多分、みんな好き勝手にやってる。
「それ石けんの臭いやでw風呂知ってるか?wお風呂知らない原住民族とかビーストとか自分らの方が体臭キッツいでw」
ことの顛末は簡単である。
冒険者とチュートリアを残して、ハイドしてさくっと侵入してみた訳なんですよ。
便利なことにテンガがハイドを使えたので一緒に連れてきてみた訳なのですが、一番でっかい木のなんか、ザ・酋長の家っぽい建物があったので蛇のイカすダンディの如くさくっと入ってみてみればイベント会話っぽいのをしていたという訳です。
しばらく聞いてみようかなーと思ったら、何を血迷ったのかテンガがテーブルの上の茶菓子を真剣に話し合いをしているビーストとエルフの横で飲み食いし始めて、俺は笑いを堪えるのに必死。
だってー、だってー、気づいてへんのよ?この二人。
横でテンガちゃんがパクついとるでー、クッキー食べとるでー。
「――アストラを渡った異界の者はすべからく、危険であると」
真面目にアストラが危険とかいっとるけど、今、お前の皿があぶなーい!あ、全部食べた、テンガちゃん全部食べちゃった!
「人の街におる間は、捨て置けた。また、我々の領域を侵さぬのであればそれもよしとできた。だけど、此度は明らかに我々の聖域を侵しに来た」
聖域どころか、お皿の上、全部侵略されちゃったんですけどー。侵略されつくしちゃってるんですけどー!
「――戦女神コーデリア。かつての災厄の際、『砂塵の鉄巨神』、『オーロラの魔姫』、『天駆ける暴君』、そして、『幻森の妖精』。数多の災厄を退けたレジスの導きを受けた、竜神ユグドラと共にあり、心乱して多くの同胞を手にかけたそれは幾多の戦場で名を轟かせた――『運命の女神の造反』を迎えるまでは」
このエルフ、自分の皿からクッキー無くなったのに気がつかず戦女神がどーとか言っとるけど、それどころじゃないでー!
おっと、テンガちゃん2枚目の皿いったー!いっちゃいましたー!
それどころかカップのお茶に手を伸ばしました!飲んどる!ごっくごく飲んどる!
一気だ、一気に飲み干した!一気飲みって奴ですよ!男前すぎるわー!
「……魔王はエルフが戦乱の中で生き残る術を与えてくれた。イリア・アターシャが伝えし技術と戦術の多くは度重なる人の侵略から我らを守ってくれた」
エルフさん侵略から守ってくれたとか言ってるけど、あんたのお茶テンガちゃんに侵略されつくしちゃってるじゃないですかー。
テンガちゃん、クッキー全部食べ……あ、ポケットにしまった、とっとくん?それ、とっといてあとで食べるん?割れちゃうで?割れちゃうでそれ。叩くと粉々になって増えるとかいう奴?
あ、でも思い直してポケットから出してまた食べた!
テーブルの下からクッキーの缶っぽいの引っ張り出してきた!ずずしさきわまりない!あ、蓋あけた、あ、さらにたべてる。たべてる!両手で?缶を抱えて?飲んだー!
「……ココ、誤って私の飲んだの?」
テンガちゃんがクッキー飲んどりますー!
「失敬な。ミントこそ、私に出されたクッキーを食べたろう?」
「食べてないわよ。あなたはいつになっても食い意地が張ってるわね。おかわりくらいならいくらでも用意させるわよ」
おかわりテンガちゃん飲んじゃったったでー、いい加減気づいてー!
「本当に失敬な!これでもビースト三千を束ねる『三界王』の娘ぞ。自らの獲物くらいは自らで獲れぬと侮るな!貴様こそ、いつまでたってもその卑怯な癖は抜けんな?格好をつけて、締まらないからとて我が誤って飲んだなどと……退けねば、なりません。700年前から続く因縁を再び蘇らせる訳には、いかない――ぷふぅっ!それより私のクッキー食べただろう」
「わ、わたしそんな言い方してないっ!というか、私あなたのクッキー食べてないわよ!ココでしょ!私の分まで食べたの!」
「そうして人に責任をなすりつける癖は100年前から変わっておらんな?エルフの長が聞いて呆れるわ」
「食い意地の王に言われたくないわ!エルフをバカにしないで!」
「侮辱ならば許さんぞ」
「いいぞいいぞ、もっとやれもっとやれ。そこやー、ビーストバカにされてんぞー!エルフそこや!原住民の力みしたれやー!アババババ、エルフ、ウソツカナイ、ダケド、コゴトオオイ」
これは蛇のダンディでも耐えられまい。
「――き、貴様はっ!イ――テンガっ!?」
「戦場の匂い――戦女神の、レジアン」
そのうちテンガの横で喧嘩なんか始めるもんだから、サガ欲をもてあまして煽っちゃってみましたのんですはい。
「我らの聖域に何をしに来た!」
なんか、豪華なドレスに身を包んだエルフの幼女が声を荒げる。
「え?近所に引っ越してきたんでー、挨拶に。ただー、挨拶に来ただけなのにー鉄砲で撃たれちゃうとか、ひどくねーっすか?ひどくねーっすか?激おこぷんぷん丸な訳ですよ。徹底的にコキ使ってやろうと思っている訳ですよはい」
「……我らビーストもまた、奴隷として扱うツモリか?」
「人材はどれだけ居ても足りねーからなー、働いてくれンなら歓迎するぜ?」
さっきの話の流れ的になんか昔、人間に侵略されてたっぽいから今の俺の台詞マジで超悪役っぽくね?
なんて、思っているとエルフの幼女が杖を地面に力強く突く。
「愚かな!戦女神のレジアンよ!お前の行いはかつての因縁を再び蘇らせようとしているのよ!」
「多くの悲しみを生んだあの悲劇を貴様は繰り返すというのだなッ!」
「んなの知らんがな。過去は過去、今は今。売春婦問題でファビョる韓国か貴様わ」
「……知らないことが問題なのではない、多くが悲しむということが問題なのだ。かつて多くのレジス達が我々に強いた苦渋を再びお前は再現しようとしているのだ。理解しろ戦女神コーデリアのレジアン」
「それはそれ、これはこれ。俺は俺。歴史問題に介入する中国か貴様わ。池沼さんは基地外での活動禁止やでほんま」
俺は鼻くそをほじって煽ってやる。
「つかよ?ぶっちゃけ会話とか面倒臭ぇんだよ。てめえらだって俺に向かって軍隊けしかけてきたじゃねえか。可哀想に、皆殺しだよ皆殺し。罪もない里を憂う兵士達が哀れラビラッツに死体を囓られて朽ちてしまう訳ですよ。そこでお前さん達はクッキー食べてた訳ですよ。いいご身分ですなー、クッキーをひたすら焼いてるお婆ちゃん達に謝って欲しいわー」
エルフの女王っぽいロリが俺を睨み、怒鳴りつける。
「兵を殺害したのはあなたでしょう!――その暴虐、許しはしません!」
「じゃあ、俺も許さないでいいわけでブーメラン乙――殺す覚悟はあったんだろう?じゃあ、俺にぶっ殺されて死に散らかせや」
鼻で笑ってやると、隣に居たビーストが立ち上がる。
「――いいだろうッ!敵対するならば、我が顎でかみ砕いてくれるわッ!」
ビーストの幼女が巨大な槌を虚空から取り出し、大きく振りかぶり大樹を揺らす。
俺はセコセコとバケツさんを頭に載せると、チェーンソードを構える。
「ほれ、テンガ、いつまで人のクッキー食べてんの。怒られるぞ」
「――ココちゃんテンガには怒らないよ?」
テンガはクッキーを頬張り終え、指をぺろぺろと舐めると巫女っぽい袴で拭い、とてとてと俺の方に歩み寄る。
「……ろーたー、あげるー」
「おまえ、それ割れてるじゃねえか」
ポケットから出した割れたクッキーを受け取りながら俺はテンガの頭を撫でてやり、目の前の二人をガン無視状態で煽るだけ煽っている。
だが、ココと呼ばれたビーストだけはテンガを見ていささか難しい顔をする。
「……テンガ、それが今の名か。アストラの階に導かれ、イリアステラの祝福を受けたお前が今、戦女神のイリアとなって我々と相まみえることになろうとはな。運命とは皮肉ぞ」
「ううん。幸運の神フ・ナムシーのイリアだよ」
「ならば何故、戦女神のレジアンに付き従うッ!」
「ろーたー?きくにゃーのだいじなひと。てんがもどちらかというとろーたーがすき……いたいいたい!ろーたーみみひっぱらないでー!」
言葉足らずなテンガの耳を引っ張ってみて、これが本物だと判る。
「テンガ、お前、ビーストだったんだな。俺、尻尾も耳もアイテムかと思ってた」
「てんが、びーすと。つおいよ?がおー」
そういった需要のあるアバターも存在するからずっと露骨なキャラ作りだと思ってたんだが、これがデフォだったんか。
「……イリアとして今生の別れとなり、このような運命になるとは思わなんだ。だが、ザビアスタの同胞の長として、この狼藉、許すわけにはいかん――姉よ」
「ろーたーかえろー?ぽーよんうらな」
テンガがこのビーストの姉だとか悲壮な運命っぽいとか全てをブッチしてマイペースすぎるテンガ。
「テンガ、今はぽーよん売らなくていいんやで」
「なら、ねたい。ねるまえにおしっこしてくる」
フリーダムすぎるテンガはたたたっとその場を走ってどこかへ去ってしまう。
取り残される形となった俺は大きくため息をつくと原住民族の酋長に向き直る。
「……オイ、お前の姉だっけ?お前ン家どういう教育してんだよ」
「幼い頃にイリアステラに生け贄として捧げられ、我らは今生の別れとなった。だが、忘れまいよ。名前を、存在を――世界に捧げてまで我らを救った姉のことは。だからこそ……我々を容赦なく弄ぶ世界を許しは、しない。レジアン、貴様もまた――その世界の選択だ」
「クッキー取られてガチになってたお方が格好つけても締まりませんわー。お前が食べたかったクッキー食べたの多分生け贄になったお姉さんやで?意外と姉妹の絆って脆いんとちゃうん?」
「――その無礼な口、二度と叩けなくしてやる。『英雄』と呼ばれる者の力、見せてやろう。ウィンミント、やるぞッ!」
「――多くの兵達を殺めた代償、支払って頂きます!」
エルフとビーストが俺に向け、獲物を向ける。
「――好き勝手すぎるぜ原住民。アステカ文明が他文明に勝つためには速攻しか選択肢はねえんだよ。大仏建造した日本に勝てると思うな」
スラング解説
アステカ文明
石器時代から鉄器時代までを扱い文明同士を戦わせる『エイジオブエンパイアシリーズ』に追加された文明。
アステカの壺などのオカルトで知名度のある文明だが、史実が石器時代までの文明なので、序盤での高速展開で他文明を圧倒する戦術を取らなければ敗北必死の上級者向けの文明。
同シリーズの日本は色々とチートかかった建造物を使えるテクニカルな文明とされる。




