職。
ハンター系で取れるスキルでさらに攻撃力が増えることから平成25年12月現在下記の通り強化されたブレイバーと双璧を成す最強職。
シュッカランラン
PSO2出展。ブレイバー職のカタナ装備時スキル「シュンカシュンラン」の蔑称。
FEZスレで荒廃した気持ちを隠すため豚のペルソナを被る「らんらん」に対し、「出荷する」と返すレスをもじったことが語源。
高速で移動し相手に突き攻撃を繰り出し、そこから3連撃をレバー入力で行う攻撃スキルだが、威力のバランスを間違えたのではないかというくらい強い。
ブレイバー職がこれまで「不遇職」の代名詞であり、「ハトウリンドウ」PAで少しづつ復権を果たしている最中に、いわゆる「ぶっこわれ」を積載し一気に最強候補に踊りでる。(平成25年12月現在)
なお、1月に「挙動見直し」という強化が控えており、運営のブレイバー肩入れは止まるところを知らない。
エアプ
エアープレイの略
実際にプレイしてもいないのに人の話や自分の経験則から「こうであろう」と決めつけて口述を述べること。
理論値をつきつけて相手が強い或いは弱い等と言った時に、実情を交えて反論し「エアプ乙」と返す用法などが一般的。
情弱
情報弱者の略
アップデート情報や強職情報、狩り場情報などを収集する能力に欠いた者を侮蔑する際に使われる。
単位時間効率を少なからず求められるネットゲームの2chスレなどで見当違いの情報、或いは時間が経過した情報を得意げに告げる相手に「情弱乙」と返す用法などが一般的。
テクター
PSO2出展。
物理攻撃寄りの魔法職という魔法戦士系の職業。
実装当初から最弱の名を欲しいままにしており、他職が「~~を強化しろ」と声を荒げれば、「おい、テクターさんがこっち見てるぞ」と暖かい憎しみの目で見つめてくる。
最早、PSO2でテクターが最弱というのは様式美と化している。
が、ここからは私見で作中の通りサ・ザン16Lvを掘り終え、「ある特定のスキルツリー」を配分するこで超安価な武器「ウィンドミル」と組み合わせることで一点特化集中型を作成することにより、上記職に肉薄する火力職となりえ、皆が言うように一概に弱いとは、言えない。
下手なGUHUより火力を出す。
ソースについては下手なGUHUが自分。テクターが相方。
El
PSO2出展。テクターの上位互換職「エリュシオン」
――ではなく、テクターの武器であるウォンドのレアアイテム「エリュシオン」を引き当てた選ばれたテクターに対し、憎しみを込めて新職「El」と呼ばれる。
悲しみの~~掘り。
PSO2出展。
高威力のアクションスキルを覚える為にレアボスやレア宝箱を開ける作業に明け暮れる様。
レアボス、レア宝箱の出現率が低い上に、出現したからといって必ず目的の物が拾える訳ではなく運に見放されれば作中のとおり400時間費やしても目的の物は入手できない。
同作は厨二病的な言い回しが多いことからこのような用例が多く作られる。
憎しみが加速する。
PSO2出展。レアを入手した者に対し、嫉妬にまみれた様を示す。
入手できない人間は本当に目的のレアアイテムを入手することができないことから嫉妬が憎しみに転じて頭がおかしくなる。
ビジフォン戦士
PSO2で商取引を専門に行うプレイヤーを示して使う。
買い占め、転売、果ては過密サーバーから過疎サーバーへと行商を行うなどMOとして限定された取引でもその活動は熱い。




