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廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第一部『導入編』
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おっぱい系お姉さんは基本、強いっていう。

 俺は僅かな時間をもらいキクの店に赴く。

 キクに軽く事情を説明してやるとキクはどこか面倒くさそうに呟いた。


 「なんか、しちめんどうくさいクエストねえ。単純にエルドラドゲートを封印してこいで終わりでいいんじゃないかと思う」

 「騎士団のお偉いさんがどーとかこーとかさらにしちめんどくさいこと言ってたからクリック連打状態ですよ。コントロールキーでのスキップ実装して欲しいことでございますよ全く」


 俺はがちゃがちゃとキクの店の陳列棚からアイテムを片っ端からカウンターに投げつけながら悪態をつく。


 「で?チューちゃんは今牢獄なう?」

 「牢獄なう。三日後には死刑ですってよーキクさん。BOTの国みたいで素敵やわ。俺は別に困らないからいいんだがクエスト失敗とかなるとそこで詰みゲーですよ詰みゲー」

 「つか、三日で騎士団の信望を集めて敵を撃退しつつかつエルドラドゲートを封鎖するってこと自体がもはや詰みゲーの匂いしかしないですのん」

 「バランス調整しっかりやってんのかと言いたくなるぜ畜生。だがしかし、ここで諦めたら試合終了ですよ。それっくらいの離れ業、やってのけてなんぼです」


 俺はホールドチェーンを集められるだけ集めるとそれをカウンターに放る。

 マテリアライズ化されたホールドチェーンをカウンターの上からどかしながらキクはだらしなくクッキーをばりばりと囓り尋ねる。


 「ロクロータ先生はそんな詰みゲーを打開する素敵な妙案をひらめいたのでございましょうか?」

 「閃きまくりんぐですよ。今日これから副団長のマーシーちゃんを血祭りに上げて騎士達に俺の力を認めさせて指揮権を得る。夜には出撃、騎士団ほったらかして明日には攻略。明後日は帰って一日中引きこもってカルピス飲みながら血が出るまでエロゲー三昧。どうよ?」

 「おもいっきし力業じゃん」


 キクさんが突っ込んでくれますが最終的にはレベルを上げて物理で殴ればいい理論が実は最強なのです。

 だが、それでも色々と問題はある。


 「レベルカンストしちまってるからこれ以上あがらんのがきついところなんだがな。マーシーちゃんあれでレベル70弱はありそうだから」

 「特殊NPCみたいな感じなの?」

 「だな。両手剣もって重装備だから多分ホーリーナイトだとは思うけど、にしても50カンストのなりたてローグさんじゃちと荷が勝ちすぎる」

 「ヲリで行けばいいじゃない」

 「オベン城のインスタントが罠ダンだからな。ちょっとでもクラスレベルを上げる機会が欲しいのが正直なところ」

 「勝てるの?」

 「ネトゲゲーマーの最終手段を使えばなんとか。どんだけ硬くても2時間くらいあれば楽勝でしょー」

 「それ楽勝言わないんとちゃう?」

 「それよっか、キク。何かいい機械弓余ってたりしないか?作った奴でもかまわないんだが」

 「初期レベル用っつったら普通にボウガンしか無いよ。それくらいなら店売りで売ってんのとちゃうん?」

 「途中の遠征でいくらかスキル上げていくからその後の繋ぎが欲しいんだ。リピーターくらいが丁度いいと思うんだが」

 「リピーター……素材品になるから作らないといけないじゃん。キーアイテムの『ガルンガの毛』が無いから今はちょっと無理ぽ……あ、そだ。ユニークでこれがあったわ」

 「あん?」


 キクはカウンターの下からごそごそとマテリアライズされた機械弓を出す。

 ユニークアイテムである証のオレンジ色の輝きを持った正方形のキューブが光を弾いて実体化する。

 それはどう見てもショットガンでした。


 「レミントン?」

 「レミソトン。ユニークらしいっちゃユニークらしいわ本当」

 「銃じゃねえか。それも散弾銃。珍しい、出てたんだ」

 「そ。赤い竜が出してたのを譲ってもらったやつがね。バラして素材取り出そうと思ってたけど、途中までの育成には使えるんじゃない?」

 「『チェーンストック』が使えないが銃スキルと機械知識スキルを最初から上げていけるのは強ぇな。でもいいのか?お前も遠距離職走るなら使うだろうに」

 「普通に長弓使うわよ。銃って使い勝手悪いモン。金払って火力出してるようなモンでしょ?アローレインとか範囲も弓の方が優秀だし」


 俺はカウンターの上に置いてあるショットガンを手に取ってみる。

 ソードオフショットガンというのだろうか。

 短い銃身は取り回しがよく手に馴染む。

 弾丸の装填も片手武器を持ちながらでもてきる辺りは良心的なシステム設計。


 「それなら初期レベルから30くらいまでは引っ張れるでしょ?ユニークだから強化すればギリギリ40台後半まで持つんじゃない?強化しといてあげよっか?」

 「それは嬉しいな。ぶっちゃけ機械弓はあんまし期待してなかったんだがそれがあるならマーシーちゃんにも色々嫌がらせができるようになる」


 俺は嫌らしく笑うとキクに金を積む。


 「メインクエいくなら私も手伝おうか?」

 「店の方は大丈夫なのか?」

 「手伝いくらい雇うわよ。それにログアウトに必要な情報ってのがあるなら私も一緒に行くわよ。あんたがローグならダメージディーラーは必須でしょ?」

 「まあ、来てくれる方が攻略が手っ取り早いっちゃ手っ取り早いんだが」


 それは嬉しい誤算ではある。

 だが、今は目の前の問題を片付ける必要がある。


 「つか、あんたコレ何に使うの?武器防具にしたってゴミ……まではいかないけどぶっちゃけ微妙な物ばっかりじゃん」

 「バラして再構築するのに使うんだよ。ずっと裸のままだったろう?」

 「あ」


 そこまで聞いてキクさんは俺が何をしたいか理解してくれたようだ。

 そして、にんまりと笑う。

 スキル上げにはもってこいといえばもってこいの作業だ。

 頭の回転が速い奴ってのは好きだね。


 「そういうことね?それなら確かにレベル70弱あっても2時間くらいかければ倒せるわ。これで強化するならさらに倍速?」

 「なるべくちゃっちゃと倒したいからな。ぶっちゃけ、騎士団の編成とか考えたり人工知能の調整とかやるとさらに時間かかるから」

 「おっけー、任せておいて。マーシーちゃんはいつシバキに行くの?それまでにゃあキクさんもがんばっちゃおうじゃない」


 キクはカウンターの上に並べられた武器達を眺めて嬉しそうに腕を捲った。


 ◇◆◇◆◇◆


 騎士団の演習場はプロフテリア郊外に設けられていた。

 古くぼろぼろになったかつての闘技場をそのまま使っているだとかなんだとかで多くの騎士達が観客席に座り、闘技場の中央に立つ俺とマーシーを見下ろして野次を飛ばしていた。


 「悪党如きに我らが副団長が負けるものかっ!侮辱もはなはだしいっ!」

 「どこの馬の骨ともわからん冒険者風情がっ!騎士団を舐めるなっ!」


 その多くがというか全てが俺へのバッシングだった。

 一歩踏み出せばブーイングの嵐の中、俺のテンションは最高潮。


 「へーい!お便所のドアすら開けられない雑魚っぱちプロフテリア騎士団の皆々様ぁー、これからマーシーちゃんを地面に這い蹲らせてヒィコラいわせてやんよ。ファックショーが見たい奴は黙って金投げな?運が良ければ混ぜてやんぜ?」

 「――ッ!」


 煽り耐性ゼロのアホどもをおちょくれば最早ブーイングだけで耳が痛い。

 俺を真正面に見据え真剣な面持ちで向かい合うマーシーがにやにや笑う俺を睨む。


 「……あなたは進んで敵を作るわね」

 「この程度で敵になるような奴ぁ敵でもなんでもねえよ。雑魚じゃねえか」


 俺は鼻を鳴らしてやると肩をすくめる。


 「正直、耳を疑ったわ。腕は立つとはいえ、一介の冒険者。それが私と一騎打ちを望むなんて」

 「勝負な?そこまちがえんなよ。弱いくせに自意識だけ過剰な騎士団様達に言うことを聞かせるならこれが一番手っ取り早いだろうに」

 「確かに。だけども、代償は自分の命なのですよ?私も騎士の名誉にかけて手加減はできない」

 「本当に欲しい物があれば名誉など自らを強くする糧にしかならない。それを足かせにしちまってる時点でお前さんがたは雑魚なんだよ」


 俺はそう言い捨てるとエルドソードとレミソトンを構える。


 ――本来ならばボウガンとソードというスタイル。


 だが、今の俺はソードと銃というスタイルになる。

 一部ガンナーにはこうした『デストロイスタイル』を取るガンナーも少なくはなかった。

 遠距離対応の銃スキルと近距離対応の剣スキルを使い分ける。

 それぞれの適応距離で適宜対応するためのスタイルだ。

 適正距離に適正武器といえば聞こえはいいが、どっちつかずの構成だ。


 ――だが、これらのスタイルはアイテムを掛け合わせることで真価を発揮する。


 「悪ぃが、面目は潰させてもらうぜ?」

 「構わない。私が欲しいのは……勝利です。あなたにその力があるなら私の面目などいくらでもくれてあげましょう」


 長大な剣を引き抜いたマーシーが盾を構える。

 淡い燐光を纏った大剣はしっかり強化もされているし、レベルの高いユニークだと判断できる。

 盾だって装飾で施された金色の縁が輝き魔法陣を描いている。


 ――とてもじゃないが50そこそこで挑むにはスペックが違いすぎるってモンだ。


 「それじゃ、はじめようかね?」

 「……勝ってみせなさい。戦女神のレジアン」


 俺の目の前に燐光が集まり、決闘承諾のウィンドウが形成される。


 ――条件設定、小規模決闘、決着条件はデッドリー状態。


 デッドリー状態とはHPがゼロになっても死亡状態にならず気絶した状態。

 俺が勝った場合、マーシーを殺さないようにするための措置だ。

 無論逆の意味もあるのだろうが。


 「――勝てる気でいんの?お前が俺に勝つなんざ、ありえねえよ」


 俺は承諾を指で軽く弾くと、銃と剣をクロスさせて構える。

 甲高い音を立ててウィンドウが弾け、虚空に文字を穿つ。


 ――決・闘・開・始!


 「さぁ、面白おかしく死に散らかせや」


   ◇◆◇◆◇◆


 ――戦闘開始と同時に俺はショットガンを連射し後退する。


 引き撃ちといわれるFPSやTPSのシューティング系ゲームじゃ当たり前の行為。

 長射程武器を利用する場合、後退しながら射撃することで相手の接近までにより多くの手数を叩き込める。


 「そんなものっ!」


 ――盾を真正面に構えた『シールドチャージ』


 基本スキルだが忠実に距離を詰めてくる。

 俺は適正距離に入ったと思った瞬間、武器を持ち替えながら次のアクションを待つ。


 「――ォォォっ!」


 大気を震わす程の大音量の咆哮がマーシーから発される。


 ――『ハウリング』


 ナイト系の広範囲デバフスキルで範囲内の相手に一瞬の気絶効果を与える。

 鈍足のナイトは基本、移動系スキルを利用して相手の懐に飛び込み『ハウリング』でスタンを奪い、長大な武器を振るいダメージを与えるのが戦術となる。


 「はい、来るのわかってましたー」


 予備モーションの少ない『ハウリング』だが、来ることがわかっていれば俺は『ステップ』で『ハウリング』をいなし、その長い髪に腕を伸ばす。


 ――『ハウリング』を『ステップ』回避なんざ今時モンハンでも当たり前。


 IRIAとはいえNPCだ。どこまでいってもテンプレートなタイミングは読むのは容易い。

 咄嗟に盾を構えて『ガード』しようとするが、俺はその『ガード』の上から髪の毛を『ホールド』すると『ジャンプ』する。


 ――そこから『スルー』しての『びたんスラスト』


 地面に叩きつけられたマーシーの首筋にあてがった剣が小気味いい音を立てて引き上げられる。

 強力な重鎧に守られているとはいえ、僅かにダメージが通る。

 本来であれば『ローグ』には『バックスタブ』のダメージ補正が載るんだが現状じゃそこまでのダメージは叩きだせない。

 だが、それでもダメージを負わせることには成功した。


 「――っく!」

 「へい、どした。マーシーちゃんバックでやられたい派?」


 俺が煽ってやるとマーシーは勢いよく立ち上がりブレードを振るう。


 ――チャージ無しの『サークルエッジ』。


 俺は『ムーンサルト』で空中に逃れながら、銃を持ち替える。


 ――『ジャンプ』中のウェポンタブ2への持ち替え硬直キャンセル。


 対人では結構お世話になるテクニックだ。

 レベル差が絶望的だからテクニックは出し惜しみしない。

 俺の頭の下でマーシーの剣が凄まじい衝撃波を産みながら回転している。


 「そうらよっと」


 竜巻が通りすぎた後の着地と同時に、至近距離からのショットガン連射。

 マーシーの背中で盛大に弾丸が火花を散らし、薬莢が宙を舞う。

 耳をつんざく轟音と火花は見た目のインパクトは盛大でこれが現実なら上半身ミンチ間違いないはずなのだが、さすがナイトは格が違う。


 「その程度、効きはしないッ!」


 ――振り向きざまの『レイジスラッシュ』。


 俺がバックステップで距離を取ると、すかさずシールドで『バッシュ』を振り込んでくるが『ジャンプ』で足の下にシールドをやり過ごすと俺は着地と同時にもう一発ショットガンを顎の下からくれてやった。


 「バァン!」


 ――『ピアッシングショット』


 銃スキルの基本スキルで威力倍率を高めた攻撃だがそれでもマーシーちゃんの装甲は抜いた有効打にはならない。

 青白い燐光が顎の下で弾丸を抑え、煙を上げている。

 至近に顔を寄せ合いマーシーは俺に笑みを向けるといっちょまえに煽ってきましたよ。


 「ちょろちょろと動き回りはするけど、効きはしない。私の剣があなたに届いた時、勝負はつくわ。それとも、殺されるのを待っているのですか?」

 「――ハッ!」


 俺は面白くなって笑い返した。

 どこまでも気持ちは熱くなっていくが、頭の中だけは冷静になっていく。

 はやる気持ちを抑え、俺は着実にこのIRIAに対して仕掛けを作っていく。

 俺は『スラッシュ』だけを挨拶代わりに叩き込み、ダメージが無いことを確認すると『ダッシュ』でもって全速力でその場を離脱。

 一拍遅れて『ハウリング』が放たれ、俺を追って『シールドチャージ』で走ってくる。

 だが、それより早く俺は『稲妻ステップ』で距離を取ると完全にマーシーの射程圏外へ逃れる。

 俺は振り向き様にレミソトンを3連射しリロードするとマーシーが剣を大上段に振り上げているのを見る。


 「砕け散れッ!神の威光を思い知れッ!『ディバインブレード』ッ!」


 即座に横方向に『ステップ』する。

 俺の横を光の柱が連続で地面を割って吹き上がり通り抜けていく。

 飛礫が俺の視界を埋め尽くす圧倒的な威力のそれは間違いなく上位スキル。


 ――ホーリーナイトのアクションスキル『ディバインブレード』


 別名『聖光爆裂波』と呼ばれるそれはまさにアグリアスさんオッスオッスな直線広範囲高威力スキルである。

 喰らっていれば間違いなく一撃で溶ける。


 「距離を取れば安全に戦えると思いましたか?」


 基本スキルだけではなく上位職専用スキルを使い出したなら、俺の企みは徐々に成功しつつある。


 「――ハァアアアッ!神々の栄光の礎たる砕けぬ盾、我が身を守れ『ディバインイグニッション』ッ!」


 咆哮と共にマーシーの身体が発光し、青白いオーラが足下から吹き上がる。


 ――『ディバインイグニッション』


 パラディン系の自己バフスキル。

 防御力を増強する必須スキル。


 「これであなたの攻撃は何一つ効かなくなりました。さぁ、どうします?」

 「……元々、ガチタン候補のパラ上位とやりあってキルダメージ稼げるとは思っちゃいない。ちょっとやそっとのダメージ与えてもヒールで自己回復しちまうんだろ?」

 「理解していましたか。さすが、戦女神のレジアン。ですが、理解していたところでこの圧倒的な力の差は覆せないでしょう?」


 どこか余裕すら見せるその態度を俺は鼻で笑ってやる。


 「確かに。圧倒的すぎて小便ちびりそうだ。だけどな?廃人が持つ、圧倒的なパワーってのをお前に見せてやんよ」

 「そんな力があれば見てみたいものですね。あなたでは私にかすり傷一つすら負わせることはできないというのに」

 「そういう、余裕ぶっこいたツラを叩きつぶすのが最高に楽しいんだがね。どれ、ちっくら俺も仕掛けるぜ?」


 俺は完全にかかったことを確信して法環を腕に巻く。


 「――足音も無く忍び寄る『ステルス』」


 俺は呪文を詠唱し、姿をその場から掻き消す。


 ――闇魔法系中位『ステルス』


 俺が目標とする『インビジブル』の下位スキルで移動速度は低下するが完全に姿を消したままで移動や限定されたアクションを行うことができる。


 「姿を掻き消したくらいでっ!攻撃し、あなたが姿を現したたときがあなたの最後っ!」


 完全にかかった。

 俺は勝利を確信する。

 俺は隠れながらホールドチェーンで壁伝いに静かに横に移動しながらゆっくりと歩きマーシーに近づく。

 その背後に爆炎水晶をセットすると、即座に現れて爆炎水晶を励起。


 「えっ?」

 「ぶっ飛べ」


 『ガード』しようとするがそのモーション無意味です。


 ――爆ぜた爆炎水晶がマーシーの身体をぶっ飛ばす。


 爆炎水晶のダメージは相手がどんなモンスターであろうと防御力無視でダメージを与える。

 アイテムが高レベルのモンスターに通じなくなるのを防ぐために、開発側が爆炎水晶のダメージを防御力無視にした。

 対人でこれを当てるなんざ無理に等しいがNPC相手にゃがっつし使えるダメージアイテムだ。


 「へーい♪きちんと周り見ようなー?」


 俺は煽り返してやると、立ち上がるマーシーを挑発して『ハウリング』の範囲から逃れると、再び『ステルス』で姿を消す。


 「……小癪な真似を……神々の栄光よ砕けぬ盾を………『ディバインイグニッション』ッ!戦う者の歩みを導けッ!『ヒール』ッ!」


 マーシーが再び立ち上がり、詠唱してから自己バフとヒールをかけて仕切り直しをはかる。

 高防御力と自己回復、そして、レベル差による装備性能の違いからくる圧倒的火力による一撃死。

 並の強モブなんか相手にするよっかよっぽど修羅場だ。

 だが、しかし、それでもだ。


 ――対IRIA戦闘だってファミルラじゃ腐る程やってきたんだ。


 敗北が怖くて逃げたログオフプレイヤーが残したキャラクター達は積載されたIRIAがそれまでの戦闘経験をもとに思考、判断を繰り返しこちらに応対してくれる。

 擬似的な対人戦まで提供してくれたファミルラは本当にやみつきになる程、魅力的なゲームだった。


 「こざかしいだけの手で、騎士団の誇りは潰えない」


 ――それを壊し尽くした廃人の底力というのを見て貰おうか。


 「データの当たりはつけたぜ?NPC風情が。勝つってことがどういうことか、教えてやんよ」


 俺はどこまでも残虐に笑い、腕を頭上にかざした。

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