表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第一部『導入編』
13/296

武器カテゴリーとかそんな話。

 「えと、その……残ったシードは14000です」


 どこか怯えたようにチュートリアが報告するが、俺は大して気にしていなかった。

 ざっと計算して必要な額を算出すると、それでもまだ十分と言える額は残っていた。

 ――真に必要になるまでは。


 「でも、本当にいいんですか?こんなに使ってしまって」

 「拡張インベントリをマックスにして、銀行ロックを解除しただけだ。最低限必要なのはこれでスキル追加ツリーだけになったから今は大丈夫だ」

 「でも、シードはとても大切な硬貨だと聞いています。神の祝福を受けた硬貨で滅多に手に入らないんですよ?」

 「使わなければゴミだろ?それよっか特典装備出してくれ」

 「ど、どれを出せばいいんでしょうか?一通りあるのですが」


 そういえばと俺は思い出す。

 初回の課金特典にしちゃ太っ腹で全職業で装備できる育成用武器が特典としてついていたはずだ。

 性能としては中の上っくらいであっても無くてもいいが、あればあったでぶっちゃけレベル50まではいけるはずだ。


 「軽装鎧と、軽装靴、軽装小手、軽装兜に、片手剣、軽盾。あと両手剣な」


 言われた物を次々と出すチュートリアから受け取り、俺は手に取る。

 それらをざくざくと装備すると、あっという間にそれらしく完成した。

 課金武器よろしく、どことなく高級感を思わせる白銀の装備。

 ファンタジックな軽装戦士のできあがりだが、全裸→原始人→全裸→ヒーローの進化って何か色々飛ばしてる感が満載です。


 「それらはエルドシリーズと呼ばれる装備です。いわゆる『成長装備』と呼ばれる武器や防具になります。説明は要りますか?」

 「要らないし、逆に説明してやる。情報の『リライト』だ」

 「情報のリライト?」


 『リライト』とはIRIA育成用語である。


 「お前が一番最初に知っている情報よりもっと詳しい情報を認識してもらう。ただ、俺はあくまで世界の外で得た知識を知っているだけで、俺はこの世界のことで知らないことも多い。むしろ基本的なことほど知らないと思ってくれていい。知っていることはこうしてリライト――書き換えていく」


 俺はぞんざいに答えて、背中に両手剣をくくる。


 「まずは、装備品の種類の確認。種類はどんなものがある?近接から」


 尋ねられてチュートリアが答える。


 「短剣、片手剣、両手剣、小斧、片手斧、両手斧、片手槌、両手槌、片手槍、両手槍、あとは……」

 「あとはクラス毎の特殊カテゴリになるから、割愛だ。それぞれの特徴は?」

 「剣系は安定したダメージ、斧系は不安定ですけど高い最大ダメージ、槌は高保護に対する貫通の高い武器、槍は近接としては長い射程でしょうか?」

 「その通り、短剣と小斧、片手槍は投擲武器にもなる。遠距離武器程じゃないが中距離射程で戦うには十分といえば十分だ。両手系は片手が塞がる代わりに威力が倍増。片手武器は盾を持ったり、もう一本別の片手武器が持てたりする。だが、スキルが必要になってくるけどな」


 俺はそれだけ言うと、のろのろと職業紹介ギルドに足を運ぶ。


 「盾もカテゴリからすれば武器だ。盾スキルで特殊モーションがあるからな。種類は軽盾と重盾、特徴はいわずもがなだ。特徴としては防御力の上昇とガードの追加、ただし片手が塞がるから攻撃力の相対的な低下。だけど、防御力の上昇もガードの追加もこの間のガニパさん見ていたからわかるだろうが、馬鹿にできない」


 道すがら、装備についてリライトしてやる。


 「遠距離武器については?」

 「短弓、長弓、杖、本、霊環、でしょうか?クラス別ならまだありますが」

 「それも割愛。短弓は射程は短いが連射がきく、長弓は長射程の高威力、杖は魔法職用だが両手持ちの魔力増強、本は片手用、霊環はその反対側に装備する。それぞれ使える魔法が違って、杖はコンスタントにバランス型。本は詠唱型の強力な魔法、霊環は無詠唱の簡易魔法。なお霊環は両手武器を装備してても使えるという近接魔法職にも有用な装備だが、使える魔法が本当にしょっぱいからソロの時のヒーリング用以外じゃロクな使い道がない。最後の方まではな」

 「そうなんですか……」


 情報を咀嚼しきれていないチュートリアが目をしばたかせる。


 「次、防具について」

 「え、えと……重鎧系と軽装鎧系、ローブ系にわかれていてそれぞれ頭、腕、足、胴体に装備できる防具があります。重鎧系は防御力と保護が高く、軽装鎧は防御力そこそこの保護も少なめ、ローブ系は防御が僅かにありますが保護が無いです」

 「防御と保護の違いはわかるか?」

 「……実はわからないです」

 「防御ってのはダメージの数値を引き算でマイナスする。保護ってのはそこからパーセンテージでカットしてくれる。まあ、覚え方としては低いダメージなら防御の方が効果が高くて、強力なダメージなら保護の方が効果が高い。ってことでいい」

 「はぁ……」


 こいつぁどこまで真面目に聞いてんだか気の無い返事をする。


 「最後にアクセサリだ」

 「首飾りと指輪があります。それぞれ防御効果は低いですが特殊能力が付加されています」

 「無いよりか、在る方が便利だ。序盤はそう有効なものは無いが、後半はこの性能一つでがっつり変わる。武器よっかこっちにいい物があれば戦力が変わるくらいにな」

 「……あんまし実感は無いです」


 チュートリアは自分の首飾りをぷらぷらとさせながら、眉を潜める。

 俺は、一杯一杯になっているチュートリアに苦笑しながらも励ます。これもIRIA育成のためだし。


 「覚えることは、一杯あるのさ。俺だってな。わからないことの方が多い。あとは使ってみて覚えろよ。それが一番だ」

 「ありがとうございます、マスター」


 どこか申し訳なさそうに謝るチュートリアに俺はどこか歯がゆさを感じる。

 悪いことをしたわけでもないのに謝られてもなぁ。


 「あ、あと、お前が使える装備があるなら、勝手に持っていっていい」


 俺がそう言うと、チュートリアは怪訝な顔をする。


 「え、いいのですか?」

 「俺は自分のスタイルがもう決まってるからな。後は持ってたって宝の持ち腐れなんだけど、お前が強くなればそれは結果として俺も強くなる。だから、使わない物はお前が使って何か問題があるのか?」

 「……でも状況によっては別の装備も必要になるのでは?その時、私が『保有化』していたら困ることに……」

 「ふんむ、そういや成長装備、生産品装備について言うのを忘れてたな」

 「成長装備はいわゆる『生きた武器』です。使い手の成長に伴い、武器も成長し強くなっていく。生産品は人の手によって作られた装備で、カスタムすることで強くなります。あと、成長装備には『保有化』というエンチャントがついていて、一度装備するとその人以外使えなくなります」

 「そこにユニーク装備を付け加えておいてくれ」

 「ユニーク装備?」

 「特定モブドロップの特殊効果付きの例外武器だ。『ぶっ壊れ』ではないけど、特殊能力がついていたりする。面白装備だ。これも保有化される」

 「はぁ……」

 「さて、この三種のうちユニークは教えた。残り二つ、どんな特徴がある?」

 「わかりません」

 「……成長装備はある一定レベルで成長を止めてしまう。課金特典は50レベルで成長を止める。ここまで来ると、先に進むには生産品装備に乗り換えるしかない。それに高レベル帯の成長装備は存在しない。何故なら成長装備自体が『課金武器』だからだ。せいぜい80レベルが限界。それ以降の強力な生産品とユニークを頼るしかない」


 俺はそこまで言って、足を止めるチュートリアに視線を向ける。


 「……大丈夫なんでしょうか?私……全然、お役に立てていないです……」


 俺の方が色々知ってるから自信をなくしたのだろう。

 俺は言葉を選んだが、あいにくと、優しい言葉はかけてやれない。


 「今、ダメだってことはダメだ」


 どこか深く沈むチュートリアの表情に俺は罪悪感を覚えるが、これはどこの世界、とりわけネトゲの世界では当たり前のことだ。


 「だけど、そこでダメなままでいいと思っていればそこが限界だ。変わるなら今だ。欲しがれ。誰も欲しい物を手に入れるのを邪魔しちゃいない。諦めたのはいつだって自分」


 名誉も賞賛もきっと全て、欲しいまま。

 それが欲しければ、頑張るしかない。


 「さて、行こうぜ?俺にゃ欲しい物が一杯あるんだ。時間なんかいくらあっても足りないくらいだ」

 「……っ!はいっ!」


 どこか、吹っ切れたような表情でチュートリアが頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ