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廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第一部『導入編』
7/296

世界が滅ぶ、本当の理由。

 俺のレベルがあがったくさい。

 ステータス画面を確認する方法が無いからわからないがほんの少しだけど、強くなった感触がする。

 まったくもって感覚的なものだから伝えるのが難しいが、ただ、エフェクトといいこの感覚といいレベルがあがった以外には考えられない。


 「レ、レベルアップしています……」


 チュートリアキャラクターもそう言っているから間違い無い。


 「レベル3に一気にあがっていますよ」

 「そうなん?」


 俺はステップを刻んでみる。

 感覚的には3回が5回になった。

 相変わらず不便な仕様だが、それでもレベルがあがったことは喜ばしい。

 グレイバンビスを倒したことで拾った装備品も併せてこの辺りでの狩りが楽になる。


 「どう見ても皮の腰巻きだがな」


 本来なら衣服の上から装着する腰巻きなのだが、ちんちんを隠せることはいいことだ。

 それ以外には武器でメイス。

 鈍器は本来、プリーストやバーバリアンといった職が好んで使う武器だがそのあたりは初期状態だから文句は言えない。


 「全裸からクロマニョン原人に進化した気分だ」


 俺は荒く削られた棍棒を素振りしてにやにやする。

 傍らに居るチュートリアが驚いた方がいいのか、呆れた方がいいのかわからないような顔をしている。

 IRIA積載NPCは人間に近い反応を返してくれるから面白い。

 そのおもしろさを楽しんでもらおうと頑張ったのがファミルラだったが試行錯誤が多かったのも確かである。


 「この調子で他の装備品も狙ってみるか」


 とりあえず、俺は全身をそろえることを目標として辺りのモンスターを狩ることに決める。

 ラビラッツを手に入れたばかりのメイスで撲殺して回り、死体の山を築き、チュートリアが一生懸命ゴミドロップを拾って回る。

 途中、何度かグレイバンビスとエンカウントしたが武器を持ってしまえばこちらのもの。

 むしろ、美味しいくらいの敵です、ハイ。

 2時間くらい狩り回って一通り装備が整うと俺はふんむとうなる。


 「靴、小手、首飾りに弓か。鎧と剣が出ないのがネックだが、盾が出てくれたのは嬉しいわな」


 俺の装備は本当にどこぞのバーバリアンみたいな装備になっていた。

 気がつけばレベルも7になり、そろそろ頃合いだと思って街に向かうことに決める。


 「あの、これ、本当にもらってもいいんですか?」

 「首飾りはあんまし良い効果ついてなさそうだからやるよ。弓はドロップした矢が何本かあるだろう?使えるなら使ってもいいけど、何匹も敵引き連れてくんなよ」


 本音を言えばチュートリアは街までだろうから、ゴミ箱代わりに使っている。

 換金アイテムは後で回収するとして、いなくなればアイテムは全ロストかインベントリにぶっ込まれるはずだから要らない物を処分する手間が省ける。

 初期エリアの首飾りには防御効果はあるけど、微々たるものでぶっちゃけ特殊効果は見込めない。

 売ってもいいけど、そんな暇があればさっさと次の狩りに行けばいいだけなのでそれならくれてやることにした。

 まだデスペナを試してはいないけど、NPCでも死ねば連れていかないといけなかったりしなきゃならないと面倒だからだ。


 「あ、ありがとう、ございます」


 殊勝に頭を下げるあたりは流石IRIA積載NPC。

 俺はラビラッツのカルパス肉(俺命名)を食べ終わるとチュートリアに確認してみる。


 「確認だが、HPとMP以外にスタミナのステータスもあるよな?」

 「HP?ちょっとわからないです」

 「……生命力、精神力の他にスタミナも存在するよな?」

 「それは、生きていますから。きちんと……といっても生肉食べる人あんまし見たことないんですが食事もしてるので大丈夫だと思います。スタミナは食事をしないと減ります。他の世界じゃどうか知らないですけど、食べ物を食べないと餓死します。悪い物を食べると食中毒になったりしますし……あと、ステップはスタミナの量でできる回数がきまってきます」


 お、いいこと聞いた。ステップはスタミナ準拠なのか。


 「ふんむ。食事の概念もきちんとあるのか」

 「……食事が無い世界もあるんですか?」

 「割と多いぞ。食事の概念の走りは『マビノギ』あたりになるのか。あれは餓死こそしなかったけど、スタミナが無いと行動が制限されたり、ダメージが全然通らなかったり。『モンスターハンター』じゃスタミナが無いと回避行動が制限されたり走れなくなったりで肉焼いて喰ったりする必要があったな」

 「い、色んな世界を知ってるんですね……」

 「食事ってのは面倒なんだよ。ゲームの中においてそれを必然とすると、飯を食うために無駄な時間を割いたりしなきゃいけないから本来の楽しみ方に裂く時間がなくなったりするからな。必要の無い場合の方が多い」

 「……ちょっと信じられないですね」

 「俺の居た現実じゃめっちゃ重要なファクターだったけどな」


 俺はそれだけ言うと、ラビラッツの肉を喰らい立ち上がると道に戻る。

 山道を降りれば森に繋がり、やがて平原に出る。

 ノンアクティブだらけの初期エリアじゃ通過すること自体は難しくもなんとも無い。


 「あの、もう、戦わないんですか?」

 「棍棒で戦い続けてもな。このゲーム、レベル制とクラス制、スキル制の混合だからいつまでも素手や棍棒で戦っててもスキルが育たない」

 「レベル、クラス、スキル?」

 「俺はブレイバー志望だから片手剣スキルが欲しいんだよ。メイスだと棍棒スキルしか上昇しない。クラス条件に満たないんだよ」

 「……あの、よくわからないです」


 チュートリアが眉根に皺を寄せる。

 本当にチュートリアルキャラクターなんだろうかと疑うが、おそらくクラスについてはクラス設定用のNPCが教えることになってるのだろう。


 「レベルっていうのは基礎ステータスの底上げ。敵を倒していくと上がる。これはHP……生命力や精神力を引き上げていく。スキルってのは技術で、やりたい事の上手さだな。メイスを使えばメイス。剣を使えば剣。魔法を使えば魔法。スキルが上がれば、スキル毎の『モーションスキル』が得られる」

 「モーションスキル?」

 「わかりやすく言えば、『ステップ』。盾であれば『バッシュ』、魔法であれば『ファイアボルト』といった行動できるスキルのことさ。これらを得るにはひたすら、そのスキルを使い続けてスキルを伸ばしていくしかない」

 「最後のクラスというのは?」

 「クラスってのは職業だな。ある一定のスキル水準まで来たらその職業を選択できるみたいな感じ。裁縫もできないのに服屋名乗るのもおこがましいだろ?クラス選択の旨みってのはクラス補正のパラメーターとそのクラス専用の『モーションスキル』にあったりする」


 チュートリアは感心したように頷く。


 「それがあると、違うんですか?」

 「パラメーターは直接ダメージや戦闘スタイルの幅を決めるし、専用モーションはどれも強力だ。だけど、クラスにはデメリットもあってそのクラスじゃ使えない『モーションスキル』ってのが出てくる」

 「え?使えなくなるスキルもあるんですか?」

 「重鎧戦士が魔法まで使えたら最強臭いだろ?得手不得手をあえてつけて制限するんだよ。無職のままでスーパーサマル型を目指す場合もあるけど、無限の時間がかかるわそんなモン」

 「重鎧には大気中のマナを阻害するから魔法が使えなくなるんじゃないんですか?」

 「はいそれ設定ね。正しくは『バランス』を取るために存在するんだよ」


 どこまでも疑問系のチュートリアに俺は道すがら退屈なので語ってやることにした。


 「ゲームってのは遊んでもらわなくっちゃ意味がないんだ。レベル制ってのは戦えば戦う程強くなる。これは理解できるな?スキル制ってのもスキルを使えば使うほど、強くなる。これも理解できるか?」

 「まあ、なんとなく」

 「本来、これらのレベル制、スキル制、クラス制ってのは別々に存在してたんだ」


 チュートリアがまた眉根に皺を寄せる。こいつよく見れば眉毛少し太いな。


 「まずは、基本のレベル制から。これは戦えば戦っただけレベルが上がって強くなる。ネトゲ以前の古くからあるRPGからの王道だ。『ドラゴンクエスト』通称ドラクエや『ファイナルファンタジー』通称FF、『ウィザードリィ』といった王道にゃ必ずレベルがある。経験を積んで肉体的にも強くなる。エルドラでもこれを基礎として置いている」


 俺はここで、一つ講釈を垂れてやった。


 「ネットゲームってのは大人数で遊ぶゲームだが、みんなが一斉にスタートする訳じゃあない。色んな人がいて、スタートした時期がマチマチなんだ。俺がスタートした時にはレベルがカンストの99だって奴も居るんだ。まあ、俺の隣の奴もレベル99とか豪語してたがな」

 「うぅ……」


 チュートリアはどこか悲しげな様子で落ち込む。


 「次にクラス制について教えてやるよ」

 「スキル制ではなくてですか?」

 「スキル制は実はクラス制の次に出てきた概念だからな。古さでいえばクラス制の方が先なんだ」


 チュートリアは理解できずに目をしばたかせるが、俺の顔を歩きながら横からのぞき込み興味深そうに聞く。


 「クラスっていうのはさっきも言ったように職業だ。レベルがあがり、クラスモーション……魔法使いでいう魔法や、戦士系の戦闘スキルを覚えて強くなる。レベル制とクラス制これを足してキャラクター……人の個性ってのができあがるんだよ」

 「魔法使いと戦士は違うというような感じでしょうか?」

 「そう。それでいい。魔法メインの魔法使い。打撃メインの戦士。遠距離メインのハンターとかそんな感じに個性を分けていくんだけど、クラス制の不便なところはそれ以上の個性が無いんだ」

 「それ以上の個性?」

 「魔法戦士になりたい奴も居れば、弓も使いたい戦士も居る。クラス制限でがっちりと制限しちゃえばそんなことはできなくなる。そこで出てくるのがスキル制って奴だ」


 チュートリアは唇に指を当てて、俺の話を聞いて考える。


 「……使い続けたスキルを組み合わせて、自分だけの個性をつくれるようにする?」

 「IRIA積載型は流石だな。情報を組み合わせて思考できるってのは凄いよな。まさしくその通りなんだ」


 俺は感嘆しながらエルドラドゲートのNPCの質の高さに驚く。


 「剣スキルと魔法スキルを組み合わせて魔法剣士、弓と剣スキルをスイッチ……状況に応じて交換して遠近両用の戦士を作るとかスキル制は自分の自由にキャラクターを作ることができる。だけども、クラス制にも、スキル制にもどっちにもデメリットがあるんだ」

 「聞いた限りでは、スキル制の方が自由だと思うのですが」

 「だろ?だけど、それって面倒臭いことなんだよ」


 俺はそこで話を一旦、レベル制にまで戻してやる。


 「レベル制のデメリットに戻るぞ。このゲーム……エルドラドゲートオンラインを肉体的な強さを引き上げるベースレベル、スキルを強くするスキルレベル、クラスを強くするクラスレベルの三つがあると」

 「は、はい」

 「レベルが高い奴にレベルが低い奴が同じ速度でレベル上げをしても永久に追いつかないのはわかるよな?スタート地点が違えば、徒競走でも同じ速度じゃ永久に追いつけない。レベル制のネックは限界値が高いと他の人に追いつけなくなるというデメリットがあるんだ」

 「そうなると、どうなるんですか?」

 「長く運営すると、人がいなくなる……俺みたいな外から来た人がいなくなるんだ」


 その辺りを説明すると長くなるが、どうせ暇なのでかいつまんで説明してやった。


 「開幕組……一番最初に世界にやってきた人達は最先端の狩り場で延々と刈り続ける。新しい狩り場が来たら新しい狩り場と移動していく。新しく入ってきた人達は今俺たちが居るエリアで狩っても回りに誰もいない。一人より二人の方が効率がいいのは確かだ。パーティプレイがしづらい状態で、一番最初に世界にやってきた人達に追いつけないのであれば、差がつけられるだけつけられて気がつけばいなくなってるモンなんだ」

 「なんでなんでしょう?」


 純真といえば聞こえはいいがバカだなコイツ。


 「勝てなきゃ、面白く無いからだ」


 すべての虚飾を取り払うなら。

 それはゲームとして当たり前のことなんだが、NPCにゃわかるまい。

 だけど、IRIA積載NPCから情報が運営にフィードバックされることもあるからこういう話をしておくのは決して無駄じゃあない。


 「長く運営するとその限界値を一番最初に居た人に合わせて少しづつ高くする。そうなると高くなりすぎた限界に一番最初から追いつくのは至難の業になる。無理だとは言わないがな?だが、たいていの場合はその途中で挫折していなくなっていくんだよ。人がいなくなると世界の維持が難しくなり、その世界はやがて滅びる。サービス終了って奴だ」

 「……世界が滅びるのは魔王のせいじゃないんですか?」

 「魔王だって殺す人間居なくちゃ居る価値ねーだろ?人もいなくなれば魔物も居なくなるんだよ」


 チュートリアは何か新しい発見をしたように驚く。

 NPCにわかりやすく説明するというのは慣れない。


 「さて、ここまで説明すりゃクラス制のデメリットってのは理解できるな?」

 「わかりませんっ!」

 「ハッハー、バカだなコイツゥ」


 互いに清々しく笑って溜息をつく。


 「あんなぁ……クラス制ってのはさっきも言ったように『選べない』んだ。自由度が無くてツマらない。だからレベルが高い人達に追いつく前にドロップアウトする。それに、もう一つ、クラスには『不遇職』と『優遇職』の二つがあるんだ」

 「不遇職と優遇職?」

 「そうさなぁ……敵と戦い易い職業とそうでない職業。つまり、強い職業と弱い職業だ。他の世界の中にゃ、一度職業を決めると永遠に変えられない世界も少なくは無いんだ。生まれながらにしてお前強い、お前弱いと言われてるようなモンだ」

 「それも、酷い世界ですね……」

 「逆に強い職業を知ってればそれを選べばいいだけの話だし、運営の気紛れで新しい狩り場や新しい装備で不遇職が強くなる場合もなきにしもあらずだからな」

 「そ、そうなんですか?」

 「言ってしまえば、『バランス調整がしやすい』ってのがメリットでもあるんだ。だけど、レベル制のデメリットをモロに受けてしまうのが、クラス制なんだ」


 わかったような、わからないような顔でチュートリアは頷く。

 俺はクラス制の最大のデメリットを教えてやる。


 「クラス制の最大のデメリットはこれらの選択肢の少なさから来る『不公平』さだ。どれだけ努力しても自分の個性は世界が決めた気紛れで無意味になってしまう。努力すればした程、これはきっついんだ」


 俺は今まで覚えた不遇さを思い出して、溜息をついた。

 チュートリアは俺のそんな雰囲気を察したのだろうか、話を続ける。


 「では、スキル制のデメリットってなんなんでしょうか?」

 「じゃあ、逆に聞こうか。スキル制の限界レベルってどこでしょうか」

 「剣士なら剣スキル99だったりするんじゃないでしょうか」

 「ハズレ、正解は『全スキルカンスト』でした」


 俺がいやらしく笑うと、チュートリアはまた困ったような顔をする。


 「今、俺が話した中で答えがあるんだが、お前にスキル制の弱点がわかるか?」

 「ん?んー……答え……ですか?」

 「ギブ?」

 「待って!考えます……あ、わかった『不遇スキル』と『強スキル』があるんですね!」

 「その通り」


 IRIA積載NPCが正解を導きだすのはファミルラで味わった育成ゲー的な感動がある。俺は面倒だから嫌いなんだけど。


 「自由度が高いってことはその『不遇スキル』と『強スキル』を探すのに時間がかかりすぎてしまうことなんだ。強スキル同士の組み合わせが単純に強い訳じゃあない。生産スキルを上げないと強くならない強スキルが存在する場合もある。そんな膨大な選択肢の中で、最適解を探し出して、先を行く先人達に追いつくって正直、どうよ?」

 「考えるのが大変そうですね……」

 「そう、だからこの形は後から入ってくる『初心者』に厳しい仕様なんだよ。それっくらいならクラス制で選択肢を狭めてやった方が無限の選択肢の中から選ばなくてもいいだけ有効なくらいだ」

 「でも、逆に先人が開いた強スキルの組み合わせを使って追いつくこともできるのでは?」

 「それを調べるという行為自体が初心者には難しいんだよ。逆に聞くが、この世界で強いスキルの組み合わせって何だ?ずっと居るお前でもわかるのか?」

 「いえ……その……すみません……」


 わからないのも当然だ。チュートリアルキャラクターだしな。

 俺は苦笑する。


 「それに、その頃には新しいスキルが実装されてたりするんだなぁ。そして暗中模索の繰り返しになるんだ。厄介だぜ?限界レベルが全スキルカンストなだけに、新しいスキルが来るたびにそのスキルに合わせて別スキルをあげなくちゃ追いつけない。つまり、時間をかければかけただけ、その差ってのは絶対的に広くなるんだ。クラス制はレベル99カンストでそこまで行けば最早先が無いから追いつけるけど、ゴールが果てしなく遠い競争を延々とやらなくちゃいけないんだ」


 それがどんなものか理解しているのかわからなさそうだが、チュートリアは唸る。


 「他の世界の事情って大変なんですねえ」


 どこか知るのが怖そうな表情で俺に尋ねてくる。


 「この世界のことについても、知ってるんですか?」

 「そこは重要だからな。調べてきたよ。さっきも言ったとおりレベル制とスキル制、クラス制の混合だから良いところだけ取り出して、悪いところをなんとかオミットしようとしてるからな」


 俺はそう言って遠く見える街の全景を見て少し、感動を覚えた。


 「ま、詳しくはスキルを説明する時に教えてやるよ」

 「はい!お願いします」


 満面の笑みで返事をするチュートリアが一瞬可愛く思えたが、よくよく考えれば俺は殴りたくなってしまった。


 「……つか、何で俺がお前に仕様の説明してんだよ。逆じゃねーか」

 「え?」

 「ぽっとゲームに放り出された俺に親切に色々教えてくれるのがお前の役目じゃねーか。なんで逆になってんだよって聞いてんだ。職務怠慢だぞこの野郎」


 俺の憤りがわからずあたふたするチュートリアだが、涙目になって訴える。


 「だ、だって、私が教えなくても色々知ってるから、要らないのかなって!かなって!だから……だから……」

 「あーもーわかったから黙れ。街までなんだから、さっさと街いってあとはよろしくやろうや……つかメンテ入ったはずなのにずっとログオンできるな……メンテ終わったか?」

 「ま、また訳のわからないことを言ってる……」


 俺はのろのろと街の方向へ平原をあるいている最中だ。

 空が暗くなり、暗雲が集まり稲光を大地に突き刺す。

 激しい振動に俺の身体が震え、ざわりと総毛立つ威圧感を感じる。


 ――それは唐突に俺の前に姿を現した。


 漆黒の闇が大地から吹き上がり、それは俺と対峙した。


 「……戦女神コーデリアのレジアン。女神を従え、ニ・ヴァルースの大地に現れたか。力を付ける前に、抹殺せねばなるまい」


 黒衣の中、どこかおどろおどろしい妖気を纏った少女が俺に告げる。

 隣に立つチュートリアが驚愕に目を見開き、その少女を前に声を震わせる。


 「まさか……魔王のイリア……」


 ――どうやら、俺は次のイベントに進んだようだ。

 

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