ナマッタマゴぶつけんぞゴラ
翌日、朝も早くに俺とマノア、チュートリアはボウルを必死にかき回していた。
「……師匠?コレ、何か意味あるんスか?」
「昨日すっかり忘れていたよ。かき混ぜておくの」
俺は腕がつりそうな勢いでボウルの中の白身を必死にかき回す。
「あの、マスター、コレってひょっとして……」
顔面を蒼白にして尋ねるチュートリアちゃんには身に覚えがあるようだ。
「無心となれ。強くッ!速くッ!しなやかにッ!――泡立とうとも心静かにッ!」
「そうしてできた白身をどうするかお尋ねしているのですが……あっ!」
チュートリアのバカたれがボウルをかっぱがしやがった。
いつの間にか用意していたエプロンにべっとりと白濁した粘液をぶちまけやがって。
「はいー一丁あがりッス!次ッ!」
横ではふはふ言いながらおうどんを食べていたテンガが新しいボウルを差し出す。
――マノアはそこに卵を片手でパカパカ割ってゆき黄身を手早く掬って別のボウルに移す。
「しっかし、師匠もこんな面倒臭いことしないで本当に犯っちゃえばいいんじゃねえッスか?寝てるし、装備も剥いだから抵抗されねーっスよ?なんなら、麻痺毒飲ませるのもいいんじゃねえッスか?」
「ちょ!ネル!あなたは何を……わあぁああっ!」
身も蓋も無いことをぶっちゃけるネルにチュートリアが慌ててボウルの中身をまたぶちまける。
ばっしゃりと泡だった白身が俺とマノアにぶちまけ俺はチュートリアを睨みつける。
「……昨日の仕返しか?仕返しか?あれはお前が悪かった話だよな?お前がその気ならお前から本当に犯すぞこの野郎」
「なんか、これ、すっごい汚された気分ッスねー……」
俺達はべちゃべちゃになった顔を拭う。
丁度いいから俺は上着を脱いでできあがったボウルの中身をバケツに移す。
バケツに移した白身を抱えて俺は昨日拉致って今追われる立場を作ってくれたエルフとビーストの酋長達の前に立つ。
「おい、冒険者、適当にそいつらの服破け」
「いいんスか?自分でやった方が楽しめるんじゃねえッスか?」
「マ、ママママスター!そんな外道なことさささささせませんからねっ!わ、わわわたしが体を張ってでもそんなことはぜ、絶対にさせませんですからっ!犯罪も犯罪ですよっ!こんな小さな子を酷い目に遭わせるなんて獣以下じゃないですかっ!」
立ちはだかるチュートリアが顔を真っ赤にしてきょどってやがる。
俺と冒険者は顔を見合わせて眉を潜め合うとチュートリアに告げた。
「じゃあ師匠のイリアが破いて下さいよ」
「せやな。俺、今両手ふさがってるから破いてくれって頼んだ訳だからチュートリアちゃんがやってくれんのやろな」
「え?あ、あの、私が?破くんですか?」
「俺が破いてもええのんよ」
「でも、両手ふさがってるって……」
「バケツ置けばいいやん」
「でも、あの、その……」
「体張ってでも止める言うたよな?俺、小さな子の服びりっびりに破いてあなげなことやこなげなことするかもしれへんのやでー。体張ってでも止めなあかんわー。俺がそんな重罪犯す前にチュートリアちゃんが俺のかわりに服破かな」
「え?あ、え?」
言われるがままにチュートリアは二人の服を破き始める。
「う……う、ん……」
「わ、わ!あ、あの、ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
どこか色っぽい声を出すエルフの幼女に必死に謝るがチュートリアはなんで自分がこんなことをしてるんだろうかと悩んでるんだろうな。
――昨日からそうだが、チュートリアのIRIAが薄弱化してる。
高度な判断を続けると思考能力が無くなってしまうという隠しバッドステータスがあることは聞いていたが、チュートリアもこんな簡単なことにだまされて素直に服を破くあたり薄弱化してると見ていい。
服を破き終えて首を傾げるチュートリアに俺は言ってやる。
「あーあ、チュートリアちゃん酷いわー。いたいけな幼女をひん剥いてイタズラする気満々やで。殺人犯、虐殺犯、要人拉致監禁の次は幼児に対する強制わいせつ。クッキー焼くより簡単に罪を犯していくわな」
「え!そ、それはマスターが……というよりマスターがこれから酷いことをするんでしょう!?」
「おっと手が滑った」
俺はバケツの中身を盛大にぶちまけ、寝くさっているエルフとビーストの幼女どもに浴びせてやる。
――途端に白濁した済み後の様相ができあがる。
「やっぱりそうじゃないですかっ!」
「これは過失やで。誤って白身をぶちまけてしまっただけであって、何ら犯罪にはなりえないんだなコレが。そもそも、これで犯罪なら、俺とマノアはお前に犯されちゃったことになるんだが?」
「え、えと、それは……その……」
チュートリアが言葉を濁している横で、唸りながらエルフとビーストが目を覚ます。
「う……あ……ここは」
「むぅ……私はレジアンに遅れを取って……なんだ?生臭いぞ……」
俺は上着を脱いで幼女どもを見下ろし、どこか酷薄な笑みを浮かべる。
「おはようさん。昨日はよく眠れたか?」
「あ……あなたはッ!……え?あ……これは?」
エルフの酋長――ウィンミントだっけか?
自分の姿を見て顔面を途端に青くしてゆく。
隣のビーストの幼女もごくりとつばを飲み、震える。
「いやあ、スッキリしたぜ。おかげで寝起きは爽快だった」
「あ、あなたは……我々を……」
「見りゃわかんだろ?ヤッてやったぜ」
ちなみに俺は何もウソをついていない。
白身をぶちまけて絶望感を煽るというイタズラをヤッてやったことには間違いないのだから。
隣で唸りながら目を覚ましたビーストが自らの様相を見て顔を青くする。
「……これは……まさか……」
「クックク……いやあ、ぐっすり寝てんだモンよ?お気楽なモンだぜ」
煽るだけ煽ってやって、こちらはどこか観念したように俯く。
「……私は……負けたのか」
「後は……わかるだろう?」
どこまでも凄惨な悪い笑みを向けてやるが、このビーストは首を左右に振るだけだった。
「我が師匠ながら……敗者には徹底的でしたッスもんねー」
「えっ!?ネルちゃん?」
即席でマノアが追い打ちをかける。
「本当に哀れッスよねぇ……ほら、こんなにベットベトにされて……男の人の欲望って命がけの戦いの後は際限が無くなるって聞くッスけど……女として、自分、凄い興味があるんスよねぇ」
マノアはエルフの少女――ウィンミントを後ろから抱き抱え、敗れた服の間から手を差し込み白身を肌に刷り込む。
白く泡だった白身がマノアの指の間で糸を引き、ウィンミントの白い肌でてらてらと輝く。
「どぉッスかぁ?口も体も全部、汚されて……女として、人を殺そうとして…殺せなかった男の衝動を受け止めるって……どういう気分だったスかぁ」
マノアの指が嫌がるウィンミントの口の中をまさぐり、舌がいやらしく耳をなぞる。
「んッ!……んんッ……!」
甘噛みしてエルフの少女が泣きながら震える様がエロくって勃起した。
――この弟子えろぃわー。
処女とか言ってるけど、絶対ウソだ。
俺、今貞操の危機を感じた。
「いい声で鳴きますねぇ……そうやって、師匠の前でも、いい声で鳴いたんスかぁ?もっと聞かせて欲しいッス」
「やめて……お願いだから、お願いだからやめて……」
どこまでもいたぶるマノアにウィンミントが泣いて哀願するが、マノアは静かに手を舌にのばし、腹をまさぐる。
「……エルフの長も一人の女、男の下に……組み敷かれて……熱く火照るッスよね……フフ?」
「いやぁっ!いやぁっ!」
「……女の体って不思議ッスよねぇ?……あれだけ激しくされたのに……まだ……」
悪のりが過ぎるわー、悪人面作るのが難しいくらいやわー。
完全に折れかかったエルフの横でビーストの幼女が観念したようにため息をついた。
「わかっている……強い雄が多くの雌を従える。それは人間の世界でも変わらん。それが摂理ならば、敗北した私も従うべきだ」
「は?」
「レジアン……お前の子を産もう。貴様が今日からザビアスタの王だ」
「いや、何を言ってるのかわからん」
どこか興奮したように狐ッ子が言うもんだから逆に俺が面食らってしまう。
「何を言う。強い雄が雌を組み敷き交尾し子を成す。それは連綿と行われる自然の摂理。そうして強い子を次代へ作り、種としてより強くなる――私を負かした相手だ。その子を孕めるのであれば……私は本望だ」
「ちょ、チュートリアちゃん俺このゲームの言葉よくわかんない。なんて言ってるか今北産業」
混乱する俺に唖然としたチュートリアがぶるぶると首を振る。
「だ、だ!だ?だめですよっ!ま、ますたーにはまだ世界を救うという重大な使命があるわけで子供なんて持っちゃったら世界の為に戦えなくなってしまいますっ!」
俺以上に混乱しているチュートリアにどこか優しげな笑みを浮かべる狐ビースト。
「なに、心配は要らん。子供くらい母である私が一匹で育ててみせる。多くの雌がしてきたことだ。獲物の取り方から水場の探し方、森の歩き方も……私だって父に教わったことはなかった」
「そういう意味じゃなくてですね!そうじゃなくて!」
「子供を育てるというのはそういうことだ。そして、雄とは常に戦場にあるものだと理解している。もし、我が夫が戦場で散ったとしても、子らには伝えよう。父は戦場で雄々しく散ったと」
なんか、一人で納得している幼女の頭を俺は小突く。
「勝手に殺すんじゃねえよ。かっこよく殺しても俺は喜べねえよ!」
「すまんな。雄の喜ばし方を私は知らない。だが、お前が望むなら私は応えよう」
そう言って男らしく股を広げるが俺はげんなりする。
「おいテンガ!お前の妹頭にエキノコックス回ってんぞどうにかしやがれ!」
それまでうどんのどんぶりを舐めていたテンガがとてとての歩み寄ってくると生卵だらけの妹におもむろにどんぶりを被せた。
そして自分の袖から金槌――恐らく制作用のツール――を手に取ると力一杯どんぶりごと妹の頭を叩いたのだ!
「ちょ!いきなり何してん!」
テンガはにこっと笑うと目を回している妹を足蹴にし、俺の体を軽々とよじ登り肩から首に巻き付くと猫のように頬ずりしてビースト妹を見下ろす。
「うう……姉上……」
目を回しながら見上げる妹に器用に俺の肩の上で腹を上に向けて勝ち誇った顔で妹を見下ろす。
「ココちゃんにはあげない」
そうして顔を拳で洗うと俺の頬をぺろぺろと舐め出す。
フリーダムすぎるのにも程がある。
みんなが頭がおかしくなるなか、最も頭がおかしくなりやすいバカがとうとうおかしくなっちまいやがった。
「ッッ―――がっとーざへぅ!がっとーざへぅ!がっとーざへぅ!テンガちゃんもビーストの子もエルフもネルもみぃぃんな!がっとーざへぅぅぅぅ!」




