ドラゴン厨
――偉大なる竜『グランドラゴン』が残した赤く輝く竜剣。
竜剣ドラグウェンデルを手にし、赤い竜は掲げて見せる。
所持者を認め、赤い光を収めたドラグウェンデルは竜の意匠を象った鍔と、赤く鈍い輝きを持つ刀身の真ん中にグランドラゴンと同じ竜の宝玉を持つ。
長大な両手剣を片手に持ち、赤い竜は満足げに笑う。
「あっちゃんの本名ロクロータって言うの?ロクロータさん、もう一週手伝ってぇ」
「やっぱり言うと思ったよこん畜生」
嫌がる俺に赤い竜は頓着せずに自分の思ったことを言う。
「いやー、だってさー、ドラゴンの剣だよドラゴンの剣ー!最強ユニークボスが落とすドラゴンの剣を二刀流とか最強じゃねー?」
「ドラグウェンデル一本で今は我慢しとけ。どうせ放っておけばレアの方のドラグナイヴも狙ってハムる気だろうが」
「あ、そっか!ナイヴも取らないといけないんだ!いやぁ、面倒臭いなぁ♪いやぁ、本当に面倒くさいわぁ♪」
面倒くさいといいながらも顔は嬉々としてやがる。
赤一色で揃えられた鎧はどれもが生産品である。
――ドラゴン系モブを素材とした生産品でご丁寧にエンチャと強化まで済ませていやがる。
「どれっくらいやり込んでんだよお前」
「いやぁ、ログアウトできなくなったからさぁあ♪とりあえずレベル上げして今レア集めしてるところー♪見て見て?ほら、『ドラグマイザー』の宝玉使って作った鎧を赤くしてみたんだ!」
「レアじゃねえけどエンチャ張りもしてるし、しっかり強化もしてやがんな」
「ロクロータさんはまだ強化してないのー?しないと辛くないー?」
「課金特典のエルドでも十分遊べるレベルだろまだ。金かけるのは後になってからでいいかなーと思って今、蓄財してる」
「ええー?もったいないー」
装備を自慢げに見せてくるあたりどこまでもガキ臭いが、ぶっちゃけネトゲなんざその為にレアやら強化やらしてる訳で赤い竜の楽しみ方はどこまでも純粋だ。
「しっかし、まさかヘビーナイト選ぶのかと思ったが本当にヘビーナイト選んでるとは思わなかった」
「育成でスラッシャーから入ろうかと思ったけど、ヘビー慣れておかないと後々面倒じゃん。最後にヘビーになるなら今からやっとこーかなーって」
「確かにヘビー系は火力スキルを移動スキルの代わりに使う戦い方しなくちゃなんねえけど、ぶっちゃけMP管理ムズすぎんだろ」
「いやぁ、そこはホラ、プレイヤースキルでなんとかするしかないっしょー」
「プレイヤースキルで弱点をカバーする、なんて情弱の雑魚の言い訳じゃねえか。ムカつくのはお前が本当にそれができるからムカつくんだが」
こいつが本当に強い理由はそこにある。
――不遇職だが、プレイヤースキルで補えば優遇職以上の戦果をあげられる。
そんな妄言が職スレの擁護で飛び交うが、結局、誰しもがプレイヤースキルで補える訳でもなく、そもそも必要なプレイヤースキルを磨く時間というのを正しい使い方に避ける優遇職の方が戦果を出せるのが現実だ。
――その現実をひっくり返すバカがたまに、居る。
間違いなく赤い竜というのはそういった種類の『廃人』だ。
「その理由が最高にムカつくんだがな」
「だってぇ、両手にドラゴン剣とか『かっこいい』じゃないかぁ」
――かっこいい。
それだけの理由でそこまで追い求めることができる。
隣に来たチュートリアが唖然としている。
「竜さん、ところでパートナーイリアは?」
「ん?ああ、街に置いてきた」
それを聞いてさらにチュートリアが愕然とする。
「だって、邪魔やんアレ。一人で狩ってる方が効率いいし」
どこか泣きそうになってチュートリアが俺を見るが、実際のところヘビーナイトなら確かにソロの方が効率を叩き出せる。
ぶっちゃけ、俺もチュートリアが居ない方が吸われる経験値が無いから効率がいいっちゃいいのだ。
「マスター、そんなことないですよね?よね?私、がんばれてますよね?」
「ぶっちゃけ、そんなことなんだなーこれが」
「がーん」
ショックで項垂れるチュートリアだが俺は構わず質問を続ける。
「それよりか、ログアウトする方法わからねえか?俺と……ほれ、フナムシ居ただろ?あれの中身、キクってんだがあれが今こっちの世界に居る。正直、俺やキクの調査じゃ手詰まりだ。ログアウトの条件がわからない」
「こっちでもわからないなぁ……でも、ログアウトできないのはしょうがないじゃん」
どこかニヤニヤして笑うこの男に俺は軽い衝撃を覚えた。
気持ちは理解できる。
凄く、理解できる。
だが、それはある意味理解しちゃいけないこと。
「全部煩わしい現実ぶっちしてお前、今最高にゲーム楽しんでるだろ?」
「あれ?わかる?」
「お前、バカだろう、本当に死ねよ」
「いやぁ、わかっちゃうかー、今本当に最高♪」
バカと呼ばれて喜ぶあたり、変態と呼ばれて勝ち誇れる人種の最悪なところである。
だが、赤い竜も根っからのバカではないようだ。
「でも、正直、手詰まりでしょう?こっちも手詰まりなんだよ。条件わからないし、もしかしたらファミルラの時のような『第一次限界突破クエスト』みたく、時期が来てからじゃなくてプレイヤーがゲーム内のフラグ立てるのかなーって思ってさ。それで『グランドラゴン』の討伐に来たんだよ」
「メインクエの方は進めてるのか?オベン城あたりじゃメインクエがフラグになるみたいなんだが俺もぶっちして便所集めてた」
「らしいね、だけど面倒だから進めてない」
赤い竜は肩をすくめる。
「いくつか進めてみたけど、対応間違えるとやり直しきかないんだよ。も一度クエ受けようとしたけど、断られたりする。だからIRIA型のNPCって面倒臭いんだよぉ。マジ嫌だこの糞ゲー」
相当腹立たしいことがあったみたいだな。
俺は苦笑する。
「これからどうするツモリだよ」
「ユニーク狩りにも飽きたしなぁ……スキルカンスト狙いながらギルドでも作ろうかと思ってるんだけど勧誘とか面倒臭くてねえ」
どこか含みのある言い方である。
俺もその返答を知っていて尋ねたのだ。
「どうせ、ぼっちギルドなんだろそれ」
「だってー、誰かの下に俺が入るわけないじゃん」
最強を求める赤い竜は決して、そう、決して誰かの下に入ることは無い。
一人でギルドを立ち上げ、どこまでも強さを求め奮闘する。
――その姿は多くはないが、共感を呼び、猛者を作る。
それは勝利へ必要な重要なファクターである。
「しょうがねえなあ、竜さんは」
「ロクロータさん手伝ってくれる?」
「こんな状況だからな」
俺達は拳を打ち合わせ、互いに笑った。
「「フレンド登録」」
『チュートリアの日記』よんがつふつか
あかいりゅうというはいじんとますたーがふれんどになった。
ふたりはぐらんどらごんとたたかいました。
はいじんどうしがあつまると、さいきょーにみえる。
わたしとますたーがたたかうより、ますたーのことをしっていた。
なんか、じぇらしー。
でも、あれがはいじんどうしのこんびねーしょんだということをしりました。
あかいりゅうはますたーよりつよいらしいです。
でも、ばかっぽいです。
ぐらんどらごんをばしーのしゅばーのがっきーんでたおすとあかいりゅうはどらぐうぇんでるをもってにへらにへらしてました。
やっぱ、ばかっぽいです。
でも、とてもつよくて、かえりはぜんぶてきをたおしてました。
ますたーとあかいりゅうは『ぎるど』をつくることにしたそうです。
きくさんもそのはなしをきいて、にやにやしてました。
なんでも、『ぎるど』ではおしろをたてたり、まちをつくったりできるそうで。
でも、わたしはちいさなおうちでいいのにな。いいのにな。
あと、わたしのかみのけが、どりるになった。
どりるってなに?




